ビジネスホテルは海外でウケるか?

ビジネスホテル、この和製英語は言葉だけではなく、その存在そのものが日本のガラパゴスと言ってよいと思います。便利なロケーションにあり、やや狭い部屋ながらも機能性に特化し、主に寝ることを目的とした宿泊施設というのが私の定義です。このビジネスホテルを最近、海外で展開しようという動きが出ていると日経が報じています。

この動き、正解でしょうか?

少なくとも北米に住む私には「開拓できる可能性はある」と思います。

北米にはビジネスホテルはないのか、と言われるとなくはありません。それはハイウェイ沿いの主だった出口には必ずと言ってよいほどあるモーテル群。日本はモーテルというのは別の意味を想像する方もいるかもしれませんが、そうだとすれば昭和のかなり年季の入っている方でしょうね。モーテル、つまりモーターホテル=車でホテルの部屋に横付けして泊まれるホテルであります。Motel6とかSuper8はアメリカに住む人なら誰でも知っている名前でしょうが、泊ったことがある人は少ないかもしれません。その上がマリオット系とかコンフォートイン、ラキンタあたりでしょうか?

かつてワシントン州の南の方にある自社所有のゴルフ場の経営を任されていた時、バンクーバーから4時間半かけて毎週水曜日と木曜日をアメリカで過ごしていた時期があります。何しろ経営不振故にご指名がかかった業務だけに予算が全くなく、宿泊もモーテル代を出すのが精いっぱい。そこでゴルフ場そばの高速道路出口にあるSuper8、210号室が私の定宿でした。そこに泊り、夜は道路を挟んだパブで一人ビールを飲みながらつまみを2皿ほど注文するのが定番コース。朝食はセルフサービスのショボいのがついていましたが、それ以外のサービスはゼロであります。

ある時、顔見知りになったホテルのマネージャーが「Youは毎週来るけど、ここで何をしているんだい?」と聞かれ、「実はあそこのゴルフ場のオーナー会社に勤めておりまして…」といったら驚愕の顔をされて「あんな立派なビジネスをしている人がこのホテルかい?」と何とも言えないコメントをされたのは忘れられません。

モーテルは確かにビジネスホテルの用途に近いのですが、北米は「格」をある程度重んじており、日本同様一種の見栄はあるのです。なのでビジネスマンはSuper8は使わないでしょう。ある時、会社に懇願して一級上のコンフォートインにして頂き、心地よくなりました。

バンクーバーにはアパホテルがあるのをご存じでしょうか?ただ、ブランド名はコーストホテルズです。アパとどこかに小さく書いてあったと思いますが、もともとコーストホテルズをアパが買収したのがきっかけで長年浸透しているブランド名はアパとは似ても似つかぬツーリストホテルであります。

一応、フルサービスホテルで悪くはないのですが、垢抜けしないのです。何故かと言えば日本のバブルの頃に日本のある会社がこのホテルを買収したものの会社にはホテル運営のプロがほとんどおらず、日本の会社も道楽のように所有しており、キャピタルエクスペンス、つまり客室やホテルの改装に十分お金をかけなかったため、ホテルがどんどんぼろくなったのが流れです。最後にいよいよ大バーゲンの売却となり、私でも借金して買える程度の金額でアパグループに売却したのでした。

何でお前がそんなに詳しいのか、というとあのホテルの日本人運営者とは30年ぐらいずっと情報交換してきたからです。そのバンクーバー旗艦ホテルのレストランがショボくてもったいないなと思っていたところ、最近、大改装をしました。ですが、昼間とまがうばかりのまぶしいほどの照明に「センスのかけらもなく」スタッフは英語がポチポチのワーホリとか非カナダ人が主流です。メニューには16ozと書いてあるビールは20ozグラスに入ってくるのでマネージャーは気がついていないのかとすら思います。(だから時々飲みに行っています。笑)

つまり日本で完全無比のアパホテルでポイ活をされている方には全くもってごめんなさい、であります。まぁ日本のセブンイレブンを知っている人がアメリカのセブンに行ってがっかりするの同じでしょう。何故アパはこのホテルをコントロールできないか、と言えば白人マネージメントが日本人オーナーレップの言うことを聞かないからで、私からすればアパはこのホテルを持っていることを隠したいのではないか、とすら思います。

アパホテル公式HPより

それでも日本式のビジネスホテルは需要が期待できると考える理由は都市部における宿泊費があまりにも高すぎるからです。一泊3万円からハイシーズンだと5万円。かといってフルサービス以外のホテルは古くてぼろいか、心地よくない場合が多く、それならAirB&Bに泊るほうがベターになるのです。

北米のホテルは基本、部屋貸しで1人でも2人でも同じ料金。しかし、大昔は出張はワイフ同伴なんて当たり前にあったけれど今じゃそんなことする会社も社員もほとんどいません。つまり宿泊はおひとりさま。ならば高機能なコンパクトホテルで十分なのです。例えばバスタブはいらない、アメニティはそこそこ欲しい、テレビはどっちでもよい、ノートパソコンが使いやすいデスクと椅子があり、WiFiがそれなりのスピードがあること、あとはマットレスにお金をかけてくれていればあとは何もいらないです。

そういえば日本の某大手旅行会社が「日系が所有するホテルがあればうれしい」と。理由は高騰するホテル価格でツアーが組めないからだと。それは日系なら無理が効くということを期待しているのかもしれませんが、それは旅行会社の甘えというもの。ここで日本式ビジネスホテルがオープンしたらむしろ、コンパクト高機能がうけて一泊2万から2.5万円は取れるでしょう。

ビジネスホテルは安いというイメージではなく、宿泊する人のニーズのエッセンスをうまく捉えれば北米で展開できる可能性は大いにあると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年11月2日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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