米爆撃機が習近平主席の頭上を歓迎飛行:米中は「同盟国」として共に戦ったのか

時事通信によると、「トランプ米大統領は24日、中国の習近平国家主席を迎えたホワイトハウスでの歓迎式典で、第2次世界大戦で米中が『同盟国』として共に戦った」と発言したことから、関係国の間で物議を醸しているという。なぜならば、米国が当時、連合国の一員として一緒に戦ったのは蒋介石率いる中華民国軍で、毛沢東の共産党軍ではないからだ。

トランプ大統領と習近平夫妻 ホワイトハウスXより

日本最大の言論プラットフォーム「アゴラ言論プラットフォーム」の代表・池田信夫氏は自身のコラム「アメリカと中国は『第2次世界大戦の同盟国』だったのか」の中で、当時の政治的情勢について分かりやすく解説している。

アメリカと中国が日本と戦った連合国側にいたのは事実だが、当時の中国を代表していたのは蒋介石の率いる中華民国である。1943年のカイロ会談でルーズベルト大統領と対日戦争・戦後処理を協議したのは蒋介石で、1945年に国連憲章へ中国を代表して署名したのも中華民国政府だった。

中華人民共和国が成立したのは、終戦の4年後の1949年である。アメリカと中華民国は戦時中の同盟国だったが、中華人民共和国政府は存在していなかった。国連では1971年に中国の代表権が中華人民共和国政府へ移り、アメリカが同政府と国交を樹立したのは1979年だった

アメリカと中国は「第2次世界大戦の同盟国」だったのか
トランプ大統領と習近平国家主席が9月24日、ホワイトハウスで会談し、トランプは歓迎式典で「第2次世界大戦でアメリカと中国は同盟国として共に戦った」と発言した。アメリカの同盟国だったのは「中華民国」アメリカと中国が日本と戦った連合国側にいたの...

ということは、米中は第2次大戦時、少なくとも同盟国と言えるほどの関係ではなかったわけだ。習近平主席はその後の公式夕食会で、「80年以上前、中米両国人民は協力して日本軍国主義の侵略者と戦った」と改めて主張。多くの犠牲を伴ったものの「血と炎の中で築かれた友情は世代を超えて受け継がれていく」と訴えたという。ここまでいうと、歴史の歪曲と言われても仕方がないだろう。中華人民共和国はその時点でまだ存在していなかったからだ。

習近平主席ら共産党指導者にとって、「歴史」が意味を帯びるのは共産主義の世界観に一致した時だけで、そうではない時は無視するか、歪曲するのが常套手段だ。ただし、トランプ大統領が「米中は同盟国」発言をし、習近平主席のプロパガンダを誘い出す契機となったことは残念だ。トランプ氏にとって「歴史」は相手を喜ばすためのディ―ルの手段に過ぎないのかもしれない。

参考までに、中国共産党政権が「歴史」をどのように悪用しているかの事例を紹介する。
朴槿恵元大統領は2013年6月に訪中した際、習近平主席に安重根記念碑の設置を提案した。2014年1月20日、中国黒竜江省のハルビン駅で一般公開されたのは「記念碑」ではなく、「安重根義士記念館」だったのだ。安重根は1909年10月26日、ハルビン駅で伊藤博文初代韓国総監を射殺し、その場で逮捕され、10年3月26日に処刑された人物だ。テロリストは出身国では英雄扱いされることはあるが、中国側の協力を得て開設された同記念館が韓国側が考えていたより大きく、豪華だったので、韓国側が恐縮したといわれた。

中国共産党政権は当時、反日を煽る絶好の手段として日韓の歴史を利用したわけだ。中国共産党政権は昔も今も歴史を自身のプロパガンダのために悪用する国家だ。それも中途半端ではなく、徹底している。

ところで、習近平主席が23日、ワシントン州のアンドリュース空軍基地に到着し、トランプ米大統領が直接彼を迎えた時だ。米国歌の演奏に合わせて B-1戦略爆撃機2機が轟音を響かせながら低空を歓迎飛行した。そして24日もホワイトハウスのサウスローン(南庭)で行われた公式歓迎式典でB-2ステルス戦略爆撃機1機 と F-22ラプター戦闘機4機 が上空を飛行した。

米国では国賓などの外国首脳を迎える際、軍用機が歓迎飛行(フライオーバー)を行うこと自体は珍しくないが、西側の軍事専門家は「戦略爆撃機を飛行させるケースは極めて異例だ」という。習近平主席は自分の頭上を飛ぶ米軍爆撃機の飛行を見てどのように感じただろうか。

米中間で台湾問題や貿易摩擦などの緊張が続く中、トランプ氏には、米国が誇る最強クラスの最先端戦闘機を見せ、米国の軍事力と抑止力を直接誇示する狙いがあったのではないか。派手好みのトランプ氏らしい演出だ。

なお、トランプ大統領は2025年8月にアラスカでロシアのプーチン大統領と会談した際にも、B-2爆撃機とF-35戦闘機が歓迎飛行を行っている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント