「転がる石には苔が生えない」といいますが、ザ・ローリング・ストーンズほど、このことわざを忠実に実践しているバンドもありません。
ストーンズは7月10日、通算25枚目となるスタジオアルバム『Foreign Tongues(フォーリン・タングス)』を発売しました。CDやアナログ盤に加え、SpotifyやYouTubeなどを通じて、世界中からインターネットで聴けるようになっています。2023年の『Hackney Diamonds』から、わずか3年での新作です。
しかも発売直後、英国のアルバムチャートで首位を獲得しました。ストーンズにとって15作目の全英1位となり、ビートルズの記録に並びました。60年以上前に登場した2つのバンドが、いまだにチャートの記録を争っているのですから、ロックの世界もずいぶん長寿化したものです。
「懐メロ」ではない新作
全14曲を収録した『Foreign Tongues』は、過去の名曲を寄せ集めた記念盤ではありません。前作よりもギターを前面に押し出し、ブルース、R&B、カントリー、ディスコ、ロックンロールを混ぜ合わせた、いかにもストーンズらしい新作となっています。プロデューサーは前作に続いてアンドリュー・ワットが務めました。
政治や社会への視線も衰えていません。「Ringing Hollow」では、自由や夢を語りながら荒廃していく米国への複雑な感情を歌い、「Divine Intervention」や「Covered in You」では、独裁者や富裕層、終末論的な現代社会を皮肉っています。80代になっても、昔話だけをして余生を送るつもりはないようです。
アルバムの最後には、ストーンズの原点の一人であるチャック・ベリーの「Beautiful Delilah」を収録しました。エイミー・ワインハウスの「You Know I’m No Good」もカバーしており、過去を振り返りながらも、新しい世代の音楽を取り込む姿勢がうかがえます。
ポール・マッカートニーも参加
ゲストの顔ぶれも豪華です。ポール・マッカートニーは「Covered in You」でベースを担当しました。ザ・キュアーのロバート・スミス、スティーヴ・ウィンウッド、ブルーノ・マーズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスらも参加しています。さらに「Hit Me in the Head」には、2021年に亡くなったチャーリー・ワッツが生前に録音したドラム演奏が使われました。
もっとも、豪華な客演はあくまで脇役です。中心にあるのは、ミック・ジャガーの声と、キース・リチャーズ、ロン・ウッドによるギターの絡みです。最新技術で若返ろうとするのではなく、昔から持っている音を現代の録音環境で磨き直しています。
レコード時代からストリーミング時代へ
かつて新しいアルバムを聴くには、レコード店へ行き、ジャケットを抱えて家に帰る必要がありました。今では、80代のミュージシャンが作った新曲を、スマートフォンを数回操作するだけで世界中の人が同時に聴けます。
ストーンズは、レコード、カセット、CD、ダウンロード、ストリーミングという音楽産業の変化をすべて生き抜いてきました。変わったのは媒体であり、彼らの基本的な商売は変わりません。ギターを鳴らし、新曲を作り、客の前で演奏するだけです。
往年のロックバンドの多くが、過去の作品の再発売や「最後のツアー」を繰り返すなか、ストーンズはまだ新しいアルバムを作っています。ジャガーはすでに次の楽曲を書き始めており、2027年の公演再開にも意欲を示しています。
結成から60年以上たっても、彼らは「文化遺産」になることを拒み続けています。『Foreign Tongues』が証明したのは、ストーンズが長生きしているということではありません。今も現役だということです。







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