中高年に「友達」は必要ない

黒坂岳央です。

SNSで「中高年になると友達がいない。どう対策するべきか」という投稿がバズっている。

コメント欄は共感と諦念で埋め尽くされていたが、筆者はそれらとはまったく異なる考えを持っている。

そもそも、友達がいないことは「問題」ではない。本当の問題は友達より社会とのつながりだ。持論を述べたい。

Jacob Wackerhausen/iStock

50歳を超えた人間に友達はいないのが「普通」

「中高年に友達がいないからなんとかしよう」というコメントをよく見るが、筆者はそれを不自然な発想に感じる。なぜなら中高年には友達がいないのが普通だからだ。

家庭を持てば、仕事と育児でリソースはほぼ100%消費されるのが普通である。筆者は会社員の立場ではなく、比較的自由が効くのにそれでも毎日全力疾走をしている感覚が強い。これで「友達を作ろう」とはまったく思えない。そんな余裕はなければ、インセンティブもない。そもそも論として、「友達、という余力がない」のだ。

友達の理想像として語られるのは「利害なしに、朝まで遊べる関係」だ。しかし中高年にとってこれは現実的ではない。旧友と会えば会話は弾む。だがお互いに家族があり、長居はできない。時間のリソースが根本的に違う。

さらに問題なのは感受性の変化だ。中学生のように本気でゲームやカラオケにのめり込むことが難しくなる。趣味の最大公約数が縮小し、共鳴できるコンテンツが減っていく。これは友情の失敗ではなく、加齢に伴う自然な変化である。友達という形式にこだわること自体が、すでに時代遅れの発想かもしれない。

結婚は友達がいない問題を解決しない

「孤独の解消には子供がいればいい」という意見がある。確かに育児期間中は強烈に自分の存在意義が肯定されるし、忙しくて寂しさを感じる暇がなくなる。実際、筆者は子どもの教育を通じてその実感がある。子供は自分がいなければ生きていけない。これは強烈な存在理由の肯定だ。

自分の時間とエネルギーを家族に全振りすることで、友人不在のデメリットはゼロに近づく。だがこれは期間限定だ。子が巣立てば同じ問題に戻る。だから決定的なソリューションではない。

加えて日本の離婚率は約3分の1である。結婚という戦略はそもそも破綻リスクが高く、全員にアプライできるような再現性に乏しい。「結婚すれば孤独は解決する」は「その結婚が持続し、かつ子供が出来て、関係が良好」という前提が必要だ。さらに中年からの結婚は統計的に現実的ではないので、「必要性を感じたから手に入れよう」と買い物をするようには手に入らない。

中高年は「友達より仲間」

中高年から新規で友達を作るのは難しい。では何が代わりになるか。

筆者自身はYouTubeや記事執筆を通じて読者・視聴者との関係を築いてきた。コンテンツを出せば応援や反論が届き、セミナーを開けば遠方から会いに来る人がいる。

この関係は利害で繋がっているようで、実態は旧友より遥かに濃い場合がある。共通の関心軸があり、知的な応酬が成立するからだ。ただしこれは発信者という特殊解に過ぎない。誰もが発信者になれるわけではないし、無理にやっても透明人間になるだけだ。一般解として二つを提案したい。

一つ目は、仕事にコミットすることだ。

昨今は「仕事はお金を稼ぐ手段でしかない。プライベートを死守したい。職場の人間関係なんていらない。関わりたくない」という考え方が主流になっている。

この気持ちはよくわかるが、この姿勢では人間関係が一切生まれない。職場は強制的な接触頻度・共通目標・貢献による承認という、友人関係が生まれる三条件が自然に揃う場だ。

筆者自身、職場の人間関係は友達ではないが非常に価値があるものだと思っている。上司から仕事のやり方や生き方を教わり、妻とは職場恋愛で結婚した。

全員が仕事でエースになれるわけではない。周囲に貢献しようとする意識を持ち、人間関係に対してオープンマインドでいることだ。プライベート死守が当たり前になった今、このウェルカムな姿勢でいるだけでも周囲との信頼関係が出来やすい。それは友達の代わりになる要素だ。

そして二つ目は、熱心にハマれる趣味を持つことだ。

趣味の最大の効用は「理解共通性」にある。同じ目標や関心を持つ人間は自然と引き寄せられる。たとえば英語学習者は他の英語学習者とつながりやすい。

筆者がセミナーや懇親会を開くと、参加者同士があちこちでLINE交換をしてどんどん仲良くなっている様子が見える。「今TOEICを狙っています。ここまで点数が取れました」と自己開示するだけで、似たような目標を持つ人と関係が生まれる。共通の目標を持つ者同士は、年齢の壁を越えるつながりが出来やすい。

「友達がいなくて寂しい」と感じる人の多くは、受け身の姿勢が問題だ。若い頃は黙っていても声をかけられた。だが中高年になれば待っていても誰も来ない。誰もが受け身なら何も始まらない。

中高年に必要なのは友達ではない。能動的に社会と接続し続ける意志だ。友達がいないと嘆く前に、自分が何かに本気でコミットしているかを問い直すべきだろう。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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