恋人探しはまるで終業後の営業活動?出会いのアプリがあるのに「出会えない」日本人

スマホを開けば、恋人候補が次々と表示される。年齢も趣味も、ときには年収まで確認できる。相手を探す手段は便利になったのに、なぜ「出会いがない」というため息はなくならないのでしょうか。

もしかすると、足りないのは候補者の数ではなく、知らない誰かと関係を始める気力なのかもしれません。

PairsやTinderを傘下に持つMatch Groupが10月20日に公表した「アジアにおける人々のつながりに関する調査」によると、日本の独身回答者の44%が新しいつながりを求めておらず、52%が人付き合いへの不安を、他者とつながる障壁として挙げています。

調査対象は日本、韓国、インド、タイの18〜45歳の独身者各1,000人。アプリ事業者が公表したインターネット調査であり、日本人全体やアプリ利用者だけの実態を示すものではありません。それでも、恋愛を「出会いの数」だけで考えることの限界を感じさせます。

恋人は欲しい。でも、そこまでが面倒くさい

「恋人が欲しい」と「新しい人に会いたい」は、似ているようで違います。

休日に一緒にご飯を食べる相手は欲しい。落ち込んだ日に話を聞いてほしい。でも、その関係にたどり着くには、自己紹介から始めなくてはいけません。

例えば、仕事を終えて帰宅し、アプリを開く場面を想像してみてください。プロフィールを整え、メッセージを考え、失礼にならないタイミングで返信する。会うとなれば、服を選び、店を探し、会話にも気を配る。ようやく「今日はありがとうございました」と送っても、次につながるとは限りません。

欲しかったのは安らぎなのに、そこへ至る過程は、まるで終業後の営業活動です。自己紹介という商品説明をして、相手の反応をうかがい、次回のアポイントを取り付ける。会社では勤務時間が終わっても、恋人探しには退勤ボタンがありません。

もちろん、この過程も楽しいという人はいるでしょう。ただ、恋愛をしていない人を「消極的」「努力不足」と評する前に、関係を一から築く負担にも目を向けたいところです。

恋愛まで「失敗できない選択」になった

同調査では、日本のZ世代に当たる18〜29歳の回答者の47%が、将来を思い描ける相手としか交際しないと答えています。

誠実で堅実な姿勢です。ただ、交際前から将来像の一致を求めることが、恋愛の入り口を狭める場合もあるのではないでしょうか。

「ちょっと気になるから会ってみる」より先に、「この人と付き合う意味はあるか」と考える。傷つきたくないと思えば、確かな見通しが欲しくなるのも分かります。

でも、相手を知るために付き合うはずが、十分に知らないと付き合えない。それでは、いつまでたっても審査が終わりません。

仕事ではキャリアの失敗を避け、買い物では口コミを調べ、恋愛でも外れを引かないようにする。慎重さは生活を守ってくれますが、人間関係には、会ってみないと分からない部分が残ります。

恋愛にも星の数とレビューがあれば便利でしょう。けれど、自分にも誰かが採点していると思った途端、気軽さは吹き飛んでしまいそうです。

「出会いを増やす」だけでは届かない

少し皮肉なのは、出会いを提供する企業の調査から、人とつながること自体へのためらいが見えてくる点です。

候補者を増やす機能は便利です。しかし、選べる人数が増えても、断られる不安や、自分をよく見せ続ける疲れまで消えるわけではありません。出会う手段の便利さと、親密になることの難しさは、別の問題なのでしょう。

もっとも、この調査から「アプリが人を疲れさせている」とまでは言えません。恋愛への負担感があるとしても、その原因を一つのサービスに押し付けるのは乱暴です。

また、新しいつながりを求めない人を、全員「本当は寂しいのに動けない人」と扱うのも違います。今の友人関係や一人の生活に満足しているなら、それも立派な選択です。「恋愛しない自由」まで、婚活市場の課題にされてはたまりません。

恋愛したい人に必要なのは、最初から合否を判定される気分にならずに、誰かと会える余地なのだと思います。趣味の話をする、何人かで食事をする。恋人になるかどうかは、その後に考えてもいいはずです。

「出会いがない」と聞くと、つい「アプリを入れれば?」と答えたくなります。でも、その人が欲しいのは、大量のプロフィールではなく、気を張らずに話せる誰かなのかもしれません。

恋人候補を探すことは簡単になった。けれど、素の自分で会いたいと思える相手は、検索条件だけでは見つからない。便利になった恋愛の、いちばん不便なところです。

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