海外マネーによる日本企業の買収は過去最高水準を維持しています。かつて海外から見ると日本は「おいしそうでおいしくない」投資先でした。理由は日本市場の独特性と日本型マネージメントが海外で理解しずらく、海外勢から見て買収後の企業をコントロールしにくかったことはあるでしょう。

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おいしくない買収の典型がウォルマートによる西友の買収でした。2002年、経営不振の西友を世界最大の小売業者、ウォルマートが買収したのです。ただし、ウォルマートにとってこれほど苦労するとは予想だにしなかったでしょう。その躓きの一つがEveryday Low Priceの仕組みにあったとされます。
当時の感覚では主婦が毎日、新聞のチラシをみて一円でも安い店を探して自転車で駆けずり回る、そんな風景がまだ普通でした。ウォルマート流の商売はある意味、主婦の楽しみを取り上げ、自転車をこぐ日々のエクササイズもさせないようにしたわけです。これに対して主婦は素直ではありませんでした。「毎日安いって何かおかしくなーい?」と。これは感覚の問題なのですが、キャッチフレーズが悪循環を招いたとも言えます。私は当地のウォルマートに時々行きますがバーゲンの品目も金額も刻々と変わるわけでeveryday low priceの意味を取り違えた可能性があったと思います。
その一方で非常に苦労したけれど親会社として威厳を保ち続けたのがダイムラーベンツによる三菱ふそうの買収。これは外資による日本企業買収の成功例として現代では評価されていますが、ご記憶にある通り、三菱ふそう事件の際にはダイムラーは怒り心頭でありました。耐えて、耐えて、耐えたドイツ版おしんのような粘りで今や、トヨタ傘下の日野自動車と三菱ふそうを統合させ、アーチオンとして4月1日から営業が始まりました。
日本組織論といったユニークなアプローチは海外では研究の材料とされ、「トヨタ流かんばん方式(ジャストインタイム)」などは欧米の企業でも取り入れたケースもありますが、基本的には「海の向こうの不思議な国」というイメージは長く変わらなかったと思います。
ただ、ここにきて海外において他国製の製品への信用度が低く、品質への疑念が高まる中で「日本製はいいよね」という意識は改めて見直されてきています。そのきっかけの一つが昨今の円安と共に日本を訪れる外国人が異様に増えたことはあるでしょう。特に白人の方の訪日が増え、日本を「不思議な国」から「すごい国」という意識に変えてきたことはあります。
ここにきて活躍が目覚ましくなったのが、海外事業会社よりファンドの存在であります。直近の例ではアメリカのアポロマネージメントによる日本板硝子の買収と非上場化があります。板硝子社は海外志向が強い会社でかつてはAGC(旧旭硝子)と競っていた中で旭硝子を抜くために英国の同業、ピルキントンを2006年に買収し、「小が大を食う」と当時は話題になったのです。ところが実質的にこの買収が失敗でその後の板硝子社は散々な状態となり、現在に至っていたところ、アポロが再生をさせようと名乗りを上げたわけです。
アメリカは事業会社による稼ぎよりも金融が大きく発展したため、巨額資金で国内外の企業を買収する流れが何十年も続いています。例えばカナダの事業会社の約15%が外資に所有されていますが、特に卸売業や製造業におけるアメリカ資本は業種により5割に達しているため、カナダ人が目に触れやすい会社や事業の多くがアメリカ資本とされます。なので最近のトランプ発言でBuy Canadianの傾向は極めて強まっていますが、カナダの主要都市がアメリカ国境沿いに位置するため、カナダ国内の横の動きよりアメリカ側との縦の流通が米加のビジネスが伸びた原動力であり、純カナダ企業が勝ちにくい理由になっています。
では外資が日本の事業会社を買収するメリットですが、上述のように日本流の極めて優れた品質を安定的に提供できる点において私から見れば日本こそ、「上質製品の世界工場」だと考えています。たとえばカナダでは安い中国製品を買うこともありますが、それは他に代替商品ないからであります。つまり「悪貨は良貨を駆逐する」の典型状態になっているのです。とすれば諦めて消費している世界の人々に「マジ、いいねぇ、これ!」と言わせる日本製を提供する、これが日本企業を買収する最大の理由であろうと推測しています。
昔は海外ファンドも安い不動産などを買い漁るという傾向が強かったのですが、今後、事業会社をターゲットとしたケースは増えると思います。昨年話題になったセブンイレブンのケースではカナダ企業を諦めさせましたが、同様のアプローチは今後、増えていくと思います。そして私から見るとそれは外資と日本企業側のウィンウィンになることも多いだろうと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年4月7日の記事より転載させていただきました。







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