皇族数が足りないから、民間人を養子として皇室に迎える。その一方で、現にある宮家では母と娘が同じ家に収まらず、一つだった宮家を二つに分け、それに「別居手当」を払う。これも麻生太郎氏のおかげだ。
2025年9月、三笠宮家の当主に彬子女王が就任し、母親の信子さまは三笠宮家を離れて「三笠宮寬仁親王妃家」を創設した。宮内庁の説明は「宮家で話し合った結果」。家族内で話し合えば宮家を二つに分けることができるが、その費用は税金で負担する。

三笠宮彬子様(左)と信子様
親子喧嘩で増えた宮家に「別居手当」
三笠宮家では、信子さまと彬子さま、瑶子さまの母娘が長年別居し、関係が悪化していた。彬子さま自身も2015年に公表した手記で、母親と10年以上きちんと話すことができないと明かしていた。
2024年11月に三笠宮妃百合子さまが亡くなり、三笠宮家の当主が不在になると、この問題を避けて通れなくなった。結論は彬子さまが三笠宮家を継ぎ、信子さまは別の宮家をつくる。いわば家庭内別居を、宮内庁が制度として追認したのである。
宮家が分かれた結果、信子さまの皇族費は年1525万円から3050万円へ倍増し、彬子さまも640万円から1067万円に増額された。三笠宮家全体では2806万円だった皇族費が、分割後は4758万円となった。差額は年間1952万円。ほぼ2000万円である。
母娘が同じ宮家では暮らせないという事情によって、国民の負担が毎年約2000万円増えたことになる。もちろん皇族にも家庭の事情はあるが、普通の家庭が不和で別居しても、国から年間2000万円の「別居手当」は出ない。
家族になれない母娘、家族にされる旧宮家男子
皮肉なのは、この新宮家誕生の翌年、国会が皇室典範を改正し、旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える制度をつくったことである。
改正法は2026年7月17日に成立した。政府は皇族数の減少を「一刻の猶予もならない喫緊の課題」と説明し、旧11宮家の男系男子を養子縁組によって皇族にできるようにした。養子本人には皇位継承資格を与えないものの、その男系男子の子孫には皇位継承資格が生じ得る。
現実の母娘は一つの家族としてやっていけないが、長年民間人として暮らしてきた旧宮家の男性とは、法律で新しい親子関係をつくろうというのだ。しかも信子さまは養子の養親になる可能性もある。
政府は、旧宮家の男性を養子に迎えることで「宮家を存続させる」と説明するが、三笠宮家を見る限り、宮家の存続を妨げているのは皇族数の不足だけではない。家族関係そのものが維持できないのである。
その現実には目をつぶり、「男系男子」というラベルを持つ民間人を連れてくれば、すべて解決するかのように装っている。養子制度は皇位継承問題の解決策というより、皇室制度の問題を次世代へ先送りするための装置ではないのか。
宮家は家族なのか、行政上の器なのか
今回の分裂によって、宮内庁の皇室構成図には「三笠宮家」と「三笠宮寬仁親王妃家」が別々に掲載されるようになった。皇族の人数は増えていないが、宮家の数だけは増えた。(宮内庁)
宮家とは本来、皇族が生活し、公務を担い、皇統を支える家族単位だったはずだが、現在は、家族というより行政上の容器に近い。中にいる皇族の関係が悪化すれば、容器を二つに分ける。
男性皇族が足りなくなれば、民間から養子を入れる。費用が増えれば、皇室経済法の計算式に従って国庫から支給する。家族関係は壊れていても、帳簿上の宮家は存続する。そして政治家は、これを「伝統を守った」と自画自賛する。
「静謐な環境」で進む公費負担
宮内庁によると、2026年度の皇族費総額は2億5529万円である。皇族費は支給後、各皇族の御手元金となり、宮内庁が経理する公金ではなくなる。(宮内庁)
だからこそ、支給を決める過程には説明責任が必要である。なぜ一つの宮家を維持できなかったのか。なぜ宮家の分割で約2000万円の追加負担が必要なのか。新しくできた宮家は、どのような公的役割を果たすのか。
宮内庁の答えは「ご家族で話し合われた結果」で終わっているが、家族だけで決めたことなら、費用も家族だけで負担するのが普通である。こんなわがままが許されるのは、信子さまが麻生氏の妹だからではないか。
皇位継承より宮家のガバナンスを
政府は、旧宮家男子の養子制度によって男系継承を守ったと胸を張る。だが、男性を一人皇室に入れれば宮家が安定するという発想は、会社に後継者を一人連れてくれば経営問題が解決すると考えるのと同じである。
問題は人数ではなく、ガバナンスにある。三笠宮家では、母娘の不和を調整することができず、宮家を分裂させた。その結果、皇族は一人も増えていないのに、皇族費だけが年間約2000万円増えた。
その直後、今度は「皇族数が足りない」として、民間人を養子に迎える法律をつくった。まず家を二つに分け、次に人が足りないと騒ぎ、外から養子を入れる。マッチポンプという言葉がこれほど似合う制度も珍しい。
皇位継承の安定を論じる前に、既存の宮家を一つの家族単位として維持できるのかを検証すべきだろう。血統の純粋性には国家を挙げてこだわる一方、目の前の母娘関係には口を出さず、解決費用だけは国民に回す。これが、令和の「万世一系」を支える新しい家族政策なのである。







コメント