ベルリンで「左翼党」主導の政権が誕生か

ドイツの首都ベルリンで8日、「左翼党」、緑の党、「社会民主党」(SPD)の3党は連立政権樹立に向けて最初のハードルを越えた。独メディアによると、「左翼党」、緑の党、SPDの「赤・緑・赤」の3党は計3回の会合を経て予備協議を終え、本格的な連立協議の前段階となる探索的協議に入った。この協議で合意に至れば、実際の連立交渉が始まる予定だ。

ベルリンにある左翼党本部、ウィキぺディアから

9月20日に実施されたベルリン市(特別州)の議会選では、「左翼党(Die Linke)」は議席47人を獲得して第1党に躍進した。議員の大半は今回が初の議会入り。緑の党は26議席、SPDは22議席で「赤・緑・赤」の3党で95議席となり、過半数をクリアして連立政権樹立の可能性が出てきた。

ただし、「左翼党」のベルリン市議会選筆頭候補者のトルコ系ドイツ人のエリフ・エラルプ氏(45)率いる議員団には懸念材料がある。具体的には、「左翼党」内の反ユダヤ主義、過激派テログループとの関係といった不都合な難題があるのだ。

予備協議の過程で、3党は反ユダヤ主義との闘いについて、8つの項目で合意した。こうした合意が必要となった背景には、9月下旬の選挙の前後を通じて、「左翼党」に対し反ユダヤ主義に関する深刻な疑惑が提起されるという事情があったからだ。

ベルリンの「左翼党(Die Linke)」のリーダーであるケルスティン・ヴォルター氏は3党の共同合意文書を評価し、「誰もが安全に暮らし、自身の信仰やアイデンティティを公に表現できる都市を目指す」と語った。同合意には制裁が明記され、約束を反故すれば議員の党籍除外などの制裁が課せられることになっている。

ところで、全3ページに渡る合意文書には、「左翼党」の一般党員の一部にとって受け入れがたい内容が含まれている。例えば、文書には「我々は、ベルリンにおけるユダヤ人の生活を保護するという任務を遂行するにあたり、警察および憲法擁護庁(国内治安機関)の権限を強化する」と明記されている。左翼党は選挙公約において、「警察の軍事化が際限なく進み、多額の費用を要している」、「警察官を増員することが治安の向上にはつながらない」と主張してきたからだ。

「左翼党」は、選挙戦の最中にも反ユダヤ主義的な出来事で物議を醸した。ノイケルン地区(ベルリン南東部にある、国際色豊かで活気にあふれる行政区で、中東やトルコからの移民が多数住む)で行われた同党の開票イベントに、テロ組織「パレスチナ解放人民戦線(PFLP)」の支持者が現れ、「左翼党」の連邦議会議員のフェラト・コチャク氏と共に写真に収まるというシーンがあった。

また、ノイケルン地区支部の関係者の一部は、「パレスチナ民族統一委員会」とつながりを有している。同委員会は、ベルリン州憲法擁護庁によって過激派組織と見なされているほか、ハマスとの密接な関係から欧州連合(EU)によりテロ組織に指定されている「パレスチナ解放人民戦線(PFLP)」の傘下組織と受け取られている。

ノイケルン区選出の「左翼党」代表者ヴァネッサ・エムデ氏は青年組織「リンクスユーゲント・ゾリド(Linksjugend Solid)」内部で「左派の中の左派(Left within the Left)」を自称するグループにも所属している。彼らは反資本主義的な「階級闘争」を掲げている、エムデ氏は「ベルリナー・モルゲンポスト」紙に対し、「間違った形で政権に加わるより、正当な野党である方がましだ」と語っているほどだ。

ちなみに、「左翼党」は党大会において、激しい議論を経つつも、イスラエルの生存権を認める立場をとってきている。しかし、党の方針を良しとしない党員がいることも事実だ。「左翼党」のベルリン州党首ヴォルター氏は、「ベルリンに反ユダヤ主義の居場所はない」と明言し、「イスラエルの生存権は交渉の余地のないものだ」と付け加えた。反ユダヤ主義政党というイメージからの脱皮に腐心している。

選挙後の9月21日に連邦記者会見に出席したエラルプ氏は、同党に対する懸念を払拭するため、「他のあらゆる人々の命を守るのと同様に、ユダヤ人の命を守る立場にある」と明言した。そして、「ユダヤの人々が――イスラム教徒やクィアの人々、そしてこの街のすべての人々と同様に――安全を感じ、ここで充実した生活を送れるよう、全力を尽くす」と宣言している。

なお、ベルリン市議会選で「左翼党」が第1党となり、ベルリン市が赤の砦となる可能性が出てきたことを受け、同市に住むユダヤ人(約35,000人)の間に懸念する声が高まっている。

イネス・シュベルトナー左翼党共党首インスタグラムより


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年10月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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