資本主義を超える「加速主義」のユートピアは実現できるか

民主主義と資本主義に必然的なつながりはない。デモクラシーは古代ギリシャで生まれたが、資本主義が生まれたのは18世紀のイギリスである。資本家を生んだのは議会政治ではなく、奴隷を使った植民地支配だった。

ミルトン・フリードマンは1978年に香港を訪れ、そこに資本主義の理想郷をみた。当時の香港には政府も議会もなく、イギリス国王に任命された総督が統治していた。フリードマンは「面倒な民主主義にわずらわされない香港が、世界の資本主義のモデルになるだろう」と予想した。

破壊系資本主義――民主主義から脱出するリバタリアンたち
クィン・スロボディアン
みすず書房
2026-01-19
★★★★☆

その他にも、本書は多くの「民主主義なき資本主義」の試みを紹介している。その最大の成功例は、シンガポールである。1965年に自治権をもったときリー・クアンユーが首相になり、主権国家になってからも、その体制が1990年まで続いた。議会はあるが事実上の一党独裁で、言論の自由は制限されている。

これはフリードマンの理想とした自由な資本主義だが、彼が想像したように市場原理で建国したわけではない。シンガポール政府が工業団地を建て、大規模な干拓事業をおこない、多くの大企業は国有だ。むしろアジア的な開発主義の成功例といえる。

シンガポールに世界の企業や富裕層を引きつけた原因は、その税制である。法人税率は最高17%、所得税率は最高24%で、住民税なし。年金制度はなく、国民に「中央積立基金」という強制貯蓄口座をもたせ、政府がそれを政府系ファンドが運用する。医療費もここから払うので、健康保険もない。シンガポールは自助努力の国なのだ。

これはピーター・ティールなどの提唱する加速主義である。これは国家を企業のように再編し、議会なしで経営するもので、全世界で多くの実験がおこなわれている。ミルトンの孫のパトリ・フリードマンは、シーステッドという都市国家をつくろうとしている。

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