黒坂岳央です。
日本は現在、インフレの真っ只中にある。CPI、コアコアCPI、企業物価指数のいずれも上昇基調で、円安も加わりインフレはメガトレンドと化している。
だが不思議なことに、ニュースで報じられるインフレ率と実際の商品価格はまったく連動していない。「インフレ率1〜2%」と聞かされている一方で、スーパーやコンビニの商品は数年で2倍、3倍になっていることも珍しくない。
これは企業が強欲だからではない。そこには経済学的なメカニズムが存在する。

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CPI=販売価格ではない
まず前提として、ニュースなどで使われるCPIは「平均値」という事実を押さえる必要がある。
食品、家賃、通信費、医療、教育、娯楽など数百品目を加重平均した数字がCPIだ。仮に食品が20%上昇していても、通信料金が5%下落し、家賃が0.5%しか上がらなければ、平均すれば2%程度に収まる。つまり「食品だけ」を見れば大きく上がっていても、統計上は何ら矛盾しない。
次に、原材料価格はCPIよりもはるかに変動が大きいという点がある。小麦、コーヒー豆、カカオ、牛肉、乳製品は国際価格の影響を強く受け、円安、干ばつ、戦争、不作によって一気に高騰する。原材料が30%上がれば、最終商品は20〜30%、場合によってはそれ以上値上げせざるを得ないこともある。
さらに為替の影響も無視できない。日本は食品の多くを輸入に依存しており、1ドル110円から160円まで円安が進めば、ドル建て価格が同じでも円換算では約45%のコスト増になる。この負担は最終的に商品価格へ波及する。
企業は価格変更にもコストがかかる
さらに「値上げするにも値上げが必要」というからくりがある。
企業側の事情として値札変更、システム改修、カタログ更新にはコストがかかるため、企業は毎月小刻みに値上げするのではなく、一定期間据え置いた後に一括で値上げする傾向がある。これを価格の粘着性と呼ぶ。
年間インフレ率が2%なら理論上は毎月0.165%ずつ上げればよい計算だが、現実には1年以上据え置いた末に10〜15%を一括で上げるケースが多い。これが「急に高くなった」という体感を生む一因である。
そして見落とされがちなのが利益率の問題だ。飲食店を例にすれば、食材費、人件費、光熱費、家賃のすべてが少しずつ上昇する。利益率が5%程度しかない業種では、コストが数%上がるだけで利益は消える。
この場合、企業はCPIに合わせて値上げしているのではなく、自社のコスト構造に合わせて値上げしている。CPIが2%でも、店の総コストがそれを大きく上回ることは珍しくなく、赤字を避けるためにCPIより大幅な値上げが必要になることさえある。
インフレに負けない戦い方
インフレを止める事はできない。重要なのは「出費を削る」ではなく、「インフレに勝つ購買力」である。インフレに対して節約の効果は薄い。生活必需品を削っても限界があるし、デフレと違って買い控えはさらなる価格高騰になるので逆効果だ。
結論は2つ、インフレに強い資産を持つこと。そして収入そのものを増やすことだ。
まずはインフレに強い資産に変えることである。現金は最も弱い資産だ。年2%のインフレでも35年で実質価値は半減する。ゴールド、株式、不動産といったインフレ耐性資産を持つのが定石だ。
そしてもう1つの対抗策はシンプルに収入を増やすことだ。支出削減より、こちらの方が圧倒的に効率が良い。
収入を10%、20%増やすことは、決して難しくなく、再現性も高い。市場価値の高いスキルと経験を作れば、転職で昇給が実現する。今の勤務先に賃上げを期待するのは、効率が悪いので転職することだ。
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今起きているインフレは一過性ではなく、市場のメガトレンドなので止めることは誰にもできない。そうなるとリスクを取って対応するしかない。そしてリスクが有効な時代においては、「動かないこと」が大きなリスクなのだ。
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