<安倍首相>辞任を「覚悟」…南スーダン、自衛隊員死傷で(毎日新聞)
安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会で、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されている自衛隊に死傷者が出た場合、首相辞任の覚悟を持つ必要があるとの認識を示した。「辞任する覚悟はあるか」との質問に対し、「もとより(自衛隊の)最高指揮官の立場でそういう覚悟を持たなければいけない」と述べた。
はっきり申し上げて、3自衛隊の最高指揮官たる首相の器にはありません。軍事音痴もいいところです。
軍事作戦をして一人でも死傷者が出たら失敗というのはナイーブ過ぎます。そんな考えならば軍事作戦を指導することもできないでしょう。原発は100%安全だと言いはるから、事故が起きて大騒ぎし、被害を拡大しましたが、それと同じです。
同じことがPKOでも起こるでしょう。政治の無能故に。
軍事行動に死傷者はつきものです。
目的が正しく、適切な軍事行動あるいは作戦を行うのであれば部隊が全滅しようと、首相や政府が責任取る必要はありません。
フォークランド戦争では勝ち戦とはいっても、英軍も随分犠牲をだしましたが、サッチャー首相は辞めなかったし、辞める必要もなかったた。政治、外交の延長として軍事的な選択を行い、戦争に勝つという目的を達したからです。
対してフセインとビンラディンがつるんでいるという子ども騙しの与太話で、イラク戦争を始めたブッシュのような間抜けな大統領は万死に値すると思います。責任とってないけどな。ブッシュやオバマは不要な戦争や工作を起こし、多くの将兵を死傷させ、多額の税金を浪費して自国を疲弊させ、あまつさえ中東の不安定化やテロを誘発させました。
現在のPKOでも政府が必要であると信じ、かつて部隊派遣が適切であるのであれば、犠牲が出ても仕方がないでしょう。無論許容できる範囲はあるでしょう。数名の犠牲ならば許容できるが、部隊全滅は許容できないということもあるでしょう。たぶんPKOならば前者であり、後者の場合、例えば九州に中国軍が侵攻し、それを防止するためであれば、許容される場合もあるでしょう。
問題は、第一に自衛官が死傷したら直ぐに辞めるとかナイーブな政治家が首相をやっており、そのナイーブ君が、玩具で遊ぶ感覚で自衛隊を弄んで派遣したことです。軍事的にまともに検討された派遣ではない。
第二はこれまで何度も申し上げてきましたが、被害を最小限に抑えるための努力を自衛隊がしてこず、戦争ゴッコしかできないレベルの衛生体制であること。そしてその実態を知ろうともしないで部隊を派遣したことです。
まともなファーストエイドキットすらなく、まともなメディックもおらず、まともま手術体制もなく、モルヒネなどの鎮痛剤すら支給されいません。
つまり、同じ程度の攻撃を受けて、他国が数名の死傷者で済むところを、自衛隊な10とか20人とか命や手脚を失う隊員がでる、しかも不要に苦しみながら死ぬという状況が予想されます。
政治家以前に常識ある社会人ならば恐ろしくて派遣なんかできないでしょう。
政治家がこんなこまいことは知らないでは済みません。
ぼくは何度となく、記事も書いてきたし、防衛大臣や陸幕調の会見でも質してきました。防衛省も大臣も外部からの指摘を受けて、問題は知っていたということです。
ところが中谷大臣(当時)や稲田大臣、安倍首相は問題ないとして、派遣したわけです。
安倍政権の不作為で隊員が犬死にする可能性が多いわけです。
犬死にするような、いい加減な体制で送り出したのだから、その責任を取りますというのは一応の見識かもしりませんが、それはあまりにも無責任です。
アホな派遣をしなければ被害はそもそも発生しません。
少なくとも他国の軍隊並の体制で送り出すことを命じるべきだったでしょう。
それができないならば自衛隊の衛生関係者を軒並み更迭するべきです。
それをしなかったわけです。
更に問題は国内で有事が起こった際には更に悲惨なことになるということです。
陸自の国内用ファーストエイドキットは極めて貧弱であり、有事にアイテムを補填する計画があるというの嘘です。
そしてゲリ・コマ対処ですら多くの隊員の死傷が想定されますが、同時に多数の隊員を治療するシステムはありません。部隊の医官の充足は2割を切っています。これで大規模な有事が発生すれば大量の犬死にがでます。
衛生に関する法的な規制撤廃も憲法改正に比べればお子様レベルでしょう。
それすらもやる気がない。あるいはできない。
こういう状態を放置して海外で火遊びしたいとか、「日本を取り戻す」とか「戦後レジームからの脱却」とか憲法改正とか寝言を言っているわけです。
政治家の責任云々(でんでん、じゃなくねてうんぬんね)いうならば、こういうお粗末な現状を何とかすべきでしょう。
これが与党のボスで、我が国の首相、自衛隊の最高指揮官ですから悲しくなってきます。
それでいてもっと高度で見識も必要な憲法改正をやるというんですから、期待する方が間違いです。
保守の劣化も年を追うごとに激しくなっているような気がします。
Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海自ヘリ問題、諸悪の根源は「現場の暴走」だ
訓戒処分を受けたが、海幕長の判断は正しい
朝日新聞のWEBRONZAに以下の記事を寄稿しました。
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戦死者、戦傷者を想定していない「軍隊」の危うさ
続・南スーダンで負傷した自衛隊員は救えるのか
不足するキット、十分な応急処置ができない衛生兵……
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。