「65歳以降も働きたい」は3割だけ:それでも長く働かざるを得ない日本

マイナビは28日、40〜50代のミドルシニアを対象にした調査で、3割超が65歳以降も働き続けたいと考えているとの結果を発表した。政府が掲げる「生涯現役社会」を後押しする数字にも見えるが、逆から見れば約7割は65歳を超えてまで働きたいとは考えていない。

【参照リンク】40〜50代の3割超、「65歳以降も働きたい」 マイナビ調査 日本経済新聞

問題は、それでも日本人は今後、可能な限り長く働かざるを得ないことだ。

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7割は65歳以降まで働きたいとは思っていない

40〜50代で「65歳以降も働き続けたい」と答えた人は30.1%だった。

もちろん残る約7割が「65歳になったら絶対に働かない」という意味ではない。しかし、働き盛りの世代に尋ねても、65歳を超えて積極的に働きたい人が少数派なのは興味深い。

長年働いてきたのだから、65歳ぐらいになれば仕事を辞め、趣味や旅行、家族との時間を楽しみたい。それは自然な希望だろう。

ところが人口減少と高齢化が進む日本には、それを全員が実現できるだけの余裕がない。

年金ができた時代とは寿命がまるで違う

最大の問題は年金制度である。

日本の公的年金は1942年に厚生年金の前身となる労働者年金保険制度が始まり、1961年に国民皆年金が実現した。

ところが1960年の平均寿命は男性65.32歳、女性70.19歳だった。2020年には男性81.56歳、女性87.71歳まで伸びた。65歳時点の平均余命も1960年以降、男性で約8.4年、女性で約10.8年延びている。

つまり年金制度が整備された時代と現在では、「引退後」の長さがまるで違う。

現役として働く期間がそれほど伸びないまま、年金や医療を受ける期間だけが長くなれば、制度の収支が苦しくなるのは当然である。しかも少子化で支える現役世代は減っている。

保険料を際限なく上げるわけにもいかない以上、健康な人には65歳を超えても働いてもらうことは避けられない。

ところが雇用制度は「終身雇用」のまま

そこで別の矛盾が出てくる。

日本では労働契約法16条により、「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当」と認められない解雇は無効となる。この解雇権濫用法理は最高裁判例によって形成され、後に法律に明文化されたものだ。経営上の理由による整理解雇についても、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続きなどが厳しく判断される。

もちろん法律が「終身雇用」を義務付けているわけではない。しかし、こうした判例法理と企業慣行が組み合わさり、日本企業は正社員を長期雇用し、年功的に処遇し、最後は定年で一律に退出させるシステムを長く維持してきた。

70歳まで働く社会になれば、この仕組みはもたない。

年金も雇用も「昭和モデル」のままでは無理

必要なのは単純な定年延長ではない。

60歳定年を65歳、さらに70歳へ動かすだけなら、年功賃金の期間まで延び、企業の負担は重くなる。逆に60歳を超えた途端、同じ仕事なのに賃金だけ大幅に下げる再雇用制度では、高齢者の就労意欲は高まらない。

年齢ではなく仕事内容や生産性に応じて賃金を決め、転職や退出もしやすい労働市場への転換が必要だ。

今回の調査が示したのは、「人生100年時代だからみんな元気に働こう」という明るい話だけではない。

多くの人は65歳を超えてまで働きたいとは思っていない。しかし長寿化した社会で年金制度を維持するには、働ける人にはできるだけ長く働いてもらう必要がある。一方、その受け皿となる雇用制度はいまだに終身雇用を前提とした昭和型システムを引きずっている。

寿命だけが延び、年金と雇用の制度設計が追いついていない。この二つを同時に改革しなければ、「生涯現役社会」は単に高齢者へ長時間労働を押しつけるスローガンになりかねない。

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