「なんでも続かない子」は、本当にダメな子だったのか

あなたは、何か1つのことを10年続けたことがあるだろうか。私はない。たぶん、これからもない。

4歳でピアノと水泳を始めた。始めた、というより始めさせられたのかもしれない(そこは覚えていない。4歳だし)。覚えているのは、行きたくない日がやたら多かったことだけだ。

『フランス人の気楽な働き方、全力の休み方』(トレオレル 美智子 著)フォレスト出版

「行きたくない」と言えば、母は決まって「始めたのだから、続けなければダメ」と言い、そのあとに「本当にあなたは根気がない子ね」と付け足した。この付け足しのほうが、ずっと効いた。中学生になっても「あなたは、なんでも続かない」。母は必死だった。私もそれなりに必死に、負い目を育てた。

日本はそういう国である。夏休みの宿題に「何か1つのことを続ける」という課題が出る国。続けた人をテレビが褒める国。続けられない子どもは、こうして自分を少しずつ嫌いになっていく。

話は飛ぶが、私はいまフランスのポワトゥー=シャラント地方に住んでいる。港町ラ・ロシェルには、寝室もキッチンもデッキもあるリゾート船がずらりと並ぶ駐船場があって(これがまた圧巻なのだ)、この地方にはその船をつくる工場がいくつもある。

そのうちの1つに30年以上勤めている男性がいるという話が、井戸端会議で出た。フランスで30年。珍しい。私は日本人の感覚のまま、迷わず言った。「1つのことを長年続けられるなんて、すばらしいわ!」

みんな、変な顔をした。

「よっぽど性に合っているのね」「シンプルを好むタイプなんだろうね」。褒めていない。どう聞いても褒めていない。極めつきは「僕はごめんだね。なんでも変わってくるものだよ。そうしたら、僕も変わらなくっちゃ」。

あのとき、母の声が頭の中で鳴った。根気がない子ね。いや、待ってほしい。この人たちは全員、根気がないのか。

冒頭の質問に戻る。10年続けたことがあるか。私の答えはやはり「ない」だ。ただそれを恥じるべきかどうかは、正直いまはよくわからない。少なくともあの港町の井戸端会議では、続けないことを責める人は1人もいなかった。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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