黒坂岳央です。
NHK番組で「月収45万円のウェブライターが15万円に激減」という特集をやっていた。「AIに仕事を奪われた!」とSNSでは大きな反響があり、「取材の伴うライターしか生き残れない」「AIを使う”人間”に敗れただけ」といった様々な意見が出ていた。

NHK首都圏情報 ネタドリ! 「激変!?“AI時代”私たちはどう働く」9月4日放送より
筆者は2017年から未経験から記事を書き始めたライターで、これまで色んなメディアで記事を書いてきた。その経験から言えば、AI時代にライターが生き残れるかどうかを分けるのは、文章力でも取材力でもなく、「属人性」だと思っている。
つまり、「何を書くか」以上に「誰が書くか」が重要になる。このテーマで持論を述べたい。

mapo/iStock
仕事が消えるライター
AIによって最も厳しくなるのは、「文章を書くこと」そのものを商品にしているライターである。
例えば、「このテーマについて3000文字の記事を書いてください」「SEOキーワードを入れて記事を作ってください」「この情報をわかりやすくまとめてください」といった仕事だ。
こうした仕事では、発注者にとって「誰が書くか」は重要ではなく、一定水準の文章で、情報を整理して読みやすくすることである。一昔前までは「誰でも始めやすい理想の副業」として脚光を浴び、クラウドソーシングサイトに山ほど仕事があった。
だが、この領域は生成AIが非常に得意としている。人間のライターに月数万円、場合によっては数十万円を払っていた仕事を、AIを使えば低コストで処理できる。
これはライターに限った話ではない。画像制作、動画編集、プログラミングなど、「成果物を作ることそのもの」が商品になっている仕事は本格的にAIに飲み込まれていくだろう。
仕事が増えるライター
では、どんなライターに仕事が残るのか。それはその人自身に仕事が紐づいているライターである。
例えば、有名人が本を出版すると売れる。読者は、その本を「文章が上手だから」買うわけではなく、その人の経験、知識、考え方、肩書き、人生そのものに価値を感じて買っている。
これは専門家の本も同じで、読者が欲しいのは単なる情報ではない。「この人はどう考えているのか」「この人だから言えることは何なのか」という部分だ。価値の源泉が文章ではなく、書き手本人にある作品は残るだろう。
筆者自身、現在、ほぼ毎日のように記事を更新している。そして、記事を書き続けた結果、書籍出版、他メディアへの記事執筆、インタビュー、テレビ出演、講演など、様々な仕事につながってきた。ありがたいことに昨年から頂く仕事の量は以前に比べて遥かに増えた。
仕事につながっているのは「筆者の文章力」というより、筆者が普段から発信している意見、ポジション、専門性、経歴、そして「この人はこういうことを言う人だ」というイメージそのものが仕事を生み出していると感じる。
テレビ出演では特にそれが顕著で番組収録後、「そのような意見を出している人を検索しても黒坂さんしか連絡が付く人がいなかった」とディレクターから言われることがある。まさにここが重要なのである。
取材できる人も強い
では、属人性とは「有名人」や「インフルエンサー」だけの話なのか。そうではない。取材できるライターも強い。
筆者の親族や周囲にはテレビや新聞といったマスメディア勤務者がいる。昨今、こうしたメディアは「オールドメディア」とか「オワコン」と言われがちだが、筆者は今後も残ると考えている。
なぜなら、彼らが生み出しているのは単なる「文章」ではなく、自分自身が現場に行かなければ得られない一次情報だからだ。
AIで駆逐されるのは、どちらかといえばそのようにバカにするネット発信者側であり、マスメディアは残ると思うからだ。
妻の親戚は新聞社勤務がいるが、彼は大きな事件や災害が起きると現地にいって取材をして記事を書く。ネットには彼が取材した記事をインフルエンサーが拡散したり、AIで引き出せたりできる。
だが、彼がいなければ現地取材ができず、そうなるとインフルエンサーもAIも二次情報を出せない。ロボットが現地に行く時代がこない限り、この構図がひっくり返ることはない。
つまり、彼の価値は「記事を書く能力」だけではない。彼自身が現場に行き、関係者に話を聞き、一次情報を獲得できることにある。
筆者自身、過去に取材記事を書いたことがある。その際、熊本の阿蘇山に車を走らせて現地取材をして記事を書いたり、ある事件で直接関係者に話を聞いて取り上げたこともあった。このように誰かが足を使って取材をしなければこの世に出てこなかった情報は今後も残るだろう。
「オールドメディア」とバカにする人が多いが、筆者は体を張って時には危険な現場に足を運んでカメラをまわす彼らをリスペクトしている。もちろん、被害者を執拗に追い回すような報道は慎むべきだが、情報化社会のインフラをやっている報道陣はAIに駆逐されることはないと思っている。
つまり、取材ライターが強いのも、結局は属人性が高いからなのである。
◇
AI時代のライターに必要なのは、「AIより上手に書く能力」ではないし、「AIを使って記事を大量に作る」でもないだろう。「この人に書いてほしい」と思われる属人性を持たせる存在になることである。
「何をいうか」ではなく、「誰がいうか」。これからのライターには、この差がますます大きくなる。
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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)







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