「台湾二段併合」を狙う習近平戦略

中国主導の「米中首脳会談」

今般の「米中首脳会談」は終始中国ペースであったといえよう。なぜなら、米トランプ大統領はいまだイラン戦争終結の見通しが立たず、中国に終戦の仲介を求める立場だからである。

米国のイラン戦争の戦費はすでに5兆円超に達するとされ、イラン攻撃に大量使用したため巡航ミサイルや弾道ミサイルなどの在庫は急減したとみられている。このため、日本への巡航ミサイルトマホークの引き渡し延期や、台湾への武器売却への影響も無視できない状態である。

トランプ大統領としては、今年11月に迫る中間選挙を控え、イラン戦争の早期終結は至上命題であるにもかかわらず、中国との交渉の「成果」は航空機200機の売り込みと農産物輸出拡大に過ぎないといえよう。

習近平政権の狙い

今回の「米中首脳会談」に臨んだ習近平国家主席の最大の狙いは、「台湾有事」に対し米国の介入を阻止することである。

「偉大な中華民族の復興」を至高のスローガンに掲げる習近平政権にとって「台湾併合」は至上命題である。なぜなら、「台湾併合」は2300万人の台湾住民と世界21位の陸・海・空軍を併合し、半導体など世界に誇る台湾の最先端技術産業がすべて中国共産党の支配下に入るからである。「台湾併合」によって中国は経済力・軍事力において近い将来米国を凌駕する可能性が高まるのである。

しかし、「台湾有事」に対し米軍が本格的な軍事介入をすれば「台湾武力併合」は困難となる。なぜなら、両岸の距離130キロの台湾海峡は天然の要害である上に、空母を含む横須賀の米第7艦隊出動、沖縄嘉手納・普天間米軍基地や岩国米軍基地からの米F-35戦闘爆撃機出撃、米原子力潜水艦による中国艦船への魚雷・ミサイル攻撃、米ドローン攻撃などは、海戦の経験が乏しい中国人民解放軍による台湾上陸作戦を困難にするからである。

「トゥキディデスの罠」

そのため、習近平国家主席は5月14日のトランプ大統領との会談で、既存の支配的大国と新興大国との間で大規模戦争が起きやすくなることを指す「トゥキディデスの罠」に言及した。

古くは支配的大国スパルタと新興大国アテネとの大規模戦争や、支配的大国米国と新興大国日本との太平洋戦争など、歴史上多くの事例がある。

これまでも習主席はこの言葉を取り上げ、米中が協力することで大国間の戦争を回避しようと呼びかけている。これは「台湾有事」への米軍の介入を恐れ、これを阻止・牽制するためのものといえよう。

「台湾二段併合」を狙う習近平戦略

習近平政権の戦略は「台湾二段併合」である。すなわち、今後、核を含む軍事力を一層拡大・強化し、台湾周辺海域での大規模軍事演習や海上封鎖演習など、台湾に対して最大限の軍事的圧力をかけ続けて、台湾政府および台湾住民の抵抗意思を打ち砕き、「孫子の兵法」である「戦わずして台湾併合」を成し遂げる戦略である。これが第一段階の戦略である。

その場合、併合した台湾に対しては「台湾自治政府」としての地位を認め、現行の自由民主主義・議会制民主主義体制を保障する法的措置を宣言することが考えられる。

しかし、この第一段階の戦略が成功しない場合には、第二段階として「台湾武力侵攻」があり得る。習主席は台湾武力侵攻に慎重とされる人民解放軍最高幹部を粛清した。「台湾武力侵攻」のため習近平政権は米軍の軍事介入を阻止すべく、中国単独または核大国であるロシアと共同して米国および日本、さらに台湾に対して「核威嚇」「核恫喝」を加えることもあり得る。

ひたすら台湾を守るために米国国民が核攻撃を甘受するかどうかは甚だ疑問だからである。日本についても同じことがいえよう。

このように、習近平政権の「台湾併合」方針は不変であるから、上記第一段階および第二段階の「習近平戦略」に対して、「核使用」はもとより「核威嚇」や「核恫喝」をさせないために、核戦力を含む圧倒的な「対中抑止力・対処力」のさらなる強化を含め、台湾はもちろんのこと、日米両国もあらゆる事態を想定した対応を準備しておくべきである。

日本にとって「台湾有事」は中国が領有権を主張する「尖閣有事」、さらには中国が日本の領土と認めない「沖縄有事」にまで波及する危険性が極めて高いからである。

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