高成長を維持するポーランドで憲法裁判所を巡る権力闘争が激化

ポーランドの国民経済は、内需や輸出の堅調さを背景に、東欧のEU加盟国の中でも突出した高成長を維持し、経済ブームと呼ばれるほど、国内経済は活気を帯びている。その一方、政治情勢は現在、国家の危機に瀕している。ポーランドは現在、憲法裁判所を巡り、国内の2大政治勢力間の対立が激化の一途をたどっている。

「法律が暴力に勝つ」と主張するトゥスク首相、2026年10月31日、ポーランド首相府公式サイトから

2015年から2023年まで政権を担った右派保守政党「法と正義(PiS)」は、自らの政治的見解に近い判事を憲法裁判所(判事15人構成)に送り込んできた。それに対し、2023年に発足したドナルド・トゥスク首相率いる中道左派政権は、こうした人事の覆しを図ったが、PiSが擁立した右派保守派カロル・ナヴロツキ大統領が反発し、トゥスク政権が任命した5人の裁判官の承認を拒否した。

憲法裁判所の前には先月30日、数百人の抗議者が集まった。その大半は、野党「法と正義(PiS)」の支持者や極右団体のメンバーだった。一部の参加者がバリケードを突破して裁判所の敷地内に入ろうとしたが、機動隊によって阻止された。裁判所判事の一人が、判事や職員の安全が懸念されるとして支援を要請したことを受け、警察部隊が裁判所周辺に配備された。

一連の出来事は、現政権が支持する裁判官コルヴィン=ピョトロフスカ氏が、現職の憲法裁判所長官ボグダン・シヴィエチコフスキ氏とその副長官が解任されたこと、そして自身が長官代行に就任することを発表したことから始まった。シヴィエチコフスキ氏はこれを拒絶し、一連の動きを「クーデター」と呼んだ。

コルヴィン=ピョトロフスカ氏は、ナヴロツキ氏が就任宣誓を拒否していた5人の憲法裁判官のうちの1人。同氏によれば、シヴィエチコフスキ氏が新任の裁判官たちの就任を阻止したことで、裁判所が機能不全に陥ったと説明した。

憲法裁判所を巡る騒動の背景には、トゥスク氏率いる親欧州派の「市民連合」とその同盟勢力、それに対して右派保守政党「法と正義」(PiS)および同党と歩調を合わせるナヴロツキ大統領、といった対立構図がある。

ちなみに、「法と正義」(PiS)の政権下において、欧州司法裁判所は、ポーランドの憲法裁判所について、独立性や公平性を欠いていると判断した。その理由として、PiS主導で行われた裁判官(当時の憲法裁判所長官を含む)の任命プロセスに重大な欠陥があったことが挙げられた。

例えば、ポーランド最高裁判所は7月28日、「ポーランド国外で成立した同性婚を承認しない」とする判断を下した。同裁判所は今年3月、他の欧州連合(EU)加盟国で成立した同性婚をポーランドも承認すべき義務があるとの昨年11月の欧州司法裁判所(ECJ)の判決を受け、今年8月末からECJの判断をポーランド国内法に反映させる予定だったが、最高裁判所はそれを「憲法違反」として、ECJの判決内容の施行をストップさせたことがある。

2023年に就任したトゥスク氏は、司法制度に加えられたEUからの物議を解決するために、5人の新任裁判官を任命したが、最終的任命権を有するナヴロツキ大統領が新任裁判官の任命を拒んだ。そのため、彼らは議会で宣誓を行うこととなった。PiS政権時代に任命された憲法裁判所長官のシヴィエチコフスキ氏は、新任の裁判官たちが庁舎へ立ち入ることを拒否した。

憲法裁判所のコルヴィン=ピョトロフスカ長官代行の命令により、シヴィエチコフスキ氏の職務停止が命じられたが、憲法裁判所は公式X(旧Twitter)アカウントで声明を発表し、シヴィエチコフスキ氏が引き続き長官の座にあると主張した。シヴィエチコフスキ氏自身もこの措置を拒絶し、自分こそが正当な憲法裁判所長官であると主張している、といった具合だ。

ナヴロツキ大統領とPiSは、現職長官の排除は違法であると主張。それに対し、トゥスク氏はXへの投稿で、ポーランドにおける「法の支配」を回復することが現政権の義務であると強調するなど、双方が譲歩をする気配を見せていない。

ポーランドは現在、ウクライナ支援の後方拠点であり、NATOの東部戦線を支える重要な安全保障上のハブだ。この政治的・司法的な機能不全は、EU全体にもマイナスの影響が予想される。ただし、現段階では2027年に実施予定の次期選挙まで、2大政治勢力間の権力闘争は続くものと見られている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年11月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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