千代田区がデベロッパーにマンション転売禁止を要請:役所の思いつきで住宅価格は安くなるのか?

東京都千代田区が、三菱地所レジデンスなどに対し、区内で計画する分譲マンションについて、引き渡し後5年間の転売を禁止するよう要請する。対象は東京都の制度で容積率の緩和を受ける物件だ。2025年には不動産業界団体にも同様の要請を行ったが、個別物件への働きかけは初めてとなる。

【参照リンク】東京都千代田区、三菱地所系マンションに5年転売禁止要請 個別物件で初 日経新聞

投機目的の短期転売を防ぎ、マンション価格の高騰を抑えることが狙いだ。しかし、転売を禁止すれば住宅が安くなるという発想は、あまりに単純ではないかという指摘が増えている。

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投機家より実需層が困る?

まず困るのは、実際に住むためにマンションを購入する人たちだ。

5年の間には転勤、失業、離婚、親の介護、子どもの進学など、何が起きるか分からない。住宅ローンの返済が難しくなっても売却できないとすれば、購入すること自体が大きなリスクになる。

それなら最初から千代田区以外で買おう、という人も出てくるだろう。

一方、資金に余裕のある投資家は「では5年間持ち続けよう」と考えるだけかもしれない。規制対象外の他区に投資資金が流れる可能性もある。

マンションは5年間保有できても、人生は5年間固定できないのだ。

※中央区豊海町の53階建て2棟、2000戸超の「ザ 豊海タワー マリン&スカイ」は一部住戸の価格が下落し、手数料込みで含み損が出るケースが出てきているという。

転売禁止で価格が下がるという幻想

マンション価格が高騰している原因は、土地代、建築費、人件費の上昇や都心への需要集中などだ。

転売を禁止したところで、これらのコストが下がるわけではない。売却制限によって購入希望者が減っても、価格が大幅に下がる保証はない。

既存のマンション所有者にも、将来的な規制拡大を警戒して売却を急ぐ動きが出るかもしれない。

短期転売を減らすことと、住宅を購入しやすくすることは、まったく別の問題なのである。

財産権への介入はどこまで許されるのか

容積率の緩和という恩恵を受ける以上、事業者に一定の条件を求める理屈は理解できる。しかし、行政が私人の財産処分にどこまで介入できるのかは慎重に考える必要がある。

今回の措置は法律による禁止ではなく、事業者への要請だ。それでも転勤や失業などの例外がなければ、実際に住む人ほど不利益を受ける。

自民党内では、短期売買による譲渡益への課税強化も議論されている。投機抑制には税制という選択肢もあるが、住宅の流動性を損なわない制度設計が不可欠だ。

そもそも必要なのは、需要に見合った住宅供給を増やすことである。

千代田区が減らしたいのは「転売件数」なのか、それとも「住宅を買えない人」なのか。

住民を守るはずの政策が、住民の身動きを取れなくしては本末転倒だ。

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