黒坂岳央です。
「コンビニで服を買う」と言えば笑う人間もいるだろう。だが数字はウソをつかない。
ファミリーマートのオリジナルアパレルブランド「コンビニエンスウェア」の年間売上は、2024年度130億円超、2025年度200億円超、そして2026年度の目標は300億円だ。わずか5年でここまで伸びており、もはやコンビニの片隅に置かれた緊急用の衣料品ではない。
実は筆者も最近は時々ファミマで服を買っている。これまでユニクロでやっていた消費行動をファミマでやっているわけだ。それが本稿を書く起点となった。個人的には「ファミマは第2のユニクロ」扱いをさせてもらっている。

Mukhammad Syafiul Umam/iStock
「緊急購入」から「目的買い」への転換
これまでコンビニ服といえば、「緊急購入」という位置づけだった。
これは筆者自身がそうだ。以前、東京への出張中に急な雨に降られた。近くにユニクロもGUもなく、仕事の時間も迫っている。困り果てて「とりあえずコンビニへ」とファミマに入って靴下を買った。こういう買い方が緊急購入である。
自分はこれまでの人生で「コンビニで服を買う」という発想は皆無だった。しかしその靴下が悪くなかった。いや、むしろいい。デザインはシンプルで、履き心地も許容範囲を超えていたどころかいい感じで靴下のレギュラー入り。それ以来、わざわざユニクロに行くほどではないが少し必要という場面で、ファミマを選ぶようになったのだ。
これは「緊急購入」から「目的買い」へと転換した瞬間だ。そしておそらく筆者だけの話ではない。ファミマ自身が「目的買いの来店を増やす狙い」と明言しており、消費者の行動変容を意図的に設計している。
緊急購入から目的買いへの転換、これはユニクロが1990年代後半にフリースブームで経験した変化と同じ構造だ。「安いから仕方なく買う」から「これが欲しいから買いに行く」への質的転換である。
外国人が「お土産」にコンビニ服を買う
ファミマのラインソックスは今や、インバウンド客のお土産として人気を博している。アメリカのCNNやイギリスのBBCが「日本で最も人気のあるお土産」「日本で最もクールなお土産」と報じるに至った。
考えてみれば、外国人観光客が緊急購入でコンビニの靴下を買うわけがない。彼らはわざわざ選んで、国に持ち帰るために買っている。
これは完全な指名買いであり、ブランドとして認知された証拠に他ならない。ユニクロが海外出店によってグローバルブランドになったとすれば、ファミマは出店コストゼロで外国人が勝手に世界に広めるという、別次元の浸透を果たしつつある。これは面白い動きだ。
ユニクロが「安い服」でなくなった空白
もう一つの背景として見逃せないのが、ユニクロの価格帯変化だ。エアリズムは1990円、パーカーは3990円まで上がった。かつて「とにかく安い服」「全身ユニクロはちょっとださい」と言われることもあったユニクロは、インフレと素材開発投資の結果、中価格帯ブランドへと移行した。
この価格上昇が生んだ空白を、ファミマが埋めている。靴下429円、機能Tシャツ1998円という価格帯は、かつてのユニクロが占めていたポジションに近い。「最も身近なベーシックウェア」という座を、ユニクロから静かに引き継ぎつつある。
それでいてユニクロより圧倒的に店舗が多く、立地もいいので手軽に買いやすい。国内のユニクロ店舗数は約800だ。対してファミリーマートは約1万6000店舗、つまり衣料品の購入接点においてユニクロの約20倍の規模を持つ。
都市でも地方でも、深夜でも、雨の日でも買える。この利便性は専門店には永遠に真似できない構造的優位である。
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「第2のユニクロ」という表現は、一部のファッション愛好家からお叱りを受けるかもしれない。だがそれはファミマを過小評価している考えだ。ユニクロは服を買いに行く場所だが、ファミマは生活動線上に存在する。消費者がわざわざ足を運ぶ必要すらない。この違いは本質的だ。
騙されたと思ってファミマへいってまずは靴下を買ってみてほしい。「使い捨て」ではない品質に驚くだろう。
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