
- 外国人の起訴率は日本人より高い。2024年の一般刑法犯で、外国人被疑事件の起訴率は約39.3%、全体は約37.7%(法務省の国会答弁)。全体には外国人も含まれるので、日本人だけなら37.7%よりさらに低くなる。犯罪白書でも、来日外国人の刑法犯の起訴率は全体より2.8ポイント高い。
- そもそも逮捕=起訴ではない。日本人を含めた全体の起訴率は32.6%で、不起訴になった人の約7割は「起訴猶予」。被疑者のうち逮捕される(身柄を取られる)のも約3人に1人(34.6%)しかいない。
- なのに高市さんは2025年9月の総裁選で「通訳の手配が間に合わず、外国人は不起訴にせざるを得ないとよく聞く」と演説した。政府は国会で事例を把握していないと答弁。現場の警察・検察幹部は「聞いたことがない」と報道機関に答え、高市さんの事務所も「頻発していると言いたかったのではない」と回答している。根拠のない話を、総裁候補が事実のように撒いたわけです。
- 但し書き。日本人だけの起訴率は公表されておらず、上の「日本人はさらに低い」は筆者の計算上の推論。また起訴率の比較は罪名の内訳の違いを調整していない。白書の国籍別の数字も、在留者数の違いは考慮されていない。
こんにちは。永江です。
「外国人は捕まっても不起訴になる。日本人ばかり損をしている」。SNSで定期的にバズる話。法務省の犯罪白書と国会の議事録を当たってみました。結論、真逆です。起訴されやすいのは外国人のほう。
で、この「外国人は不起訴」話にガソリンを注いだのが、総理になる前の高市さんなんですよね。髙市さんも言っていたとネトウヨは言うが、いまだにご本人は訂正もしていない。順番に見ていきます。
まず一番わかりやすい数字から。2025年11月26日の衆議院法務委員会で、法務省の刑事局長がこう答弁しています。
| 2024年の一般刑法犯 | 起訴率 |
|---|---|
| 全体(日本人+外国人) | 約37.7% |
| 外国人被疑事件 | 約39.3% |
ここで大事なのは、37.7%の「全体」には外国人も入っていること。全体は日本人と外国人の平均です。外国人が全体より高いなら、残りの日本人は必ず全体より低くなる。つまり外国人>全体(37.7%)>日本人。日本人だけの起訴率は公表されていないけど、この大小関係は算数で確定します。
犯罪白書でも同じ結果です。白書は「来日外国人」の起訴率を、日本人を含めた全体と比べて載せています。
| 来日外国人の起訴率(全体との差) | 令和6年版(2023年) | 令和7年版(2024年) |
|---|---|---|
| 刑法犯 | 4.2pt高い | 2.8pt高い |
| 特別法犯 | 3.5pt低い | 1.0pt高い |
| 入管法違反を除く特別法犯 | 0.1pt低い | 0.6pt高い |
| (参考)来日外国人の終局処理人員 | 17,512人(全体の6.1%) | 18,696人(全体の6.4%) |
刑法犯は2年連続で外国人のほうが高い。外国人だから見逃されているどころか、むしろ起訴されやすい側にいるんです。日本人なら使えるコネ(政治家とか署長とか・・・w)とか言い訳が彼らはできない。一番不起訴になるのは地位協定に守られた在日米軍。次が日本人です。外国人は一番起訴されます。

- 白書の「来日外国人」には、永住者・特別永住者などが入っていない。また過失運転致死傷等と道交違反を除いた数字。国会答弁の「外国人被疑事件」は外国人全体なので、母集団が違う。それでも、どちらも外国人のほうが高いという向きは同じ。
- 起訴率は罪名によって大きく違う。外国人と日本人では罪名の内訳が違うので、厳密に「同じ罪なら外国人のほうが起訴されやすい」とまでは言えない。言えるのは「外国人が不起訴で得をしている、という事実はない」ということ。
「外国人が不起訴になった!」というニュースに怒る人が多いんだけど、日本人もふつうに不起訴になってます。それも大半が。ここ、意外と知られてないので詳しく書きます。
ちなみに髙市さんのブレーンも高級時計結んで逮捕されましたが起訴されていません。

参政党のブレーン?のこの人も未成年の奥さんをボコボコにして逮捕されましたが起訴されていません。

まず、事件を起こした疑いがある人(被疑者)の多くは、逮捕すらされません。犯罪白書で、逮捕されて身柄を取られた被疑者の割合(身柄率)は34.6%(2024年、過失運転致死傷等と道交違反を除く)。残りの約3人に2人は、家にいながら呼び出されて捜査を受ける「在宅事件」です。
