日本の子供は頭が良いのか?:最低スコアをつけた日本人が増えているという事実

PISA、OECDが3年ごとに調査する学習到達度調査の最新結果が発表されました。これは91か国の国と地域が参加する世界規模の教育調査で15歳の子供を調査対象とし、日本からは6500人が参加しています。

結果だけ見ると日本のランクは科学が5位、数学も5位、読解力が4位で前回調査からは目立ったランク上の変化はありませんでした。ただし、得点で見ると参加国全体のレベルが下落し、日本もそのトレンドに沿っています。また各分野には最低1から最高6のランク付けがあり、2点が基礎的習熟、1点が社会参加に必要な最低レベルとされる中で日本だけ見ると1の最低レベルのスコアをつけた人は読解力で18.6%(前回13.8%)、数学16.1%(同12.0%)、科学11.3%(8.0%)で前回に比べ有意に悪化しています。ただ、OECD全体ではランク1の比率が全体の30%ぐらいいることを考えると日本人の底力は残っているようですが、この悪化傾向は気になります。ちなみに日本人でランク5以上の優秀な比率は読解11.2%、数学22.3%、科学17.2%であり、こちらは前回調査からは横ばい傾向にあります。

Satoshi-K/iStock

世界ランクの比較でみると各ジャンルとも1位から5位まではアジアが独占、6-10位もアジアが半分、11位以下に欧米などがランクインしています。教育国と言われている韓国は各ジャンルとも6-7位に留まっているのが印象的です。1位と2位は全ジャンルで中国とシンガポールが独占です。

さてこのデータが物語るものを考えてみましょう。

私が気になったのはレベル1の最低スコアをつけた日本人がかなり増えている点です。3年間で3-5%ポイントの悪化は憂慮すべき事実だと思います。15歳の子供のこの3年間の環境の変化で思い当たるのはスマホ、デジタル化、AIの浸透で、生活環境の変化が主たる理由だと考えてよさそうです。

またOECD全体を見ても2015年から今回までに平均値でおおよそ30点、比率にして6%ポイントも下げています。日本の下げ幅はその半分ぐらいですが、いずれにせよ、子供の学習能力が下がり続けていることは深い懸念であります。

私が特に気になるのは子供たちがAIを当たり前に使いこなしている点であり、数年後にはAI無しには生きていけない人が爆発的増加をする懸念であります。テクノロジーの進化は人間が表層的な行動をするには極めて有効であり、見方によっては全体が底上げしているのではないか、とすら感じるのですが、付け焼刃的な知識ですので討論をしたときに論破できず、数学や化学などにおいてなぜそうなるのか、あるいはそういう結果を引き出すまでのプロセスを理解しない子供が今後、相当増えてくるとみています。

私どもは当地で日本語の教科書を販売していますが、大学で教える先生方はデジタル教科書では成績が伸びず、通常の紙の教科書を使うよう指導しているところが増えており、私どもも9月の新学期に向けた受注と納品が想定を上回り、一部の教科書は在庫切れになっています。デジタル教科書の普及の一つに教科書を買いたくない学生がコピーをしてPDFなどが出回り、一部の大学ではそれを黙認していました。私から見れば教育効果が落ちるのを先生はみすみす放置するのか、と言いたいところであり、私が単に紙の教科書を売っているからポジショントークだろうという話ではなく、案外、オールドスクール的な勉強の仕方も時としては有効だと考えています。

さて日本人の子供は頭が良いのか、と聞かれれば相対的には良いとは思います。ただし、どうしても記憶重視の学習が主体であり、また全体像を捉えず、いきなりピンポイントの話をすることも多く、今勉強していることが1年を通じた学習のどの位置にいるのか、そして学んだ勉学を自分の中で消化し、アウトプットする算段が紙の試験だけというのが心許ないところであります。(当地で討論やディベートを小学校から取り入れているのは学んだものをアウトプットする際、自分の言葉にして議論するプロセスがあるのです。)

また日本では学校で教わった唯一の解を正とし、他のやり方を考えたり、他にも正解があるかどうかを検証することはあまりないでしょう。きわめて画一的な知識をベースに成り立っているので応用が利かなかったり、想像力が欠如し、何か問題にぶつかった時に自分で解決する能力は劣っているように感じます。例えば私は当地に来てモノの見方を正面から見るだけではなく、後ろから、横から、あるいは透かしてみたり、逆さにしてみたりと様々な角度から物事を検証し、いくつもの解を並べその中で最適解はどれか、というアプローチを学びました。日本では解は一つだけでしたのでこの学びは大きかったと思います。

またPISAの結果で上位がアジア勢を締めていますが、学校の勉強ができるから将来偉くなるわけでもないことは今の地球儀ベースで起きていることを考えればお分かりいただけると思います。多国籍国家であるカナダにおいてもアジア人はアジア人でかたまる傾向があり、カナダ人の世界にはなかなかなじめない見えない壁があります。

その点、日本人は欧米との親密性が高いので国際間の壁を乗り越えて活躍できる人材が育成されることを祈念したいところであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年9月10日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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