トランプ政権、ロシアから軽油を輸入してウクライナを見放す?

トランプ米大統領が、ロシア産軽油の供給拡大でプーチン大統領と合意した。侵略国の資金源を制裁で締め上げるはずが、燃料価格を下げるために取引を再開する。ウクライナ支援と米国内の物価対策のどちらを優先するのか。トランプ政権の選択が波紋を広げている。

CNN

中間選挙を前に対ロ制裁を緩和

トランプ氏は10月9日、米国と世界市場にロシア産軽油30万トン超を直ちに供給し、11月に50万トン、その後100万トンを追加する合意を発表した。米財務省もロシア産燃料に対する制裁を一時的に緩和した。背景には、11月3日の中間選挙を前に、農業や物流を直撃する軽油高騰への不満を抑える狙いがある。

燃料の供給を増やして物価を抑えること自体には合理性がある。しかし、供給元はウクライナへの侵略を続けるロシアだ。制裁によって減らそうとしてきたエネルギー収入を、米国自身が回復させるという矛盾を抱える。

侵略国と取引し、被侵略国に自制を要求

ゼレンスキー大統領は、ロシアの石油製品販売を認めれば戦争を続ける資金になると反発した。ウクライナはロシアの戦争遂行能力を弱めるため、製油所などへの攻撃を続けている。ロシアは国内の燃料不足を受け、7月から軽油輸出を禁止していた。

ところがトランプ氏は10日、ゼレンスキー氏について、和平の取引をまとめられる新しい指導者を選ぶべきだと述べた。米政府当局者によれば、政権はウクライナに製油所攻撃の停止を再三要求していたという。

侵略国には制裁緩和を与え、被侵略国には攻撃停止を迫る。これではウクライナが、自国の安全より米国の給油所の価格が優先されていると受け止めても不思議ではない。

軽油価格は本当に下がるのか

しかも、取引の経済効果は確実ではない。AP通信によると、専門家からは、ロシア産軽油の輸入で米国や世界の価格が大きく下がるとは期待しにくいとの指摘が出ている。既存の供給先が変わるだけなら、世界全体の供給不足は解消しない。

ロシアの製油所自体が攻撃で損傷しており、約束した数量を供給できるかにも疑問が残る。価格引き下げは不確かでも、制裁を緩めてもらったという外交上の成果は、プーチン氏の手元に残る。

今回の合意だけで、米国がウクライナ支援を全面的に打ち切ったと断定することはできない。しかし、侵略を抑えるための制裁が、選挙前の物価対策で後退したことは重い。

和平のために制裁を緩めるなら、ロシア側から停戦などの具体的な譲歩を引き出す必要がある。軽油の供給だけで譲歩するなら、それは和平交渉というより燃料の買い付けだ。「米国第一」の代金をウクライナに払わせる政策で、持続的な和平が実現するのだろうか。

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