
牟田学氏が執筆されたKindle本「エストニアに学ぶ本当のデジタル国家」は、日本のDXが進まない理由を明確に指摘し、今後の方向を示す良書である。一読をお勧めする。
住民記録(住民基本台帳)を管理する基幹システムは、住民基本台帳法に基づき、各市区町村が独自に構築・運用している。住民家族AがB市からC市に引っ越しすると、住民家族Aの情報はB市システムからC市システムに引き渡される。たとえば、住民家族Aに義務教育段階の子供がいれば、その子の就学情報はB市の基幹システムから引き出され、紙またはデータの形でC市に渡され、C市の基幹システムに投入される。
紙での引き渡しではなくデータで引き渡せれば、C市基幹システムへの就学データの投入作業は不要になる。このために、B市の基幹システムとC市の基幹システムを相互に接続し、運用できるようにしよう。このために、就学データの形式を標準化しよう。そんな技術的な対応が重ねに重ねられてきた。約1700の市区町村が、それぞれに基幹システムを持っているので、技術的対応は困難を極めてきた。
牟田氏は、各市区町村が独自に基幹システムを構築・運用してきたのが問題だと、厳しく指摘する。必要だったのは、相互接続や標準化などの技術的な対応ではない。「社会の仕組みそのものを相互に連携できるように再設計する」という視点である、というのが牟田氏の主張である。
牟田氏は本書の最後で次のように提言する。
コンピュータとAIが全国共通の処理を行い、人間が対話、判断、政策形成、地域課題の発見という本来の役割を担う。……限られた人的資源で高品質な行政サービスを持続的に提供するための国家統治能力の再構築そのものが求められる。
在外邦人を対象にネット投票を導入しようという方向に政治が動き出している。この動きは歓迎するが、どのようにネット投票システムを構築するかは立ち止まって考えたほうがよい。
現在行われている紙を使った在外投票では、在外選挙人名簿に登録されている市区町村(すなわち元の居住地)の選挙管理委員会が開封し、審査し、投票箱に入れるようになっている。これをそのままデジタル化すると、約1700の市区町村それぞれがネット投票システムを構築することになる。
政府でネット投票システムを一つだけ構築し、投票結果を元の居住地の選挙管理委員会に通知するというのが代案である。代案のほうが、システム構築費用は下がり、求められるセキュリティの確保も容易になる。これも大げさに言えば「国家統治能力の再構築そのもの」である。牟田氏の著書を読んでこんなことを考えた。
繰り返す。牟田学氏が執筆されたKindle本「エストニアに学ぶ本当のデジタル国家」は、日本のDXが進まない理由を明確に指摘し、今後の方向を示す良書である。一読をお勧めする。
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