知財本部・新情報財委員会@霞が関。
東大・渡部俊哉教授と共同委員長を務めます。
AI知財の議論からデータに関する議論にテーマが移っています。
IT本部山路参事官から、さきごろ施行された官民データ活用推進基本法に基づくデータ活用とオープンデータの推進について説明。そして、ルール化を進める前に、PDS(パーソナルデータストア)、情報銀行、データ取引市場の整備を推進することを表明しました。
IT本部はシェアリングエコノミー対策もそうだが、利用規制を緩和しながら環境整備を進めるというアクションを取る姿勢。ぼく好みの行政を進めておられます。
総務省小笠原課長は、データ取引市場や情報銀行に関する実証実験について言及。スマートシティ、スマートハウス、IoT、5Gの推進も触れました。インフラ整備、よろしくです。
経産省佐野課長は、IoTの課題としてデータ爆発、セキュリティ、プライバシー、データ寡占を挙げつつ、潮流として、PDS、シェアリングエコノミー、ブロックチェーンを挙げました。「分散」を進めると。野心的です。
例えばPDS(パーソナルデータストア)は、個人を起点としてデータ流通を促進するもので、データ流通を集中・センター型を分散型に切り替えるもの。「集めないビッグデータ」(佐野課長)。するとデータ流通市場のアプローチが大事になります。
データ流通市場の例として、EverySenceが挙げられました。これはぼくが真野CEOからお話を伺っていたものです。注目しております。
http://bit.ly/2jk6E2t
データオーナーシップ(B2Bの非パーソナルデータの利活用権限)についても問題提起されました。契約でいかに明確化するか、公平な利用をどう確保するか等の論点が挙げられたところです。
(データオーナーシップに関してはその後福井委員から、知財の学術・司法の蓄積は膨大であり、それらとの整合を図るべきとのコメントがありました。)
これらを踏まえ、本委員会では、利活用の促進が期待されながら保護の範囲が明確でないデータについて議論することとし、営業秘密(不正競争防止法)や不法行為・契約(民法)について論点を整理します。
データに何らかの法的権利を与えるのか、データ取引所や契約に関するルール、ガイドライン等を作るのか、といったアクションを検討することになります。
これに対し、法的な権利付与に対する危惧が多くの委員から表明され、契約ベース・不正行為対応のアプローチへの賛成が多数を占めました。
しかし清水委員は、民間企業はアプリやサービスを途中で止めてしまうが、民間に任せるというのはそういうことであり、個人情報を使ったヘルスケアサービスなどの政府のビジョンは国が強制しなければムリ、と意見。民主導という流れに対峙する、新鮮なコメントです。
これを補完する意見として、林委員は、個人起点のPHR実証や厚労省の電子レセプト流通などを国が推進する、といったリーダーシップのとり方はあるとコメント。福井委員も、政府は公平性・オープン性確保といったリーダーシップがあると指摘しました。
また福井委員はルール化・権利化が適・不適というより、時間・調整コストがかかるという点で、そこに資源を投下する効率が悪いから別のアプローチ(流通市場等のインフラ整備など)を取る旨のコメント。ぼくも制度論より施策論を重視するのはそういう理由です。
清水さんが、情報銀行への情報提供を義務づけよ、という意見を表明。
パンクやの~。
日を改めた会合で、産総研・関口委員が、大型コンピュータをブン回してπを100億ケタ以上計算してるが、そのデータは保護されるべきか否か、と問題提起。
むつかしいわぁ この問題。
タクシーのカメラに映った自分の情報は、タクシー会社のものか自分のものか、という問題提起もありました。データ利活用の権利を個人に引き戻す手があるか。ブロックチェーンの活用が可能性を広げるか。
議論は続きます。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。