ヨーロッパの劇場シーズンは、秋から初夏。パリの劇場の代表格であるパリ国立オペラ座も、9月から2026-2027シーズンが始まる。このシーズン一番の注目は、パリ国立オペラ座バレエのエトワールダンサー、ドロテ・ジルベールの引退だ。

ドロテ・ジルベールの引退公演が行われる「マノン」のポスター。
©︎2026 Opera national de Paris
パリ国立オペラ座バレエの最高位、”エトワール“。154人の所属ダンサーの中でこのタイトルを得ているダンサーはわずか15人。ドロテは、2007年にエトワールに任命された、最古参エトワールだ。
1983年生まれ、南仏トゥールーズ出身。オペラ座バレエ学校を経て2000年に17歳で入団した当初から、未来のエトワール候補として大きな注目を集めていた才能あるダンサー。その期待通り、順調にキャリアを重ね、24歳という若さで世界屈指のバレエカンパニーのトップダンサーの1人になった。

「椿姫」。ドロテの演技力が光る。
©︎Maria-Helena Buckley
高い技術力や深みのある演技力はもちろんのこと、抜群のリズム感がドロテの大きな魅力。クラシック、モダン、コンテンポラリーを問わず、実になめらかに自らの体の動きを音楽に乗せられる天性のセンスを持っている。パートナーとの関係性構築が上手なのも、彼女の特徴。ドロテと共に踊ることでパートナーとしての技量を高めた男性ダンサーは少なくない。

「ラ・バヤデール」。ユーゴ・マルシャンと。
©︎Yonathan Kellerman
偉大なエトワール、ドロテ・ジルベールは、この10月、定年により引退する。自身の引退に選んだ作品は、ケネス・マクミラン振付「マノン」。フランスの小説家アベ・プレヴォーの傑作「マノン・レスコー」をベースにしたドラマティックなバレエ作品だ。
技術だけでなく深い演技力も求められる大作で、タイトルロールの”マノン“は、古今東西の女性ダンサーが一度は踊りたいと願う役だろう。バレエという表現を通して実に自然な演技が出来るドロテにとってマノンは多々ある当たり役の中の一つで、これまでも何度も、涙なしには見られない素晴らしい舞台を見せてきた。
彼女のラストダンスの相手としてデ・グリューを踊るのは、ユーゴ・マルシャン。1993年生まれ、2017年にエトワールになった、今やカンパニーを代表するダンサーの1人。2015年、まだコール・ド・バレエ(群舞を踊るダンサー)の1人だった若きユーゴは、「マノン」の公演で、デ・グリューに大抜擢された。入団4年目、まだ経験も浅いユーゴの相手として、彼を導くようにマノンを踊ったのが、ドロテだった。

「ジゼル」。ドロテとユーゴとの相性のよさは完璧。
©︎Maria-Helena Buckley
初々しく全身全霊でマノンを愛するデ・グリューを演じたユーゴと、確立された技術と演技力でマノンという女性を鮮やかにドラマティックに描き出したドロテ。二人のダンサーが反応しあって生み出した感動の舞台は、今なお常連たちの語り草になっている。
ドロテとユーゴによる「マノン」は、9月28日、10月1日、12日、そして引退公演の15日。この時期パリにいて、運よく彼らが踊る日のチケットが取れたら、一生忘れられない時間を美しきパレ・ガルニエで過ごせるだろう。

壮麗なパレ・ガルニエ。
2027年夏から5年間に及ぶ改修工事が予定されている。
©︎Jean-Pierre Delagarde
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