「人生の30%」をスマホに溶かす現代人

黒坂岳央です。

Z世代の平均スクリーンタイムは1日約7〜9時間というデータがある。DCDXの調査では、利用時間が最も長い上位5%は週96時間、1日換算で約13.7時間に達するという報告もある。この数字を80年の人生に単純に引き延ばせば、人生の3割から4割を画面の中で終える計算になる。冷静に考えたら恐ろしい長さである。

自分はスマホ中毒ではないが、一時期、使用時間が長くなったタイミングがある。スクリーンタイムを見て「これはまずい」と焦って意識を変えたことで、今ではあまり使わなくなった。仕事でZOOM会議やLINE通話がなければ、一日平均30分前後しか使わない。その30分も仕事用途のみである。

一度しかない人生をスマホに捧げて後悔はないだろうか。

golubovy/iStock

スマホ中毒は若者だけではない

かつてスマホ中毒は若者特有の症状だと考えられていた。受験や就職、結婚、子育てといったライフイベントを経るうちに、自然と画面から距離を置くようになる。そういう前提があった。

ガラケーは確かにそうだった。友達と朝までしゃべったりメッセージのやり取りをしたり、着メロをダウンロードやゲームで遊ぶという形で若者が消費していた。

だが今は違う。30代で1日6〜8時間、40代でも5〜7時間という調査データがあり、実質的にはZ世代とさほど変わらない水準で画面に張り付いている中年も珍しくない。理由は単純だ。スマホ依存は中高年も飲み込む恐ろしい力だったということだ。

これは統計だけではなく、肌感覚からもそう言える。筆者が市役所の窓口や歯医者の待合室に行くと、ほぼ全員が下を向いてスマホを見ている。年齢層は関係ない。中年も高齢者も同じ姿勢で同じ画面を見ている。

筆者は昔からこうした待ち時間は本を読んできた。病院でも役所でもどこでも本を持っていくので、何時間待たされてもあまり気にならない。

先日は付き添いで病院で4時間待ったが、メモを取りながら持参した本の読んでいたので全然気にならなかった。周囲を見るとスマホいじりが9割、1割が付き合い人とのおしゃべりだ。つまり、一人できている人でスマホいじりをしていない人は誰もいなかった。

待合室という強制的な暇時間が発生する場所は、今や「その人が本当は何に依存しているか」が可視化される。待合室でそうなら、電車の移動中、職場の休憩時間、帰宅後も同じだろう。

子供のスマホ依存がヤバい!

さらに深刻なのは子供だ。自分の子供がクラスメイトを連れてきたり、近くの公園で遊んでいるのだが、「スマホを使う子、持たない子」が完全に二分されている。

うちの家に遊びに来ても、帰るまでずっとTikTok動画を見続けている子供もいる。自転車で数十秒公園まで移動する間ですら、その子は自転車に乗りながらショート動画を見ている。

一方で、両親ともに医者という家庭の子供にはそもそもスマホが与えられていない。筆者は医者の家庭ではないが、子供にはPCは使わせているがスマホは与えないことにしている。

よく言われることに「スマホがないと仲間はずれになる」「時代遅れになる」という意見があるが、筆者はまったくそうは思わない。確かにスマホを持つ子たちは直接スマホで連絡を取り合っているが、学校で会うからだ。本当に仲のいい子はスマホがなくとも、学校で会う約束を取り付けて会うだろう。

また、「スマホがないと時代遅れ」という意見もPCを使えば十分キャッチアップができる。そもそも、スマホ依存症の人たちは情報収集をやっているつもりで、実際にはSNSの短尺コンテンツを受動的に消化し、それもAIアルゴリズムが嗜好性を読み取ったコンテンツを出しているだけに過ぎない。これは情報収集ではなく、単なる暇つぶしに近い。

厳密に言うと、「幅広い知識や情報のシャワー」ではなく「自分に都合の良い情報を偏重的に浴びて認知の歪みを起こている」といえる。これはフィルターバブルという言葉で説明ができる。むしろ、弾圧、迫害、差別、暴力がボーダーレスに広がるSNSは、子供の内は一切触れない方が健全に育つと筆者は見ている。

人間の脳は「幼少期しか伸びない時期」がある。専門的には臨界期、あるいは感受性期と呼ばれるものだ。臨界期が一度閉じると、どれだけ後から努力しても開かなくなる。代表的なのが外国語取得だ。子供がスマホでショート動画やSNSを見続けているその間、貴重な成長のゴールデンタイムが永遠に閉じられてしまう恐ろしさがある。

一生の30%がスマホというヤバさ

今一度冷静に考えてみたい。一生の時間の30%がスマホに吸い取られているというのは明らかに異常であり、不健全である。

パソコンを使うデスクワーカーは一日の大半をPCを使う。そこにさらにスマホを加えると、「意識がある間中、ずっとモニターを見る人生」になる。これは現実世界を生きていないといっても過言ではない。

筆者は日中、PCを使うからこそ、夕方子供が帰ってきたらもうスマホやPCは使わない。たまに子供と一緒に20分ほどドラえもんを見るくらいで、後の時間は料理をしたり、本を読んだり、運動をして過ごす。これは意識してそうしている。暇だからとスマホで余暇時間を塗りつぶせば、あっという間に一日がすぎ、それが一年単位になり、やがて一生になる。

「過去10年間、スマホで見たコンテンツ以外に何も記憶にない」という人生は「たくさん動画を楽しめてよかった」というより「自分はもっと価値ある経験ができたのではないか」という後悔が出てしまうと思っている。

筆者は昔、寝室にスマホを持ち込んで寝る直前までいじっていたが、今は本を読んでいる。満足度は圧倒的に後者だ。スマホで見た内容は1年後、振り返っても何1つ残っていないが、読書した内容はすべて頭に残っているし、記事や動画のネタになる。この差が1年、2年と積み上がると人生の充実と後悔を分ける差になるだろうと思っている。


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Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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