逮捕された人のうち、検察が裁判所に勾留を請求したのは94.8%。勾留請求が却下されたのは4.3%。逮捕から起訴するかどうかの判断までは、勾留期間を含めて最長23日間です。
次に、検察が処理した事件の行き先。2024年の全体(日本人+外国人)はこうです。
| 処理区分(2024年) | 人数 | 中身 |
|---|---|---|
| 公判請求 | 80,287人 | 法廷で裁判になる |
| 略式命令請求 | 158,783人 | 書面だけで罰金などが決まる |
| 起訴猶予 | 429,432人 | 罪は認められるが、起訴しない |
| その他の不起訴 | 64,586人 | 嫌疑不十分など |
| 家庭裁判所送致 | 49,647人 | 少年事件 |
| 合計 | 782,735人 | 起訴率32.6%、公判請求率11.0% |
一番多いのは「起訴猶予」。42万9,432人で、起訴された人(公判請求+略式=23万9,070人)の1.8倍もいます。起訴率は全体で32.6%。法廷で裁判になるのは11.0%だけ。この合計には交通事故なども含まれるので、窃盗や傷害などの一般刑法犯に絞ると起訴率は①の約37.7%です。それでも4割に届かない。
| 不起訴の理由(2024年) | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 起訴猶予 | 106,499人 | 68.2% |
| 嫌疑不十分(嫌疑なしを含む) | 38,072人 | 24.4% |
| 告訴の取消し等 | 5,896人 | 3.8% |
| 心神喪失 | 296人 | 0.2% |
| その他(時効完成、被疑者死亡等) | 5,501人 | 3.5% |
| 合計 | 156,264人 | 100% |
起訴猶予は、刑事訴訟法248条に基づく仕組み。犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の情況を見て、検察官が「起訴する必要はない」と判断すれば起訴しなくていい。初犯で被害が小さく、弁償も済んで反省している。こういうケースは日本人でもどんどん起訴猶予になります。
つまり「不起訴=おとがめなしの特別扱い」ではないんです。日本の刑事司法は、もともと起訴するより起訴しないほうが多い。その中で外国人は、日本人よりむしろ起訴されている。これが全体像です。
2025年9月22日。自民党総裁選の所見発表演説会。外国人が増えて日本人との間に不公平が生じている、という流れで高市さんはこう言いました。
警察でも、通訳の手配が間に合わないから、逮捕はしても勾留期限が来て不起訴にせざるを得ないとか、よく聞きます出典:朝日新聞(2025年10月3日)。同趣旨の発言は衆議院法務委員会(2025年11月26日)の会議録でも引用されている
「よく聞きます」。出ました、伝聞。①②で見たとおり、外国人の起訴率は日本人より高いわけです。通訳が見つからなくて不起訴が「よく」起きているなら、外国人の起訴率は目に見えて低くなっていないとおかしい。数字はその逆。
朝日新聞が高市さんの事務所に根拠を問い合わせています。文書回答の中身はこう。
実際に不起訴が頻発していて問題だ、と言いたかったわけではない。そういう話が「人口に膾炙する」くらい国民の不安が広がっている、と言いたかった。国民の不安に率直に向き合う思いを込めた演説だった。コロナで日本は死者累々になるといいながら、あとからあれは不安に思う高齢者により寄っただけだとかいうアレですね。w
……いや、それ根拠はありませんって言ってるのと同じでしょ。噂が広まっていることを、総裁候補が演説で事実みたいに語ったら、噂がもっと広まるだけ。不安に向き合うなら、やるべきは「外国人の起訴率はむしろ高いです」と数字で示すことなんですよね。それを総裁候補が自分でデマを撒いてどうするの。とにかく髙市さんは謝らない。そして我を張る。言い訳をして逃げようとする。それがどれくらい悪影響かも理解できないんです。
同じ朝日新聞の記事で、捜査の現場にも取材しています。
- 各地の捜査事情を知る警察幹部:通訳は潤沢ではないが、取り調べができる期間中に通訳が接触できない状況ではない。通訳不足で不起訴になった事例は「聞いたことがない」。
