厚労省の労働政策審議会の委員の一人が昨年の派遣法改正(30日以内派遣の原則禁止や無期雇用への転換推進措置)について「机上の空論だった」と認め、一部で話題となっている(筆者は誰のコメントか教えてもらったがここでは書かない)。
どの部分について「机上の空論」だったのかは分からないが、恐らく「規制強化すれば無期雇用などの安定雇用に移行するはず」という全体の方向性についてだろう。(でないと自民政権による30日以内派遣再解禁の流れで記者が取り上げない)
似たような反省は、同じ厚労省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」もコメントしている。少々長いが引用しておこう。
制度創設時、常用代替を防止する趣旨は「新規学卒者を常用雇用として雇い入れ、企業内でキャリア形成を図りつつ、昇進、昇格させるという我が国の雇用慣行との調和を図る必要」、すなわち正規雇用労働者の雇用を基本とする日本型雇用慣行を維持することにあった。しかし、近年、パートや契約社員を中心に非正規雇用労働者は増加を続けており、それにも関わらず派遣労働者のみを常用代替防止の対象とし続けることには十分な整合性はないと考えられる。
要するに、規制強化は雇用を増やしもしないし派遣労働者を幸せにもしませんでしたということだ。
事前に多くの人が指摘していたにもかかわらず、同様の「机上の空論」に基づいて有期雇用契約5年ルールも作られ、日本中で多くの労働者や組織が迷惑している。20年以上勤めたベテラン契約社員から職を奪うことになった机上の空論を作った人達は、はたして責任を感じているのだろうか。
どうも記者は机上の空論発言をした委員の資質を問題視しているようだが、問題はあらかじめ省内で決めた結論に審議会を誘導する厚労省自身にある。税金にたかってればすむ天下り学者と違って、民間の研究者は黒を白なんて言えないのは
当たり前の話だ。
身内のはずの審議会からもダメ出しされたわけだから、厚労省もそろそろ過ちを認めて政策を見直すべきだろう。
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2013年10月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。