
わが家の網戸に、小さな穴が空いているのを発見しました。窓を開けて穴から蚊が入るのは、とても困ります。
ネットで調べると、ダイソーが「網戸補修シール」を100円で売っていることを突き止めました。
早速近所のダイソーに出かけ、店内を探すこと15分間。45mm×45mmの網戸補修シールが12枚入った商品をやっと見つけました。

ダイソーHPより
「ダイソーって、こんな便利な商品を売っているんだな」
そう思ってさらに店内を見るとこんな商品も見つけました。
「補修用スペアピンチ」
袋の中にクリップ付き洗濯バサミが5セット入ってます。
「そうそう、これも欲しかったんだ」
わが家で20年間愛用してきた洗濯ハンガーは、洗濯バサミが壊れたり紛失したりして数個足りません。これも買物カゴに投入。その時、気がつきました。
「なんでダイソーは、滅多に買わない商品でも、100円で売れるんだろう?」
こんなニッチな商品をたった100円で売って、ダイソーは本当に利益が出るのでしょうか?
その場でスマホを取り出しアマゾンで調べると、網戸補修テープは700〜1500円。補修用スペアピンチは400〜700円。ダイソーはアマゾンよりも圧倒的に安いのです。
実はこの網戸補修シール、ダイソーの低価格戦略を象徴する商品なのです。
破れた網戸を補修する状況は、数年に1回しか起こりません。おそらく消費者1000人いても必要な人は1人で、1店舗で2週間に1個売れる程度でしょう。
一方でダイソーは国内4000店舗あります。1年間の全社売上を計算すると…
4000店舗 × 52週 × 0.5個 = 104,000個
年間10万個売れることになります。
1個100円だから、売上は年間1000万円。
調べてみると、ダイソーの商品数は58,000アイテムで、その84%は自社開発。毎月1600アイテム以上の新商品開発を行ってます。全社売上は5500億円です。
計算すると、1商品の平均売上は約950万円。
上記計算は、大筋合っているようですね。
ちなみにダイソーのお客は、補修用スペアピンチをあわせ買いした私のように、他の商品も買います。店内を観察すると、主婦が何人も店内で物色しています。おそらく…
「そういえば、ウチの網戸が破れてたわね。これ買おう」
「そうそう、洗濯ハンガーの洗濯バサミがないから、これもあると助かるわね」
…みたいなことを考えながら、買っているのでしょう。
100円だからたくさん買ってもたかが知れてます。あまり考えずに買い物カゴに投入してOK。彼女らは、おそらくこう考えています。
「ダイソーなら、どこよりも安いし、探してるものが必ず見つかる」
こうしてダイソーは細かい需要を束ねて、大きな需要に換えているのです。だから網戸補修シールや補修用スペアピンチのような超ニッチ商品を100円で売れるのです。
ダイソーはこのためにコストを最小限に抑えています。
売っている商品は、成熟期にある日用品。イノベーションや研究開発への投資は抑えられるので、商品開発コストは少なくて済みます。
商品コストの大部分は、材料費、生産コスト、流通コストでしょう。
さらに全世界で6,000店舗を展開する圧倒的な販売力による強い価格交渉力を活かして、仕入れ先から低コストで調達して、売り切ることができます。
もう一つあります。
ダイソーが少量小分けで売っていることです。
ダイソーは、45m×45mmの網戸補修シール12枚入りを100円で売ってます。シールを繋げると長さ54cmです。
一方でアマゾンで売っている最安値の網戸補修テープは、幅5cm長さ5mで、700円。
この700円のテープをアマゾンで買って9等分すれば、ダイソーの100円の網戸補修シールが9個できます。売上は900円で、200円得です。
ダイソーはあの手この手を駆使して100円を実現し、お得感を出しているのです。
ダイソーのような低価格戦略の競争優位性は「価格そのもの」です。
これはEDLP(エブリデイ・ロー・プライス)戦略とも呼ばれます。
値引きセールはせず、常に最低価格を保証するのです。
コスト削減分は、すぐに顧客に還元。ダイソーもセールをせずに、100円という低価格を保証し、ニッチなニーズに応える様々な商品を用意しています。
このために、コストリーダーシップを徹底的に追求して低コスト構造にします。
そこで、やることとやらないことのメリハリを明確に付けます。
ダイソーは、圧倒的な品揃え、新商品開発、大量仕入れと大量生産、店舗数拡大は徹底追求する一方で、値引き、返品受付、広告宣伝、商品ブランディング、手厚い接客サービス、過剰包装は一切やりません。
低価格戦略は、コストを低く抑えない限り成功しないのです。
世界的な価格戦略の第一人者であるハーマン・サイモンも著書で、こんな言葉を紹介しています。
「低価格戦略など存在しない。競争に勝つ唯一の方法は、競争相手よりもコストを低くすることである」
低価格戦略のマーケティングコミュニケーションでは、「低価格」を効果的に訴求します。
広告予算はかけずに安価なメディアを使い、メディアを無料の広告として利用します。
低価格戦略は、まず徹底的な低コスト構造を作ること。その上で、低価格を訴求することが王道なのです。
御社が低価格で売る時、ちゃんと低コスト構造を実現しているでしょうか?
【参考情報】
『トップからのメッセージ』ダイソー
『数字からわかるダイソー』ダイソー
『価格のマネジメント』ハーマン・サイモン著
編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2026年7月21日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。







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