編集者、評論家として活躍した山田五郎さんが、7月14日に亡くなった。67歳だった。所属事務所が22日、公式YouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」で発表した。葬儀は19日に親族や友人、仕事関係者らによって執り行われたという。
山田さんは2024年10月、ステージ4Bの原発不明がんであることを公表した。その後も抗がん剤治療を受けながら、テレビ出演や執筆、YouTubeでの発信を続けていた。亡くなる6日前の7月8日にも「出没!アド街ック天国」の収録に参加しており、最後まで仕事への情熱を失わなかった。
雑誌編集者からテレビの人気者へ
山田さんは1958年、東京都生まれ。上智大学文学部を卒業後、1982年に講談社へ入社し、若者向け情報誌「Hot-Dog PRESS」の編集長などを務めた。2004年に独立してからは、美術、時計、ファッション、街づくりなど、幅広い分野で執筆や講演活動を展開した。
「タモリ倶楽部」や「出没!アド街ック天国」などのテレビ番組では、膨大な知識をユーモアとともに披露した。難しい話を難しく語るのではなく、視聴者が思わず続きを聞きたくなる形に変える。それが山田さんの類いまれな才能だった。
特に「アド街ック天国」には1998年から28年以上にわたって出演した。テレビ東京は山田さんについて、街の魅力を建物や観光名所だけでなく、そこに暮らす人々や文化から読み解く、番組に欠かせない存在だったと追悼している。最終出演回は8月8日に放送される予定だ。(日刊スポーツ)
美術を「教養」から「娯楽」へ
晩年の代表的な仕事となったのが、2021年に始まったYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」である。西洋絵画に描かれた人物の表情や服装、画家の人生、時代背景を軽妙な語り口で解説し、美術館に縁のなかった視聴者にも作品を見る楽しさを伝えた。
この活動は高く評価され、2025年には第17回伊丹十三賞を受賞した。授賞理由は、美術を対話形式で掘り下げる番組の斬新さと面白さだった。山田さんは受賞に際し、大病と闘う中での受賞を、知識や表現を後代に伝えるための励ましとして受け止めていた。(伊丹十三記念館)
最後の講義は「メメント・モリ」
公式YouTubeによると、山田さんが自らの死期を悟りながら収録した「最後の講義」が残されている。テーマはラテン語で「死を忘れるな」を意味する「メメント・モリ」だという。体調が厳しい中でも、視聴者に伝えたいことがあるとして収録に臨んだ。
山田さんは、単なる物知りではなかった。知識を使って誰かを圧倒するのではなく、知識によって世界の見え方を少しだけ豊かにする人だった。絵画も時計も街角も、山田さんの解説を聞いた後には、それまでとは違った姿に見えた。
あの少しとぼけた表情と、皮肉を交えながらも温かい語り口を、もう新たに聞くことはできない。しかし、山田さんが残した膨大な講義や文章は、これからも多くの人を美術や文化の世界へと導くだろう。
謹んでご冥福をお祈りします。







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