日本で不動産不況は起こりうるだろうか?:増加する「住宅購入可能性ゼロ層」

私の住むBC州で解散総選挙が10月24日に行われます。現与党のNDP(中道左派)がBC保守党とつばぜり合いの戦いとなっており、その行方が注目されます。その与党から出てきている公約に賛否両論の激論が起きています。

それは不動産開発業者が現在、完成在庫として抱える約4000戸の住宅について未販売の在庫に初年度は価格の2%、以降1年ごとに1%ずつ引き上げていくという「在庫マンション税(Unsold Condominium Tax)」をかける公約です。

カナダ、アメリカで住宅不況が起きているのはこの2-3年ぐらいの金利上昇、及びカナダに於いては特に24年末からの移民や外国人労働者抑制政策で潜在的住宅需要が激減したことが原因です。つまり不動産開発業者からすれば「寝耳に水」のような政策変更の話です。カナダでは不動産開発は一度スタートしたらなかなか止められないもので完成するまでに設計、許認可で数年、工事に数年と小ぶりの物件でも5年、大型なら10年単位の事業です。政府の政策変更による影響は事業のリスクファクターであるとともに優良住宅の安定供給という点からは非常に難しいかじ取りが求められる業種です。

当然、この公約には不動産業界から猛反発の声が上がっています。与党は「不動産開発業者は値崩れを防ぐために安売りをせず、完成在庫として抱えている」と糾弾、業界からは好きで完成在庫を抱えているのではないと激しい論争になっています。私個人としては与党の政策には全く賛同できません。仮にそのような税による圧迫をするのであれば将来、不動産開発事業者が健全な事業を展開できず、金融機関も融資ができず、建設業が主力のBC州経済がガタガタになるとみています。

日本ではもちろんこのような奇怪な公約はあり得ないのですが、不動産の売れ行きが落ちてきていることも事実であります。

一時期億ションとかダブル億ションが騒がれた東京も実はそれら希少価値マンションの供給は極めて限られており、いくら値上がりしようが統計的には少し加味する必要がある程度です。今年の東京の新規供給数は8000戸程度。うち、億ションは約5000戸。この初期成約率が5割程度にまで下がっています。不動産デベロッパーの収益構造は完成して客に引き渡してなんぼの世界です。例えば100戸あるマンションを作ったとしましょう。引き渡しを80戸以上すると概ね土地代と建築費がカバーされ、そこから先の引き渡し20戸で利益が出る、こんな仕組みです。すなわちキャッシュフロー的には1億円の物件を売ったら2千万円儲かるという話ではなく、とにかく全部売らないことには話にならない、これが実情であります。

maruco/iStock

私の東京の家近くでも億ションが完成間際なのですが、どうも完売していない様子で物件そばで若手社員がビラ配りして一生懸命売っている感じがします。以前なら戦略的に完成後も在庫を多少持ち、価格を釣り上げたりもしたのですが、金利が上昇し、価格自体も高くなったため、デベロッパーが強気のつもりが実は泥沼にはまっていたということが起こり得るのです。

日経には「九州の新築マンション販売戸数、過去10年で最低水準 急激な高騰響く」という記事もあり、たぶん不動産不況がひたひたとやってきているように見えます。

私の友人が池袋の近くの戸建て住宅物件を売りに出しているのですが、全く売れないと嘆いています。価格は不動産屋が提示したもので強気でも弱気でもない中立的金額。引き合いがほとんどない状態で本人も「こんなはずじゃなかった」と。

日本は今後も相続に伴う売り物件が増えてくる一方、少子化で購入対象者数の減少と不動産価格高騰による「住宅購入可能性ゼロ層」が相当増えてきています。その比率約40%とされます。これはあくまでも収入から見た金銭的可能性。一部の人は実家を譲り受ける人もいるでしょうし、住宅を購入選択をしない人や転勤族、更には結婚しない人たちが自由な暮らしをするケースもあります。とすると金利が高止まりするのならば不動産は厳しい状況になると言わざるを得ないのです。

カナダやアメリカで住宅不況が起きていますが、日本だけ好調を維持したのは日本の市場に遅効性があったからで安値で放置されていたところに一部の富裕者層や外国人が目をつけたのと高齢者が戸建てからマンションに引っ越すケースがあったこと、相続税対策というのもありました。これらはほぼ全て終わったブームで日本も早かれ遅かれ不動産不況の風が吹くはずです。日本だけは違う、ということはありません。ここは要注意ではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年10月16日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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