フランス各地では17日、物価高対策や教育環境の改善を求める、最近では最大規模のデモがあり、ヌニェス内相によると55万人が参加した。各地で商店や公共施設が襲撃され、中部のリモージュ市では暴徒が市庁舎に放火して全焼した。
Le beffroi de la mairie de Limoges, en flammes, s'est effondré pic.twitter.com/tu9UBPS7iI
— BFM (@BFMTV) October 17, 2026
発端は教員ポストの空席
デモは9月、パリ郊外の高校で複数の教員ポストが空席だったことから、生徒たちが教員の増員を求めて始まった。運動は貧困率の高い郊外から、パリ市内、マルセイユ、ストラスブールなどへ広がった。
要求は大きく4つに整理できる。
- 欠勤教員の代替確保と教員の増員
- 老朽化した校舎・設備の改修
- 過密授業の解消
- 警察による強硬な排除の停止
高校生の全国組合は、校舎改修のために100億ユーロの緊急計画を政府に求めている。理念を掲げた政治闘争というより、学校生活の具体的な不備を直せという生活者の要求に近い。
「暴徒化」の実態
ただ、現場では衝突が繰り返されている。内相によれば、9月28日以降の逮捕者は10月2日時点で約5000人に達し、大半が10代だった。6日だけで全土で488人が拘束された。13日のデモは約16万人規模で、パリでは一部が商店を襲撃して略奪し、車両に放火した。
暴力を振るうのは一部だという見方が政府側にもある。法相は、少数の者が積極的に暴力を振るっていると述べ、バスの襲撃や学校への放火は単なる抗議ではないと批判した。
一方で、若者側の被害も深刻だ。これまでに生徒200人以上が負傷し、片手を失う重傷を負った生徒もいる。それでも内相は、警察の対応はおおむね過剰ではないと強調した。保護者や人権団体は、未成年への過剰な武力行使をやめるよう訴えている。
背景にあるのは「お金がない国」の教育
教員不足と老朽校舎の根には、財政の制約がある。報道によれば、2027年予算案の教育予算は教員年金を除いて655億3000万ユーロで、増加率は1.7%と物価上昇率を下回る。一方、国債の利払いなどの債務返済費は745億ユーロに達する見通しだ。
教育省の統計では、中等教育の生徒1人当たりの支出は2010年の1万1910ユーロに対し、2024年は1万1660ユーロとほぼ横ばいだ。教育相は、予算の伸びが低いのは少子化で生徒数が減っているためだと説明している。
市場も敏感になっている。10年債利回りは先週、24年ぶりの高水準となる5%超まで上昇した。しかも政権は、マクロン氏の与党勢力が2024年の総選挙で過半数を失って以来、予算の成立さえ難航している。教育に回せる余力は乏しい。
政治化する抗議
来春には大統領選が控えている。フランスでは極右・極左の双方でポピュリスト政党への支持が高まっている。運動の性格も変わりつつある。最近はマクロン大統領の辞任を求める声など、政権批判が目立つようになった。
政府と国民連合は、左派「不服従のフランス」の議員が不満を煽っていると非難している。同党は運動を組織したとの指摘を否定している。
政府の対応と見通し
政府は譲歩に動いている。ルコルニュ首相は10月7日のテレビ演説で、欠勤教員の代替確保、校舎や設備の改善、過密授業の解消などを含む5項目の検討に着手したと表明し、今月末に具体策を示すとした。教育相は教員不足が深刻な高校に3千人を配置すると発表し、13日には配置が始まったと明らかにした。
しかし、デモを主導する高校生団体は対応が不十分だとして、抗議の継続を呼びかけている。月末に示される具体策が、事態の分かれ目になりそうだ。
「暴徒」か「若者の怒り」か
放火や略奪は正当化できない。ただ、映像の派手さだけで「暴徒」と括れば、要求の中身が見えなくなる。逆に「若者の怒り」だけで語れば、破壊の実害を見落とす。
本質は、財政が逼迫するなかで限られた予算をどこに配分し、教員の採用と配置をどう実行するかという、極めて実務的な問いである。金利が上がる局面では、教育支出を積み増すハードルは一段と高い。少子化のもとで教育予算の増額が正当化しにくいという構図は、日本にとっても他人事ではない。







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