もう「大卒と高卒」で年収の差はいらない

黒坂岳央です。

「大学くらいは出ておいた方がいい」「高卒より大卒の方が給料が高いのは当然」。日本では長年、こうした考え方が当たり前とされてきた。

実際、大卒者の平均賃金は高卒者より高い。大学進学には学費だけでなく4年間という時間も必要だが、多くの家庭が子供を大学へ進学させるのは、将来の収入や就職で有利になると考えているからだ。

だがそろそろこの古い常識を変えてもいいのではないだろうか。

筆者は、大学でなければ身につけられない専門能力を必要としない仕事について、無条件に大卒だからという理由で高卒より高い給料を支払う必要はないと考えている。

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大学で学ぶ価値が高い分野は確実に存在する

まず、大学教育には明確な価値がある分野が存在する。代表的なのは医学、工学、情報科学、数学など、高度な専門知識を必要とする領域だ。

医師になるには大学医学部で所定の教育を受け、国家試験に合格する必要がある。公認会計士なども高度な専門知識と資格取得が求められる職業である。こうした分野はある程度、難しい大学入試で選抜する意義はあるだろう。

こうした基礎を、若い時期に大学で体系的に学ぶことには合理性がある。社会人になってから独学で習得することも「不可能」とはまではいわないが、予備知識のない状態から高度な専門性を身につけるには相応の時間と努力が必要である。

つまり、大学教育がその人の生産能力を高め、その能力が仕事で求められるなら、高い報酬を得ることには十分な理由がある。

私立文系の4年間にどれほどの価値があるのか

一方、一般的な私立文系大学については、事情が異なる。

もちろん、私立文系にも高度な研究に取り組む学生はいるし、専門性の高い教育を提供する大学もある。しかし、多くの文系卒業生が就職する営業、販売、一般事務などの仕事では、大学で学んだ専門知識を直接使う機会は必ずしも多くない。

例えば、営業職に必要な顧客対応、商品知識、交渉力、資料作成、社内調整などは、大学の講義を受けなければ習得できない能力とはいえない。むしろ、実際の職場で顧客と接し、失敗と改善を繰り返すことで身につく部分が大きい。

18歳で高校を卒業して働き始めた人は、22歳になる頃には4年間の実務経験を持っている。一方、大学を卒業したばかりの人は、そこから仕事を覚えることになる。変化の早い時代、この4年の差は非常に大きい。

極めて高度な専門知識や技術を必要とする仕事でないなら、もう大卒を優遇する意味はないと言える。

学歴には「育ち」という価値が残る

ただし、ここまでの話は、あくまで仕事の能力と報酬に限ったものである。学歴には、それとは別の情報価値が存在する。それは「育ち」だ。これは無視できない。

子供を大学に進学させるには、家庭による教育投資が必要になる。幼少期からの学習環境、塾や習い事、進学に対する親の考え方、学費の負担など、さまざまな要素が関係する。学歴は本人の学力だけでなく、どのような教育環境で育ってきたかを推測する材料にもなるのだ。

例えば、難関大学の卒業生という経歴から、家庭が教育を重視していた可能性や、本人が長期的な目標に向かって努力してきた可能性を読み取ることはできる。これは学歴が持つ、もう一つの側面だ。

もっとも、大学を卒業したからといって必ずしも裕福な家庭の出身とは限らないし、高卒だから家庭の教育水準が低いわけでもない。だが統計的には傾向は分かる。

企業側からすれば、採用時点で応募者の能力や人柄を完全に把握することはできない。そのため、家庭の教育投資や本人の学習履歴を反映する学歴を、人物を判断する一つの材料として使うことには合理性がある。

もちろん、教育投資の大きさが仕事の能力や人間性を保証するわけではない。しかし、採用は不完全な情報の中で行う確率的な判断である。企業が学歴を参考にすること自体は、今後もなくならないだろう。

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学歴はその人の過去を示す情報にはなる。だが、現実として大学に行くべきでない人もかなりいる。モラトリアムで進学し、学ぶ意欲もなく、入学時からほとんど能力が向上しなかった人材は、実態として高校卒業時から大して変わっていない。

一方、同じ22歳でも、高卒で就職した人にはすでに4年間の実務経験がある。仕事に必要な能力という観点では、むしろ高卒者の方が高い価値を持っていても不思議ではない。

無条件に「大卒だから高卒より給料が高くて当然」という考え方は、終わりにしてもよいのではないだろうか。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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