会社は学校でもサークルでもない
世の中には「若者を理解せよ」「古い価値観をアップデートせよ」といった調子の良い言葉があふれている。上司が部下に気を使い、嫌われないように接するのが正しいマネジメントなのだそうだ。しかし、こうした風潮がいかに現場を疲弊させ、組織のモラルを崩壊させているかを真正面から指摘したのがアゴラでの人気記事でもお馴染みの黒坂岳央『Z世代を甘やかすな』である。本書は、近年の若者層に見られる特異なメンタリティを鋭く解剖し、会社組織の本質を思い出させてくれる。
ビジネスの現場では労働力と対価の交換が行われる。そこにあるのは感情のケアでもなければ、自己実現のためのセラピーでもない。しかし、近年の新入社員の中には、学校の延長線上にあるような甘えをそのまま職場に持ち込む者が少なくない。指示された作業に対して「タイパが悪い」と疑問を呈し、自分の狭い経験則だけで効率を測ろうとする。これでは組織として機能するはずがない。

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「お客様気分」が組織を内部から食いつぶす
彼らの特徴は、自らを労働者ではなくサービスを受ける側、つまり「お客様」と勘違いしている点にある。学校の現場で過剰な要求を突きつけて育った世代が社会に出れば、会社に対しても同じ態度を求めるのは自然の帰結かもしれない。
しかし、企業はボランティア団体ではない。それにもかかわらず、現場の管理職がハラスメントという言葉の圧力に怯え、正当な業務指導すらためらうようになれば、組織の統制は失われる。少し注意されればすぐにパワハラだと騒ぎ立て、自分の仕事ではないと言い放つ。こうした態度は一見すると合理的な権利主張に見えるが、実態は単なる責任逃れである。
権利ばかりを主張し、責任を放棄する矛盾
特筆すべきは、彼らが権利と自由を過剰に主張する一方で、そこに伴うべき責任やリスクを一切負おうとしない姿勢である。始業時間に遅れても悪びれもせず、トラブル対応は業務範囲外として拒絶する。その一方で、成果が出たときにはちゃっかり自分の権利を主張する。
これは完全なフリーライドであり、周囲の真面目な社員にしわ寄せがいく不公正を生み出している。誰かが遅刻すれば他の誰かが穴を埋め、仕事を拒絶すれば管理職が尻拭いをする。結果として、組織のために汗をかく人間ほど疲弊する逆転現象が起きる。
感情論を廃し、冷徹なロジックで再起動せよ
さらに本書の中盤以降では、甘えた「お客様気分」の社員を現実世界に引き戻す具体的なマネジメント手法が示されている。現場での問題に対し、管理職がやりがちな気遣いは、彼らにとって単なる機嫌取りにしか映らない。退職をほのめかすカードをチラつかせて組織を揺さぶる悪癖は、断固として断ち切るべきである。
必要なのは、感情を交えず事実と影響をロジックで突きつけることだ。ミスの内容と損失をデータで示し、明確なタスクを課す。さらにやり取りをテキスト化して記録に残すことで不当な訴えを防ぐ。甘やかしの先に待つのは組織の崩壊でしかない。いま必要なのは、過剰な配慮や期待を捨て去り、冷徹なルールに基づく規律を毅然として取り戻すことである。
【目次】
第1章 職場をかき回すお客様型Z世代社員第
2章 Z世代ってなんて面倒くさいんだ!
第3章 Z世代と氷河期世代・ゆとり世代の断絶第
4章 Z世代を「お客様」から引き戻すマネジメント術第
5章 世代間の違いは不幸ではない








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