新米より古米が高い異例のコメ価格:持ち続ければ農水省が何とかするのか

「令和の米騒動」で高騰したコメ市場が、今度は供給過剰に直面している。鹿児島市の米穀店では、2026年産の新米が5キロ2700~2900円で販売される一方、2025年産米は3200円。通常なら付加価値の高い新米の方が高いはずだが、新米が古米を下回る異例の逆転現象が起きている。

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高値で仕入れた2025年産米が売れない

背景にあるのは、急速な需給の緩みだ。政府による備蓄米放出に加え、2025年産米の供給が増えたことで、流通段階には在庫が積み上がった。新米が店頭に並び始めても前年産米が残り、値下げ圧力が強まっている。

問題は、価格高騰時に2025年産米を高値で仕入れたJAや卸売業者だ。市場価格に合わせて大幅に値下げすれば、仕入れ価格との差額が損失として確定する。そのため、安値で在庫を処分するよりも、価格の回復や政府の需給対策を待つ方が有利だという判断が生まれやすい。

株式投資でいえば、「損切り」を避けて含み損を抱え続ける構図に近い。

持っていれば農水省が買ってくれる?

政府は9月、2025年に放出した備蓄米について、まず21万トンを買い戻す手続きを始める方針を示した。政府備蓄を積み直す目的がある。

もっとも、この21万トンは市場で余っている古米を政府が無条件で買い上げる制度ではない。放出時から一定期間内に政府が買い戻す条件が付けられていた備蓄米が中心となる。

それでも市場に与える心理的な影響は無視できない。コメが不足すれば政府が備蓄米を放出し、供給過剰になれば再び買い戻す。価格がさらに下落すれば追加対策が取られるとの期待も生まれる。

結果として、「今すぐ安値で売って損失を確定させるより、在庫を持ち続けた方がいい」という判断を後押しする可能性がある。

「農水省プット」が市場をゆがめる

コメ市場にも金融市場と同様に、価格が大きく崩れれば農水省が何らかの対策を講じるという「農水省プット」ともいえる期待が形成される余地がある。

本来、供給過剰になれば価格が下落し、在庫を抱えた事業者が損失を負う。その結果、翌年の仕入れや生産が抑制され、需給が調整される。

政府が価格下落のたびに市場へ介入すれば、この調整機能が弱まり、民間事業者が在庫処分を先送りするモラルハザードにつながりかねない。

コメ政策は「不足なら放出、余れば買収」の繰り返しか

昨年は「コメ不足」への対応として政府が備蓄米を大量に放出し、今年は供給過剰を受けてその一部を買い戻すことになった。

食料安全保障上、一定量の備蓄を維持する必要はある。ただ、放出と買い戻しを繰り返せば、保管や流通を含めた財政負担も生じる。

より重要なのは、市場参加者の行動への影響だ。高値で仕入れた在庫を安値で処分すれば損失は確定する。しかし、持ち続けていれば価格が戻るか、政府が何らかの需給対策を打つかもしれない。

そうした期待が定着すれば、コメ市場では価格による自律的な調整が働きにくくなる。新米より古米が高い現在の逆転現象は、単なる「コメ余り」だけでなく、政府介入を前提とした市場構造の問題も映し出している。

鈴木憲和農水相Xより

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