- 地方の検事正経験がある検察幹部:地方では希少言語の通訳確保に苦労することはある。ただテレビ会議システムによるリモート通訳を使っていて、通訳を確保できないことを理由に起訴すべき事案を不起訴にした例は聞いたことがない。
- 別の検察幹部:高市さんの発言は「あまりに根拠不明だ」。
- 毛利雅子・名古屋市立大学教授(法言語学):自身も20年以上、警察・検察の捜査で通訳をしてきた立場から、通訳が数時間見つからないことはあっても、勾留期間中に誰も見つからないとは考えられない。少数言語の話者でも英語やフランス語など第2・第3言語の通訳を介するか、東京など他地域から通訳を呼び寄せている。
朝日新聞の取材に警察庁が答えたところでは、2025年4月時点で警察の通訳人は民間の約9,900人を含めて約1万4,100人。10年前より約1千人多く、約110言語に対応しています。さらに2025年7月からは、通訳人が遠方にいる場合、最寄りの警察署から電話で通訳できるようにルールも変えた。
最新の警察庁の公表(2026年4月時点)でも、警察部内の通訳人が約4,100人、民間の通訳人が約9,900人。体制はちゃんと維持されてます。
この発言は、高市さんが総理になった後に国会で追及されています。2025年11月26日の衆議院法務委員会で、立憲民主党の米山隆一議員が質問しました。
| 答弁者 | 答弁の中身 |
|---|---|
| 警察庁 | 個別の事件捜査を網羅的に把握しているわけではない。外国人被疑者の取調べには適切に対応していると承知 |
| 法務省刑事局長 | 通訳人の手配が間に合わず不起訴にせざるを得なかった事例があったか否かは承知していない。検察庁は平素から通訳人を確保している |
| 平口法務大臣 | 局長と同趣旨。事例の有無は承知していない |
政府の答えは「そんな事例は把握していない」。そしてこの同じ質疑の中で、①の「外国人の起訴率のほうが高い」という数字が出てきたわけです。
参議院でも石垣のりこ議員が質問主意書で、通訳の手配が間に合わないことを理由に不起訴にすることがあるのかと聞いています。2025年11月28日の答弁書は高市総理の名前で出ています。不起訴の事情は個別に異なり網羅的には把握していない、検察は国籍を理由に不当な判断はしないと承知している、という内容。通訳の件には一言も触れていません。自分の演説の話なのに。
ついでに、白書の中でよく切り取られる数字の読み方も書いておきます。検察が新しく受け付けた来日外国人の国籍別構成比です。
| 国籍 | 構成比 | 罪名の上位3つ |
|---|---|---|
| ベトナム | 35.5% | 入管法違反 3,149人/窃盗 1,475人/詐欺 253人 |
| 中国 | 17.6% | 入管法違反 795人/窃盗 676人/傷害 317人 |
| タイ | 5.3% | 入管法違反 633人/窃盗 130人/覚醒剤取締法違反 105人 |
上位3か国とも、1位は入管法違反。オーバーステイなどで、そもそも日本人には成立しない罪です。ベトナムは2019年に中国を抜いて1位になり、2023年も2024年も1位。
で、ここが大事。白書自身が、国籍別の受理人員を見るときは国ごとの新規入国者数・在留者数の違いに留意する必要がある、と但し書きしてるんですよ。人数の多い国が上位に来るのは当たり前。この構成比だけで「ベトナム人は危ない」と言うのは、法務省の白書の使い方として間違ってます。
整理するとこう。
- 外国人の起訴率は日本人より高い(一般刑法犯で外国人約39.3%、全体約37.7%)
- そもそも逮捕=起訴ではない。日本人を含めて起訴されるのは3人に1人。不起訴の約7割は起訴猶予
- 高市さんの「通訳が間に合わず外国人は不起訴」に根拠はなかった。政府は事例を把握しておらず、現場は「聞いたことがない」。事務所も「頻発していると言いたかったのではない」と認めた
噂を演説で口にするのは簡単。でも一国のトップになる人がそれをやると、デマに公式のお墨付きがついてしまう。法務省に一本電話して起訴率を聞けば済む話なんですけどね。
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年10月28日の記事より転載させていただきました。









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