ドイツ「極右政党」AfDの絶対過半数阻止は「郵便投票」次第

ドイツで6日、同国東部のザクセン=アンハルト州議会の投開票が実施される。複数の世論調査では、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が第1党となることはほぼ確実視されている。関心は、同州AfD党首ウルリヒ・ジークムント氏(35)が州首相ポストを獲得できる絶対過半数を得るかに注がれている。ZDF(ドイツ第2テレビ)による最新の世論調査では、AfDの得票率は40%にとどまり、絶対過半数には届かないという結果が出ている。

ザクセン=アンハルト州の次期首相候補と見られているジークムント氏、同州AfD公式サイトから

世論調査では、AfDは支持率40%以上で他党を大きく引き離している。一方、CDU(キリスト教民主同盟)は、スヴェン・シュルツェ氏を州首相に擁しているにもかかわらず、支持率はその半分程度にとどまっている。

ところで、AfDが絶対過半数を獲得できるか否かの要因は、①郵便投票の結果、②どの政党が「5%条項(得票率5%未満の政党は議席を得られないとする規定)」をクリアできないか、の2点に大きく依存していると見られている。

②の場合、例えば、FDP(自由民主党)は州議会入りする見込みがなく、緑の党やザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)の状況も不透明であり、SPD(社会民主党)でさえ議席確保が確実とは言えない状況だ。得票率5%の壁をクリアできなかった政党の得票率がAfDなどに振り分けられることになっている。

問題は①だ。AfDは郵便投票の動向に神経を尖らせてきた。その郵便投票が有権者の間で人気が高まっているのだ。州統計局が1日に発表したところによると、8月25日までに約33万5000通の郵便投票用セットが発行された。これはザクセン=アンハルト州の全有権者の約20パーセントに相当する。2021年の選挙で実際に郵便投票を行った総数を既に上回っている。

州議会選挙を前に、AfDは郵便投票が公正ではないという疑念を組織的に煽っている。ジークムント氏によれば、特に介護施設においてそうしたリスクが存在するといい、監視を強めるよう呼びかけている。

AfDは伝統的に、郵便投票を行う層からの支持率が他の政党に比べて低い傾向にある。AfDは不正の源泉となるとして郵便投票の廃止を訴えてきた。この状況は米国の共和党の立場と酷似している。トランプ大統領は長年にわたり郵便投票に反対するキャンペーンを展開しており、郵便投票が選挙結果を歪める可能性があると主張してきた。AfDの郵便投票へのスタンスは同じだ。

連邦AfDの共同党首ティノ・クルパラ氏は最近、ドイツ公共放送ARDに対し、介護施設において「いわばペンを(他人に)動かしてもらうような事例を知っている」と語った。同氏によると、不正の可能性は介護施設だけでなく、市町村庁舎での郵便投票関連資料の保管場所にもあるという。そこでは「市長だけが投票紙が保管されている場所の鍵を管理している」からだ。クルパラ氏は、郵便投票制度そのものを廃止すべきだと主張している。

ちなみに、ザクセン=アンハルト州では、2014年に実施された地方選挙でシュテンダールという町で、郵便投票の書類が偽造され、規定数を超える投票用紙が発行され、再実施された郵便投票の際にも書類の改ざんが行われたことがあった。この件に関与したCDU(キリスト教民主同盟)の市議会議員は、後に懲役2年半の判決を受けている(オーストリア国営放送のヴェブサイトから引用)。

参考までに、欧州では郵便投票は20世紀半ばから「投票率の向上」と「投票のアクセシビリティ(利便性)」を目的に段階的に導入されてきた。スイスなどは現在、有権者の90%以上が郵便投票を利用している。ドイツでは1957年に不在者向けとして始まり、徐々に普及。2008年の法改正で完全に理由が不要となり、コロナ禍を経て現在では投票者全体の3割~4割以上が郵便投票を利用している。一方、フランスではかつて郵便投票が認められていたが、1970年代の地方選挙で大規模な投票偽造や不正が発覚したため、1975年に郵便投票を法律で禁止した。その後、コロナ禍や在外投票向けに一部緩和の議論はあるが、国内の通常選挙では依然として非常に慎重だ。

いずれにしても、ジークムント氏の州首相の座は、苦手の郵便投票でAfDがどれだけ有権者の票を獲得できるかにかかっている、ともいえるだろう(「『ドイツで最も危険な男』は誰?」2026年8月19日を参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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