日本の中小企業政策を見ていると、ある共通した違和感がある。
それは、政策が「原因」ではなく「結果」ばかりを語っているという点である。
例えば、中小企業政策において掲げられる目標はこうだ。付加価値額を増やす、成長投資を拡大する、稼ぐ力を強化する。いずれも重要な指標ではある。しかし、これらはすべて結果であり、原因ではない。
なぜ付加価値が上がらないのか。
なぜ投資が起きないのか。
なぜ企業が稼げないのか。
本来、政策が踏み込むべきはこの部分である。

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ところが現実の政策議論では、こうした構造的な問題はほとんど扱われない。その代わりに、KPIという形で数値目標が設定される。付加価値額400兆円、成長投資60兆円といった数字が並ぶが、その数字がどのように実現されるのかについての議論は極めて曖昧である。
これは政策ではなく、スローガンに近い。
では、なぜこのような議論になるのか。
理由は単純である。構造の問題に踏み込むと、痛みを伴うからだ。
例えば、中小企業の生産性が低い原因の一つは、経営の質にある。適切な価格設定ができていない企業、投資判断ができない企業、ガバナンスが機能していない企業。こうした企業が市場に残り続けることで、全体の生産性が押し下げられている。
本来であれば、こうした問題に対しては再編や退出を促す政策が必要になる。
しかし、ここに踏み込むと「企業を守る」という政治的要請と衝突する。結果として、政策は原因に触れず、結果だけを語るようになる。
KPIはその典型である。
数値目標を掲げること自体は悪いことではない。しかし、その目標が達成されなかった場合、誰が責任を取るのかは曖昧なままだ。付加価値額が伸びなかったとしても、それが個別企業の問題なのか、政策の問題なのかは検証されない。
つまり、KPIは責任の所在をぼかす装置としても機能している。
この構造が続く限り、日本経済は変わらない。
現場ではすでに答えは出ている。収益を上げている企業は、適切な価格設定を行い、投資を行い、顧客価値を高めている。一方で、低収益に苦しむ企業は、価格決定権を持たず、投資もできず、構造的に利益が出ないビジネスモデルにとどまっている。
問題は明確である。
にもかかわらず、政策はそこに踏み込まない。
こうしたことの繰り返しが、日本経済を蝕んできた。
必要なのは、新しいスローガンではない。
原因に向き合う政策である。
なぜ稼げないのか。
なぜ投資が起きないのか。
なぜ再編が進まないのか。
この問いに答えない限り、どれだけKPIを積み上げても、経済は成長しない。
KPIで経済は成長しないのである。







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