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新刊を出版するにあたり、「Claude Codeについてはどうなんですか?」という質問を受けることが増えた。同時に、Facebook広告でClaude Codeセミナーの広告を目にする機会も急増している。
今回は2回にわたって、この過熱現象の実態と、一般のビジネスパーソンが本当に必要としているものについて解説する。
2026年に入り、Facebook広告のタイムラインが異様な光景になっている。「ChatGPTやGeminiは卒業。次はClaude Code」「プログラミング不要で最強のAIツール」「ChatGPTの10倍の実力」。こうした広告が、毎日のように流れてくるのだ。
広告のデザインは判で押したように似ている。スーツ姿のビジネスパーソンが悩んでいるイラスト。「AIを使っているつもりでも業務は減っていない」という不安の煽り。そして「0円・オンライン・顔出し不要」で参加のハードルを消す。あなたも一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
私は4年前からAIを業務に活用し、2023年3月からはClaudeを主力ツールとして使い続けてきた。その経験から率直に言う。この広告群は、AIに期待を持つビジネスパーソンの不安と焦りを食い物にしている。4年間AIを使い続けてきた一人のユーザーとして、この状況には憤りを感じている。
Claude Codeとは何か
広告を見ただけでは、Claude Codeが何なのか正確に伝わらない。意図的にぼかされているからだ。
Claude Codeとは、Anthropic社が提供するAIコーディングツールである。多くの人が「Claude」と聞いて思い浮かべるのは、ブラウザでAIとチャットするclaude.aiだろう。Claude Codeはこれとはまったく別のツールだ。ターミナルという黒い画面上で動作し、AIがファイルの作成・編集・プログラムの実行までを自律的に行う。もともとはソフトウェアエンジニア向けに作られたものだ。
わかりやすく言えば、claude.aiは「会議室で相談に乗ってくれるコンサルタント」であり、Claude Codeは「オフィスに常駐して実作業をこなすエンジニア」である。コンサルタントには誰でも相談できる。ブラウザを開いて話しかければいい。一方、常駐エンジニアに指示を出すには、技術用語やシステム構成の前提知識が必要だ。
ところが今、このエンジニア向けツールが「プログラミングを知らない一般のビジネスパーソン」に向けて猛烈に売り込まれている。火付け役は「バイブコーディング」というトレンドだ。直訳すれば「ノリでコーディング」。AIに指示するだけでアプリが完成する。しかし「ノリで作れる」ということは「中身を理解していないものが出来上がる」ということでもある。セミナーはこの危うさを決して語らない。
セミナーで何が得られるのか
セミナーの構造は驚くほど画一的だ。「無料・オンライン・顔出し不要」で集客し、講師がデモで「すごさ」を見せつけ、高揚したところで個別相談に誘導し、数万円から数十万円の有料スクールへつなげる。
これはダイレクトレスポンスマーケティングの古典的手法だ。かつてはプログラミングスクール、その前は仮想通貨、さらに前はアフィリエイトで同じ構造が繰り返されてきた。旬のテーマが入れ替わるだけで、ビジネスモデルは何一つ変わっていない。
しかもClaude Codeの導入にはNode.jsのインストール、APIキーの取得、ターミナル操作が必要だ。「プログラミング不要」と謳いながら、使い始めるためにプログラミング的な知識が要求される矛盾を、広告は巧みに隠している。
複数の広告を調べると、テンプレートがほぼ同一であることに気づく。特商法表記を確認すると、マンションの一室を所在地とする個人事業者が運営しているケースも散見される。返品不可で「効果を保証しない」という免責条項は、もはやお約束だ。
最大の被害は「お金」ではない
問題はお金だけではない。数万円を払って有料スクールに入り、結局使いこなせなかった人が抱えるのは、「自分はAIを使いこなせない人間だ」という誤った自己認識だ。
使いこなせなくて当然なのだ。Claude Codeは本来エンジニア向けのツールである。それなのに「誰でもできる」と言われて飛びつき、できなかった結果、AIそのものへの苦手意識を植え付けられる。本来であれば、claude.aiを使って今日から業務を改善できたはずの人が、「AIは自分には無理だ」と諦めてしまう。これが最大の被害だ。
広告では「ChatGPTの数倍の実力」と煽るが、ChatGPTにもコード実行機能はあるし、GeminiにもGoogle連携がある。Claude Codeだけが「実行できるAI」という表現は明確なミスリーディングだ。そもそも「最強のAIツール」という言い方自体が意味を持たない。包丁が最強の調理器具かどうかは、何を料理するかによる。
では、毎日の仕事でAIを活かしたいビジネスパーソンにとって、本当に必要なものは何か。実は、ほとんどの人にとって必要なのは「コードを書くAI」ではない。では何か。次回、具体的に示す。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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23冊目の本を出版しました(4月20日発売)。
『3時間で身につくClaude活用術』(WAVE出版)








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