県警から感謝状の女性社長、不採用者をトクリュウへ?:求人が犯罪人材バンクになる恐怖

広島県警は9月7日、特殊詐欺の実行役をさせる目的で男性を東南アジアへ行かせようとしたとして、建設会社代表の前原里帆容疑者(32)と元同社役員の松本佑香容疑者(30)を、職業安定法違反と所在国外移送誘拐未遂の疑いで再逮捕した。

県警によると、2人は複数人と共謀し、過去に会社の採用面接を受けて不採用となった男性に「海外で稼げる仕事を紹介できる」などと持ちかけ、リクルーターを紹介。その後、男性に特殊詐欺の「かけ子」の仕事内容が提示されたという。男性が不審に思い警察へ相談したため、海外への移送は未遂に終わった。2人はいずれも容疑を否認している。

「この応募者、うちでは使えないから別の仕事へ」の恐怖

この事件をめぐり、SNSでは「今日面接した人、イマイチだから手元にある個人情報使ってトクリュウに流しちゃえ、って発想がヤバすぎる」との指摘はもっともである。

今回、男性は当初から闇バイトに応募したわけではない。今年2~3月ごろ、建設現場での仕事を求めて通常の採用面接を受け、その後に別の仕事を持ちかけられたとされる。

求職者は採用活動を通じて、氏名や電話番号、住所、職歴など多くの個人情報を企業に提供する。今回の容疑が事実であれば、通常の求人を通じて得た応募者との接点が、犯罪の実行役を勧誘する入口になったことになる。

しかも社長は県警から「感謝状」をもらっていた

前原容疑者は過去に広島県警から感謝状を受けていた。

2024年11月、広島市東区で道に迷っていた高齢女性に声をかけられ、女性を車で自宅付近まで送り届けた。女性には行方不明届が出されており、無事に家族と再会したとして、同年12月に警察から感謝状が贈られた。

表彰を受ける前原里帆容疑者 2024年12月23日 中国放送より

当時は地域で高齢者を保護した人物として報じられたが、約2年後には、その広島県警から犯罪組織への人材勧誘に関与した疑いを持たれることになった。

【参照リンク】「ここはどこですか?」突然現れた高齢女性 車で自宅に送り届けると家の前にはパトカーが… とっさの判断が生んだ奇跡の再会 TBS NEWS DIG 2024年12月23日

もっとも、当時の行為と今回の事件は別であり、今回の容疑についても刑事責任が確定したわけではない。

履歴書が「犯罪リクルート名簿」になる

県警は、2人が匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」のリクルーター役だったとみている。

2人は8月にも、別の男性を仕事名目で海外へ移送した疑いで逮捕されており、県警はほかにも海外へ移送された人物がいる可能性があるとして捜査を進めている。

通常の求人を装って人を集め、その中から犯罪に誘える人物を選別する仕組みがあったとすれば、企業の採用活動が事実上の「犯罪人材バンク」として利用されることになる。

「闇バイトに応募するな」だけでは防げない

これまで闇バイト対策では、「SNSの高額求人を信用しない」「仕事内容の不明な求人には応募しない」といった注意喚起が中心だった。

しかし今回の事件では、男性が最初に接触したのは通常の建設会社の採用面接だったとされる。求職者が自ら犯罪求人を探さなくても、正規の求人への応募をきっかけに犯罪組織へ誘導される可能性が示された形だ。

求人企業による応募者情報の管理や、採用後に不審な仕事へ勧誘されるケースへの警戒も必要になりそうだ。県警は事件の背後関係や、トクリュウとの具体的なつながりについて全容解明を進めている。

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