フランスとスイスの間にあるレマン湖。この湖から南一体に広がるサヴォワ地方。山や渓谷、湖に恵まれた風光明媚な地域で、ボーフォールやルブロッションなどフランスを代表する極上チーズの産地だ。サヴォワ地方はワインも有名。山間部が多いため生産量が少なく、パリでもよい生産者のものを手に入れるのが難しい、希少価値がある魅力的なワインを生み出している。
「ドメーヌ・ペルスヴァル」は、この地で1910年に創業したワイナリー。現当主である4代目のパスカル・ペルスヴァルは、先祖代々受け継いできたワイン造りに新たな挑戦を仕掛けて注目されているワイン生産者。彼が手がけるのは、湖底で長期熟成させたワインだ。

サヴォワ・ワインを代表するワイナリーの一つ、「ドメーヌ・ペルスヴァル」
「海で難破した船から引き上げられたシャンパーニュの状態がとてもよかった、という話を知り、私の地域には美しい湖がある、湖でワインを熟成させるとどうなるかを試そうと思った」というペルスヴァル。2017年にレマン湖にボトル詰めしたワインを沈めたのを皮切りに、サヴォワ地方に点在する、アヌシー湖、ブルジェ湖、ティーニュ湖でも実施。湖底で3〜4年間熟成させたワインを生み出している。
水深37mの湖底では、年間を通して水温は約7℃に安定しており、光が届かない暗闇で自然で滑らかな水の動きがワインを包む、熟成に理想的な環境。この環境が、1年につき、通常のカーヴに比べて3〜4年分ほどの熟成の進みをもたらすそうだ。

レマン湖上に設置されたはしけで、湖底熟成ワインの引き揚げが行われる。
湖畔には、リゾート地エヴィアン・レ・バンの美しい街が広がる。
10月のある日。輝く太陽に照らされ、レマン湖の水面が輝いている。湖の一隅に設置されたはしけの上にはクレーン車と潜水士。これから、2022年にレマン湖に沈めて4年間熟成させた3000本と一樽のワインの引き上げと状態チェックの試飲、そして、2024年と2025年産のワインを新たに湖底に送る作業が行われる。
潜水服に身を包んだ潜水士が湖底に潜り、ボトルが詰められた属製の大きなケージとワイン樽に鎖をつけてから、クレーンがゆっくり慎重に引き揚げる。はしけに揚げられたケージと樽には小さな貝がびっしりついている。3000本のボトルの中には、水圧でコルクが緩みボトル内に落ちてしまったものも。「ダメになるボトルがごくたまに出るのは想定内のリスク。それ以上に、得られるものが多い」とペルスヴァルは言う。

クレーンで引き上げられたワイン。
引き上げたワインを早速開けて試飲。白葡萄のルセットは、凛としたアタックの後、ふくよかなミネラル感。赤葡萄のモンドゥーズは、フレッシュ感を残しながら複雑な味わい。樽で熟成させたモンドゥーズは、微かな樽香とスパイシーな香りでなめらかなイメージ。
ワインは一本ずつ状態を確認してから新たなボトルに詰め替えられ、Vin des Profondeurs(深さのワイン、奥底のワインの意)という名で販売。同時期に仕込まれて通常熟成させたワインと2本セットもあり、熟成環境の違いがもたらす香りや味の違いを楽しむ、というユニークな体験もできる。ワイン生産者の飽くなき好奇心が生み出す貴重な味を体験してみるのはいかが?

500Lサイズの樽ワイン。
慎重にコルクを引き抜く、パスカル・ペルスヴァル。

コルクが抜かれた樽にピペットを挿し入れ、モンドゥーズのワインを注ぐ。
引き揚げと試飲が終わった後は、新たなワインが湖底に沈められる。2024年と2025年産で、今回初めて、クレマン(発泡ワイン)とアンフォラ(陶器)に入れたワインもレマン湖に潜る。4〜5年後の結果が、今から待ち遠しい。

アルテスのワインを注ぐパスカル・ペルスヴァル。
ワインボトルに貝がたくさんついている。

湖底熟成ワインVin des Profondeurs。750ml、58ユーロ。
■








コメント