2008年4月にジャーナリストの林信行さんとの共著で、『アップルとグーグル』(インプレスR&D)という書籍をリリースしました。
当時、なぜAppleとGoogleを比較して論じる必要があるのか、とも批評され、結果として売れ行きは僕の著書の中では芳しい方とは言えないものでした。
しかし、今また中身を見返せば、現状の両者の躍進を、ほぼ完璧に見通していたことに我ながら自負の思いを抱くことを禁じ得ません。
GoogleがNexus Oneという自社ブランドによるAndroid搭載のスマートフォンを、ネット直販という販売チャネル、およびSIMロックフリーというiPhone にはない手法で販売し始めたことで、多くのメディアはGoogleとAppleの利害衝突がついに顕在化したという見方を示しましたが、僕はそうは思っていません。
なぜなら、両者はいまのところ、従来型の(Web閲覧を前提しているiPhoneやNexus Oneのようなスマートフォンではなく、通話主体にネット接続もできるというコンセプトの)携帯電話を完全に過去のものにする戦いの共同戦線をはっているからです。
AppleとGoogleがまず目指す世界は、
・PC用もモバイル用も同じシングルOSの世界=PC WebとモバイルWebの統一
・それによる真のWebオリエンテッドなモバイルコンピューティングの普及
・通信キャリアに縛られたケータイ販売網からの脱却
です。
AppleとGoogleの利害の不一致が明確になるのは、そのあとの話でしょう。
日本のケータイメーカーには残念ながら本当のイノベーションもグローバルに輸出を展開していくだけの戦略が見えません。
既に日本国内でもiPhoneユーザーは300万人といいます。つまり携帯電話市場の3%のシェアをAppleは持っているということです。(iPhone 3Gが発売した直後、iPhoneの成功を確信していた僕のBlogのエントリーには多くの反対意見が寄せられました。http://blogs.itmedia.co.jp/speedfeed/2008/09/iphone-88cd.html)
この見方は今でも変わっていません。
もう一度繰り返しますが、AppleとGoogleは、切磋琢磨しているように見えながら、その実、当分は同じ(長期的な戦略的)目標に沿いながら、世界を変えていくでしょう。
AppleとGoogleの直接対決は、さらにおおよそ5年後に見えてくるはずです。そのとき、もしかすると両者が激しい直接対決をしているか、もしくは一つの会社になっているかの、二つに一つでしょう。しかし、繰り返しますが、それはまだ少し先のことです。
++ 次回は再びソーシャルメディアマーケティングについての話題に触れたいと思います。
コメント
Apple と Google が目指すゴールについては,小川氏の分析に賛成します.ただ,それが実現するにあたり,問題が一つあります.
Apple は,デバイスの開発製造技術を保有して,一社で Apple ブランドのデバイスを提供しています.
一方,Google は製造技術をもたず,多くのOEM/ODM ベンダに製造を委託しています.
自社ブランドで Android デバイスを提供するベンダの観点からは,Google は製造を行わないため,全てのベンダが,同じ条件で Android デバイスを開発できることがメリットでした.
しかし,Google が自社ブランド製品をだすと,この前提が変わります.Google はプラットフォーム提供者のメリットを生かして,製品を先行提供できます.つまり,プラットフォームの新バージョンを,自社内でテスト・実装して,自社製品に組み込む準備を終えてから,Open Platform として,外部に公開することが可能になります.
Android Platform を利用するベンダから見ると,同じバージョンのプラットフォームを採用するのが,Google より遅れるので,商品の競争力を失うことになります.
このような変化の下で,今後もNexus Oneの開発を行ったHTC以外のデバイスベンダが,継続してAndroidデバイスを供給するかが,着目点になります.
2年近く前にこのタイトルの本を書かれた小川さんの慧眼に敬意を表します。
商売柄、立ち入った論評は差し控えますが、白鳳、朝青龍の二横綱対決の時代になったということでしょうか? 〔二人ともモンゴル人なのを寂しく感じる人もいるかもしれませんが、際立って強いのですから仕方ありません。〕
この状況は、ハードまで全てをインテグレーションする「こだわり路線」で先行したアップルを、「ハードは何でもよい」という路線でマイクロソフトが追ったパソコンの草創期を思い出させますが、今後の推移が楽しみです。
携帯電話会社としては、このような動きは、「逆風」ではなく、「追い風」と受け取るべきです。能力を持った会社がそれぞれの持っている能力を出し、トータルのユーザー価値を上げて、その果実を分け合えばよいのだと思います。
「面白い」
小川さんの記事から、「・・・ほぼ完璧に見通していたことに我ながら自負の思い・・・」
と言うより、この程度の先読みは、電子系通信系等の技術業界に従事している(していた)
方々であれば、容易に見通していたと言うべきで、寧ろ、「言わずもがな」の事でしょう。
それより、コメントの書き込みの方が「面白い」です。
?2010年01月15日 08:35から
「Apple は,デバイスの開発製造技術を保有して・・・」
これは、特定用途向けの限られた一部門に過ぎなく、そんなことはないでしょう。
「一方,Google は製造技術をもたず,多くのOEM/ODM ベンダに製造を委託しています」
これもそうですね、一面そうかもしれませんが、セットメーカー(Appleを含む)は基本的に
ベンダーに委託(OEM/ODM)するのが時代の流れですから、そんなことはないでしょう。
●デバイスについて
半導体プロセスのトレンドを見ても分かりますが、現世代では0.1ミクロンのプロセスがようやく
安定供給されはじめているようで、次世代では0.07ミクロン~0.05ミクロンプロセスに推移しようと
していますが、こういうプロセス(製造技術)を現在のApple社が保有するだろうかと考える
までもなく、あり得ないでしょう。
・・・つづきます。
・・・つづきです。
半導体プロセスのトレンドから何が見えてくるか、ここを「着眼点」に考察してみましょう
・0.5ミクロン以下では、必然的に低電圧化が進むために、回路などのノイズ低減技術が必須
・二次電池(バッテリー)の内部抵抗の低減、二次電池(化学電池)物性上の問題で極端に
高い電圧も極端に低い公称値電圧も難しく、レギュレータ回路を挿入し回路電圧を安定化
しますが、内部抵抗に「温度依存性」がある事から、インサーションロス (挿入損失)が
大きくなるために、長時間の通電が難しく、二次電池の開発も必要となるでしょう。
・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)各専門分野が集まったプロジェクト体制化
海外メーカーにも、日本の「NEDO」と同じような機構があると思いますがね。
・・・つづきます。
・・・つづきです。
?2010年01月15日 12:35から
「この状況は、ハードまで全てをインテグレーションする「こだわり路線」で先行した
アップルを、「ハードは何でもよい」という路線でマイクロソフトが追ったパソコンの
草創期を思い出させますが、・・・」
Motorolaの存在を忘れていませんか、
国内では、NEC、東芝、富士通、など(語弊があるといけないので、など、にします)
村上光治 むらかみこうじ
kouji murakami cello-murakami Muse livedoor
ではまた。