スーパーマーケットが儲からないワケ:株価下落が止まらないイオン

私が日本に行った時の楽しみの一つはスーパーマーケットでゆっくり商品を見て歩くことです。どんなものがいくらで売っているのか、どんな新製品が置かれているのか、いくつかの同じスーパーで同じチェックをしているので定点観測のようなものであります。コンビニに行かないのは商品の入れ替えが激しく、いわゆる売れ筋のコア商品だけを見ているので数か月に一度見たぐらいではトレンドがつかみにくいことはあるでしょう。

さて、そのスーパーマーケット、事業者としては実に苦戦を強いられています。例えばGMSの大御所、イオンは株価下落が止まりません。1年前の今頃は2800円ぐらいつけていた株価は現在1100円程度。これではイオンそのものが安売りになってしまいます。なぜこれほど同社の株が下落したかと言えば本業の不振であります。同社の全体を見れば増収で利益もそこそこ出ているのですが、それはイオンモールというデベロッパー部門などが絶好調なのであって、英語でいうオーガニック(本業)のGMS(総合スーパーマーケット事業)は126億円の赤字、SM事業(スーパーマーケット事業)も1億円の赤字であります。フジテレビや朝日新聞は不動産で持っているような会社という話がありましたが、イオンはデベロッパー事業で持っているとしても過言ではないのです。

イオン Wikipediaより

国内外食で泣く子も黙るNO1といえばゼンショー。とにかく破竹の勢いが止まりません。小川賢太郎氏の後を継いだ小川家の次男、洋平氏は東大教養学部から財務省で約8年。親父に呼ばれてゼンショー入り。ここで24時間営業の夜の1人勤務問題やネズミ問題にぶち当たりながらも試練を乗り越え、小川賢太郎氏亡きゼンショーの機関車役であります。正直、今や牛丼ではなく、はま寿司で稼ぎまくっているのが実態ですが、実はこの会社にもスーパーマーケット部門があるのです。しかし、そのセグメント業績、26年3月期で売上約770億円に対して10億円超の赤字。その前年は18億円の赤字です。つまり泣く子も黙るゼンショーですらスーパーには泣かされるというわけです。

では最近話題のトライアルはどうか。ここは確かに破竹の勢いで26年6月決算で売上1兆3471億円と前年比67%増の大躍進です。営業利益は303億円前年比44%増でした。ですが、この営業利益率、わずか2.2%なのです。最終利益は35億円です。ではなぜトライアルが赤字を出さずに済んでいるかと言えばスマートショッピングカートのような徹底したAI化、IT化を進めているからでしょう。しかし、私はそんなに余裕はないとみています。同社は徹底した安値を売りにしており、弁当が300円台で売られるなどが売りの一つでした。ですが、今、イオン系のまいばすけっとでもスーパーのOKでもそれぐらいの金額で弁当は買えるのです。つまりトライアルが格安弁当を引き下げて九州から首都圏に乗り出した途端、他のスーパーも完全対決姿勢を見せているのです。

ではもう少し掘り下げてみましょう。何故スーパーが儲からないのか。私の行きついた答えは店舗数です。今、日本に食品スーパーは21700軒、イオンのようなGMSが1800軒あります。合計して23500軒。外国人を含む人口が1億2200万人だからマーケット一店舗当たり約5200人の顧客になります。1995年頃に遡るとスーパーの数は全国で14000軒程度、人口は1億2500万人だからマーケット一店舗当たり顧客は9000人近くいたのです。つまりこの30年でスーパー一店舗当たりの客は40%減っているのです。

更にここにきて人件費や店舗の賃料の高騰、仕入れ商品の価格高騰で利益の圧迫となり、薄利多売に陥っているわけです。

人口減はともかく、店の数が多すぎる上に店の固定費が足を引っ張っています。つまりどろどろのレッドオーシャンの中、顧客はより価格センシティブになります。他店が弁当を350円で出せば、うちもその値段にしないと客寄せパンダになりません。スーパーですから目玉商品も重要です。例えば主婦の目線、いや、ひろの目線でいうと野菜売り場のもやしが29円か31円かで印象は全く違います。この2円差、それも30円程度の話なのですが、客は知っているのです。もやし価格は不動の物価バロメーターであり、店の実力であると。

大型店舗が流行った時代、マイカーに乗り、巨大な郊外店に行き、週に一度、まとめて購入、ついでに様々なショップを覗き、外食をするいうのは一つのライフスタイルだったと思います。今、それが崩れてきて、歩いていける店がキーワードのような気がします。コンビニとドラッグストア、ミニスーパーが乱立し、欲しいものは何時でもすぐに手に入るのです。(地方はそこまでではないのは承知しています。)

しかも日本人は欧米人のように買いだめして巨大な冷凍庫で保存するという仕組みは本能的にも物理的にも難しいのです。毎日とか2日に一度は新鮮なものをゲットしたい欲望があります。だけどタイパの時代にそんな暇はない、という要望に応えたのが今のようなスーパーマーケットの乱立、乱戦業態ではないかと思います。

このトレンドがまだ続くならスーパーマーケットは日本人の胃袋を守る慈善事業ないし、無数にある食品メーカーと消費者をつなぐ接点役でしかなくなります。スーパーの色をどう出すのかが今後、ポイントになると思います。PBもありますが、それもインパクトが薄くなり、時代の流れではないし、ポイ活もこれだけ個人情報が駄々洩れになるなら顧客情報なんて本当に収集する必要があるのかな、と思ったりします。OKストアは会員になるのに個人情報は一切必要ではありません。私はそれで十分だと思っています。

顧客のつなぎ止め方も抜本的に考え直す時期にあるのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年10月22日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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