サザンオールスターズの代表曲「いとしのエリー」をめぐり、半世紀近く前の楽曲との類似性が改めて注目されています。
きっかけは、Spicaさん(@CasseCool)がXに投稿した比較動画です。「いとしのエリー」のAメロやサビが、米国のジャズ・ソウル歌手マレーナ・ショウの「You Taught Me How to Speak in Love」に似ていると指摘したところ、1万件を超える「いいね」が集まりました。
『いとしのエリー』は名曲のパクリだから、当然名曲ですね。
桑田佳祐は天才的なパクラーだが、これは『愛の言霊』→”Woman in Love”と並ぶ酷い(原曲からの乖離が小さい)パクリ。
Marlena Shaw
“You Taught Me How to Speak in Love”(1974) https://t.co/4q1zT8bPtj pic.twitter.com/D8Ub6Sb2Tv— Spica (@CasseCool) July 21, 2026
「いとしのエリー」は1979年3月25日に発売されたサザンオールスターズの3枚目のシングルです。一方、比較対象となった曲は、ブルーノートから発表されたマレーナ・ショウのアルバム『Who Is This Bitch, Anyway?』に収録された1974年の作品です。

確かに似ているが
実際に聴き比べると、冒頭部分の旋律や、サビへ向かうメロディーの動きには似た印象があります。特に英語のタイトル部分と、「笑ってもっとBaby」というフレーズを重ねると、共通性を感じる人が多いのも理解できます。
しかし、その後のメロディー展開やコード進行、楽曲全体の構成は異なります。過去の楽曲比較でも、似ているのは一部分であり、「いとしのエリー」には日本のフォークや歌謡曲に通じる独自の情緒が加えられていると分析されています。

今回、突然発見された問題でもありません。少なくとも2005年にはインターネット上で両曲の関係が議論され、2008年にも比較記事が掲載されていました。SNSによって、長年の音楽ファンには知られていた話が、新しい世代に一気に拡散したというのが実態でしょう。

「パクリ」の一言では説明できない創作
ネットでは「明らかなパクリだ」という批判がある一方、「影響を受けたとしても、別の名曲に仕上げている」「オマージュとして日本的に更新した作品だ」という擁護も目立ちます。
そもそもポピュラー音楽は、ブルースやジャズ、ソウル、ロックなど、先行する音楽を引用し、変形しながら発展してきました。似たフレーズがあるという事実だけで、直ちに作品全体の価値を否定するのは乱暴です。
「いとしのエリー」が長く愛されてきた理由は、メロディーだけではありません。桑田佳祐さんの日本語と英語を行き来する歌唱、切実な歌詞、サザン独特の演奏、そして日本人の感情に訴える物語性が組み合わさったからです。仮に先行曲から着想を得ていたとしても、それを日本を代表するバラードに変えた創作力まで否定することはできません。
本当の収穫はマレーナ・ショウの再発見
今回の騒動で最大の恩恵を受けたのは、マレーナ・ショウかもしれません。彼女はジャズ、ソウル、R&Bを横断した実力派で、1972年にはブルーノート初の女性ボーカリストとして契約しました。今回の比較をきっかけに、その歌唱力と名盤『Who Is This Bitch, Anyway?』を初めて知った日本のリスナーも少なくないでしょう。
SNSは作品を「パクリか、パクリではないか」という単純な対立に押し込みがちです。しかし同時に、名曲の背景にある音楽的な系譜を掘り起こす装置にもなります。
「いとしのエリー」の価値が下がったというより、名曲には突然変異ではなく、先人から受け継いだ長い歴史があることが可視化されたのではないでしょうか。マレーナ・ショウからサザンオールスターズへ――。そのつながりを知ったうえで両曲を聴き比べることも、音楽の新しい楽しみ方です。
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こちらをサザンオールスターズの『愛の言霊』と聞き比べるのもおもしろいかもしれません。







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