オラクルが「不可抗力」宣言:AIデータセンター建設に危険信号

米オラクルが、ニューメキシコ州で建設中の巨大AIデータセンターProject Jupiterをめぐり、開発会社に不可抗力(force majeure)を通知したことが明らかになった。(Bloomberg)

Project Jupiter (NPR)

不可抗力条項とは、災害や政府規制など当事者の責任ではない事情で契約が履行できなくなった場合、賃料などの支払いを免除・延期する条項である。これはデータセンターが稼働できなかった場合の予防線とみられる。オラクルの株価は、この報道で5%下がった。

「不可抗力」はただの事務手続きではない

今回の通知だけを見て「オラクルがデータセンター建設から撤退する」というのは早計だが、問題はなぜ不可抗力を持ち出さなければならなくなったのかだ。

Project JupiterはOpenAIにAI計算能力を供給する巨大プロジェクトで、最大4.5GWの追加データセンター容量を整備し、両社の提携規模は5年間で3000億ドルを超える。ニューメキシコ州の拠点は、その投資計画の中核の一つである。

当初は大規模な天然ガス発電所で電力を自前で確保する計画だったが、環境問題や水利用をめぐって地元で反対運動が起きた。ニューメキシコ州最高裁は8月、発電設備に必要な大気汚染許可の審理を一時停止し、建設に使う一部の水利用も停止を命じた。(SourceNM)

オラクルはその後、Bloom Energyの燃料電池を中心とする電源計画へ変更し、さらに州内で2GWの再生可能エネルギー開発案件を募集しているが、再エネで4.5GW(原発4.5基分)もの巨大な電力は調達できない。

180億ドルの借金にも黄信号

さらに深刻なのが資金調達だ。オラクルのAIデータセンター投資に関連する約180億ドルの社債は、債券市場で額面1ドル当たり90セント程度まで値下がりしている。S&Pは7月にオラクルの信用格付けを、投機的格付けの一歩手前まで下げた。(Reuters)

AI需要は猛烈に伸びているが、その需要を満たすためにはデータセンター、送電網、発電設備、半導体、冷却設備に天文学的な投資が必要になる。数千億ドル単位の設備投資を先行させ、何十年もかけて回収するビジネスモデルでは、少しの工期遅延や金利上昇で採算は大きく変わる。

建設は続いているが、AI投資ブームに暗雲

オラクルは9月14日、州最高裁が停止したのは隣接する発電設備の許可手続きであり、データセンター本体の建設許可には影響しないと説明している。同社の公式サイトにも8月27日時点の建設中の写真が掲載されている。(オラクル)

だが、大型プロジェクトでテナント側が「不可抗力」を通知し始めたという事実は軽くない。これまでAI業界では「計算能力はいくらあっても足りない」という前提で、データセンター建設競争が続いてきた。

しかし土地も電力も水も資金も無限ではない。AIブームのボトルネックはGPUではなく、電力と借金だった――そんな笑えない現実が見え始めている。

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