2028年大統領選、JD・バンスの独走シナリオが崩れ始めた
米中間選挙での共和党の歴史的敗北を受け、共和党内の権力闘争が早くも始まった。火蓋を切ったのは、元下院議長のニュート・ギングリッチである。
11月4日、ギングリッチはXへの投稿で、今回の敗北によって2028年の共和党大統領候補指名争いは「完全にオープンになった」と指摘した。
彼の投稿で注目すべきは、単に選挙結果を嘆いているのではないことだ。次期大統領候補の本命と目されてきたJD・バンス副大統領に対し、事実上の退場勧告とも取れる評価を下す一方、マルコ・ルビオ国務長官をはじめとする複数の政治家に、次期大統領候補としての可能性を見いだしている。

バンス副大統領インスタグラムより
ギングリッチは、共和党の単なる長老ではない。1994年の中間選挙で「アメリカとの契約(Contract with America)」を掲げ、40年ぶりに共和党を下院多数党へと押し上げた「共和党革命」の立役者である。後のティーパーティー運動やトランプ現象にも連なる、現代共和党の政治手法を形作った人物の一人だ。そのギングリッチが、選挙直後に党内の次の権力闘争を公然と論じ始めた意味は小さくない。
バンスの誤算、ルビオの可能性
ギングリッチの投稿で最も重要なのは、バンスの政治的立場に対する評価だ。
選挙で共和党が大勝していれば、バンスは2028年の大統領候補指名を事実上確実にするための強力な実績を手にできたはずだった。しかし、今回の敗北によって、そのシナリオは崩れた。
問題は選挙結果だけではない。ギングリッチは、イランをめぐる政権の慎重すぎる戦略が裏目に出たことに加え、バンスがオハイオ州知事選におけるヴィヴェック・ラマスワミの攻撃広告を擁護したことも批判している。
この広告は、民主党候補エイミー・アクトンの母親を登場させ、娘を嘘つき呼ばわりするものだった。アクトンが幼少期に経験した性的虐待と家庭環境をめぐる事情も背景にあり、共和党内からも批判が相次いだ。トランプとバンスは広告を擁護したが、最終的にラマスワミ陣営は放映を終了。アクトンは知事選に勝利した。
ギングリッチが問題視したのは、単なる広告の品位ではない。バンスがこうした選挙戦術を擁護したことで、党内外に対する政治的な訴求力を損なったという認識だろう。
一方、ギングリッチが名前を挙げたのがルビオである。「ルビオを候補に担ぎ出したいという人々の数は驚くべきものだ」と述べ、バンス以外の選択肢が急速に広がっていることを示唆した。
ルビオは、外交・安全保障政策を担う国務長官として政権の中枢にいる。対中強硬派として知られ、共和党保守派との関係も深い。トランプ政権の外交政策を継承しながら、バンスとは異なる政治的基盤を構築できる可能性がある。
さらにギングリッチは、テッド・クルーズ、トム・コットン、ロン・デサンティス、ピート・ヘグセス、グレン・ヤングキンの名前も挙げた。今回の敗北を、党と国家を救う新たな指導者になる機会と捉える政治家が現れるかもしれないというわけだ。
トランプ後の共和党をめぐる主導権争い
今回の投稿を理解するうえで重要なのは、2028年の大統領選が、単純なトランプ路線の継承者選びではなくなりつつあることだ。
バンスはトランプの政治的後継者として位置づけられてきた。しかし、今回の中間選挙では民主党が上下両院の主導権を奪い、共和党は大きな打撃を受けた。しかも、バンス自身が敗北の原因としてイラン戦争を挙げ、トランプ政権の政策運営に距離を置く姿勢を示している。
これは単なる選挙敗北の総括ではない。トランプの政治的遺産を誰が引き継ぐのかという問題が、政権内部でも顕在化し始めたことを意味する。
バンスはトランプの支持基盤を継承する候補として登場したが、政権の政策的失敗まで引き継ぐ必要はない。むしろ、イラン戦争や生活費の高騰をめぐってトランプと異なる立場を示すことで、自らの政治的独立性を確保しようとしているようにも見える。
他方、ルビオが候補として浮上すれば、共和党内の外交・安全保障政策をめぐる議論にも変化が生じるだろう。バンスが掲げてきた「アメリカ・ファースト」の内向きな側面と、ルビオが代表する伝統的な保守外交の要素が、2028年に向けてどのように競合するのかは注目に値する。
もちろん、今回の敗北だけでバンスの政治生命が終わったわけではない。中間選挙は大統領選とは異なり、政権への評価が直接反映されやすい。バンスがトランプから距離を取り、独自の政治的立場を確立できるかどうかは、これからの課題である。
しかし、少なくとも共和党内で「バンス以外」という選択肢が公然と語られ始めたことは確かだ。
ギングリッチの投稿は、共和党の敗北を総括する言葉であると同時に、次の大統領選に向けた党内政治の開始を告げるものでもある。共和党のドンがゴングを鳴らした。トランプ後の共和党を誰が率いるのか。その争いは、2028年を待たずして始まっている。






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