東大の総長選考・監察会議(国谷裕子議長)が、その選考の経緯についての資料を出したが、これを読んでもなぜ過半数がくつがえったのかわからない。

なぜ第2回投票で藤垣候補が過半数になったのか
この資料によると、9月28日の選考会議では5人の候補に対して16人の委員の無記名投票がおこなわれ、第1回では藤垣7票、染谷4票、山本4票だったが、この3人について議論した末に、第2回の投票で藤垣12票、染谷2票、山本2票になったという。
どういう議論で、藤垣候補が5票も増えたのか。大部分は当たり障りのない抽象論だが、注目されるのは染谷候補が代表理事だった総合研究奨励会をめぐる不祥事である。ところがそれについての記述はこれだけしかない:
東京大学が9月11日に公表した「一般財団法人総合研究奨励会の在り方の見直しに関するご報告」について意見交換を行ないました。4月以降の選考過程の期間中に発覚した総合研究奨励会事案についてはガバナンス改革やリスク管理に関わる事案であり、この報告書について共有・議論したいとの提起が事前に委員からあったため行ったものです。また、この意見交換に用いた資料は、東京大学が7月10日にプレスリリースした「一般財団法人総合研究奨励会の元役職員による当該法人での不正行為に関するご報告」と上記の9月11日に公表した報告書のみです。委員からは、同報告により判明した事実、関連法人のガバナンス、利益相反取引、役員の責任、大学と関連法人との関係、今後同様の事案を防止するための体制等について意見が示されました。また、この事案についての候補者面接での発言内容についても意見が出されました。
総長選考・監察会議としては、この事案について統一的見解をまとめることは行っていません。
なお、総合研究奨励会について、7月10日及び9月11日付の文書において、東京大学から公表した不正行為があったと整理しているのは、元業務執行理事・事務局長の X 氏のみであり、理事ら個々の責任については、「総合研究奨励会においては、一般財団法人の制度が想定しているガバナンスの実質的な機能を発揮することが不可能な状況であり、その状況下で、大学教職員の理事ら個々の責任を問い、その職務(経理処理の適切性に対する監視・監督業務など)の善管注意義務を果たすよう求めても、実質的な解決に至ることは期待しにくかったと考えられる」と整理されています。
8時間も何を議論したのか
他に懸念事項は書いてないので、これが染谷候補の過半数をくつがえす理由だと思われる。選考会議の委員は不祥事について事前に情報を共有していたようだが、大学教職員の善管注意義務は重視していないとも読める。
では選考会議の段階ではすでに公知の事実だった不祥事について、何を8時間も議論したのか。関係者の話では、経営協議会議長である佐藤委員(みずほ銀行出身)が「染谷総長を選出すると国際卓越研究大学の認定は得られない」と執拗に主張したという。
ところがこの資料では、奨励会の不祥事は大したことではないように書かれている。これは文科省が「憶測で議論することは適切ではない」といったために、その結果から遡及して不祥事を重視しなかったように書いたのではないか。
これでは東大の教職員も文科省も納得しないだろう。すべての議事録か録音を出すしかない。国立大学法人のガバナンスコードも、議事録は原則公開と定めている。8時間でも、AIを使えばすぐ解読できる。一般公開は困るというなら、文科省だけにでも実名入りの議事録を出さないと任命できないだろう。






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