米中間選挙で共和党が大敗し、トランプ大統領の求心力が問われている。トランプ自身はイラン戦争が敗因の一つだったことを認めたが、開戦の判断については後悔していないという。選挙結果を受けても戦争を続けるなら、議会との対立はさらに深まる。
そこで浮かぶのが、1974年に辞任したニクソン大統領との比較だ。ただし、選挙の大敗だけで大統領が辞任するわけではない。焦点は重大な権力乱用が立証され、弾劾が成立するかどうかである。

ニクソンを追い込んだ共和党の離反
ウォーターゲート事件でニクソンを追い詰めたのは、民主党本部への侵入そのもの以上に、その後の隠蔽工作だった。1974年7月、下院司法委員会は司法妨害、権力乱用、議会侮辱を理由とする弾劾条項を可決し、録音で大統領自身の関与が明らかになり、弾劾手続きが進んだ。
ニクソンは下院本会議で弾劾訴追を採決する前に辞任した。決定的だったのは、共和党も擁護できなくなったことだ。野党から追及されても与党が支えれば大統領は持ちこたえられるが、その支えが失われると辞任が現実の選択肢になる。
この場合、ニクソンのように大統領の任期のうちに辞任すると、副大統領(1974年はフォード)が後任の大統領になって特赦を出すことができる。大統領をやめるとこの特典はなくなるので、ニクソンのように次の選挙の前(1974年8月)に辞任する可能性がある。
イラン戦争は弾劾理由になるか
では弾劾はできるか。ニクソンの場合はウォーターゲート事件という1年以上にわたって騒がれた事件があった。トランプについてはそれほど衆目の一致する罪状がないが、問題の深刻さという点ではイラン戦争のほうが大きい。
大統領が宣戦布告なしに戦争を始めること自体は法律で認められているが、大統領に自由な開戦権はない。戦争権限法は開戦から60日以内に議会への報告提出を求め、議会の承認がない場合は軍事行動を終了しなければならない。
トランプ政権は、停戦によって敵対行為が終了したと主張し、その後の攻撃再開を新たな60日期間の起点としている。これに対しては、実態として続く戦争を形式的に区切り、議会承認の義務を回避しているとの批判がある。
戦争の開始と継続は議会のもっとも重要な権限であり、イラク戦争では2003年の開戦の前に議会が開戦を承認した。トランプが議会の権限を侵害し、法律による制限を意図的に回避したと立証されれば、権力乱用として弾劾を問う根拠になりうる。
ニクソンのように任期切れ直前にやめる可能性
下院の弾劾訴追は単純過半数で可能だが、上院の有罪・罷免には出席議員の3分の2が必要になる。全員出席なら67票だ。今のところ民主党の議席は55議席なので、12議席足りない。民主党が上下両院を掌握しても、共和党から相当数の造反が出ないと罷免できない。
したがって現状では弾劾による罷免は考えにくいが、今後の戦況や議会情勢の変化で、トランプがかつてのニクソンのように追い込まれる可能性はある。トランプは第1期にも弾劾訴追を2度受け、2度目の議会襲撃事件では上院で共和党から7人の造反が出て57人が賛成したが、2/3には届かなかった。
ただ任期が終わると大統領特権がなくなって刑事訴追されるおそれがあるので、2028年中に辞任して後任のヴァンス大統領に特赦してもらうことが合理的だろう。しかし辞任したニクソンをフォード大統領が特赦したことが強い非難を浴び、その年11月の中間選挙で、共和党は戦後最大の大敗を喫したのだ。







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