黒坂岳央です。
「嫌な人間とは縁を切れ」昨今、SNSなどでは人間関係のリセットを推奨する意見をよく見かける。
確かに、付き合う相手を選ぶことは大切だ。関わっても損しかない相手や、悪い道に引き込もうとする人間とは、距離を置いた方がいい。しかし、それが行き過ぎると「人間関係潔癖症」になってしまう。
こうなると孤独に一直線だ。自分の気に入らないことが一つでも起きると、すぐに相手との関係を断ち切る。そして、新しい人間関係でも同じことを繰り返す。いわゆる「人間関係リセット癖」である。
筆者は、この習慣は長期的に本人を孤独へと追い込む危険性が高いと考えている。

Aleksei Morozov/iStock
人間関係をリセットしても自分自身は変わらない
人間関係リセット癖の最大の問題は、関係を断つことで問題が解決したと錯覚しやすいことにある。
例えば、友人と意見が対立したとする。本来はそこで話し合いをして妥協点を探ったり、互いの考え方を理解することで関係が深まる。だが、そうした努力をせず、「自分とは価値観が合わないから切る」と判断するのはどうだろう。
確かに、人間関係を切れば一時的に楽になる。しかし、根本的な問題は何も解決していない。自分自身の性格や対人行動の問題点は永遠に放置されたままだ。これは実質的に「自分側は絶対に変わらない」という選択を繰り返していることになる。
だが問題は自分が相手を選ぶのと同じように、相手も自分を選ぶ。そう、自分がそうするように相手側も付き合う人間を選ぶのだ。
冷静に考えると、「自分は何も変わらないが、相手には自分の都合に合わせてほしい」という人が、理想的な付き合い相手として選ばるとは考えにくい。
本人は「自分から縁を切ってやった」と考えていても、実際には相手の方が先に興味を失い、心理的に距離を置いていた可能性も大いにある。つまり、自分が相手を切ったつもりでも、実際には相手から選ばれなくなっていただけという可能性は疑ったほうがいいだろう。
「選ぶ側」になるには、選択肢が必要
もちろん、付き合う相手を選別すること自体は合理的だ。
大企業は採用する人材を慎重に選ぶし、筆者の子供たちのドッジボールでも「あの子は上手だからチームに入れよう、でもあいつは下手だからな」と仲間を選んでいる。
だが、それができるのは自分がかなりの強者で、「自分が相手を選べるだけの候補者が存在する場合」に限る。 ブラック企業が採用基準だけを厳しくしても、誰も採用できないのと同じで、潤沢な母集団から理想の人だけを選べる立場の人はそう多くはない。
そもそも、人間関係の選択肢は最初から潤沢に用意されているわけではない。最初は単なる知り合いだった人と、何度も会話を重ね、時には意見の違いを乗り越えることで、少しずつ信頼関係が生まれるものだ。
それなのにリセット癖のある人は、その信頼関係が育つ前に相手を切ってしまう。つまり、現在の選択肢を減らすだけでなく、将来の選択肢が増える可能性まで自ら捨てているのである。
さらに厄介なのは、年齢を重ねるほど、周囲から問題を指摘される機会が減りやすいことだ。本人は「最近は誰からも指摘がないから自分に問題はない」と満足しているかもしれないが、実際は逆で誰からも期待されなくなっている。
こうして自分の問題に気づかないまま、孤独な裸の王様になっていくのだ。
SNSに逃げても同じ問題が繰り返される
現実の人間関係がうまくいかなくなったとき、SNSに居場所を求める人もいる。「今どきはSNSがあるから、人間関係には困らない」という考え方だ。
確かに、SNSには大きなメリットがある。地理的な制約を超えて、共通の趣味や価値観を持つ人と出会えるからだ。
しかし、SNSは万能ではない。SNSは自分に都合のいい人間が無限に存在する場所ではなく、「リアル人間関係の拡張版」に過ぎない。
筆者自身、SNSや記事、動画発信などを通じて知り合った人と、セミナーなどで直接会い、楽しく会話する経験を何度もしている。そうした人たちとは、SNSがなくても現実世界で出会えば仲良くなれただろうと感じる。結局、SNSもリアルの人間関係の延長線上でしかない。SNSを動かしているのも生身の人間だからだ。
他人の意見を受け入れない。相手にばかり譲歩を求める。不満が生じるとすぐに関係を断つ。こうした人がSNSにいっても理想の人間関係など作ることは出来ない。
なぜならそこでマッチングするのは、自分と同じリセット癖を持った人間だから。SNSへ移動して起こることは、お互いにリセットし合う薄い関係性だけなのである。
結局、自分が変わらなければ根本解決はないのだ。
解決方法は「自分のレベルを上げる」
では、今の人間関係に不満がある場合、どうすればよいのだろうか。
筆者は、付き合う人間を変えたいなら、まず自分自身のレベルを上げることが、最も再現性の高い方法だと考えている。
筆者は工業高校時代、暴力的な言動や話し合いが成立しない人間関係で関わりを避けていた。正直、当時はかなりの「人嫌い」だったと思う。だがその後、東証プライム上場企業で働くようになると、高学歴やハイキャリアの人たちと接して素晴らしい人たちばかりだと感じた。妻と出会い、結婚したのもそうした職場だった。
そこで驚いたのは、お互いに価値観や意見が違っても、冷静な話し合いによって互いの考えを尊重し合える人がいるということだった。今では当たり前に持っている感覚だが、当時の自分にはこれが衝撃的で、「人間関係も捨てたものではない。世の中には素晴らしい人がたくさんいる!」と感じて人間嫌いから一気に人間好きになったものだ。
筆者が人間関係を改善できたのは、気に入らない人を次々と切ったからではない。自分の能力を高め、所属する環境を変えた結果、自然と付き合う相手が変わっていったからだ。
「周囲には尊敬できる人がいない」「もっとレベルの高い人と付き合いたい」と考えるなら、まず自分自身が成長するのが1番再現性高く課題の解決になる。
◇
人間関係を選べる立場になりたいなら、まず自分が選ばれる人間になることだ。相手を変えることばかり考えるのではなく、まず自分自身を成長させる。その方が、長期的にははるかに豊かな人間関係を築けるはずである。
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