ニューヨークをはじめ、全米を中心に「ノックアウトゲーム」が不気味に広がりつつあります。10代を中心とした少年が無差別に通行人を選び、一発で気絶できるかを競う信じられないゲームです。
私の周囲からも、とんでもない話が飛び込んできました。ヒップスターの聖地であり、住みたいエリアに名を連ねるウィリアムズバーグ行きの地下鉄L線。そこに住むアジア系の友人が下車しようとした瞬間、乗車していた少年が突如殴りかかってきたというのです。
幸いなことに、10代後半とおぼしき少年が繰り出した右ストレートを友人はかわすことができ、大事には至りませんでした。
しかし、マンハッタン南側の対面にあるニュージャージー州ホーボーケンでは9月、ホームレス男性が殴られた男性が発作を引き起こしフェンスの針金で命を落とす痛ましい事件が発生しました。NY市内ブルックリンでは、今秋だけで7件を数えております。被害者は男性だけではありません。78歳のユダヤ系女性も、命に別状はなかったとはいえ毒牙にかかった1人です。NYでは特に黒人系の少年がユダヤ系を襲撃する例が多いため、「ヘイト・クライム(人種、宗教などへの憎悪が引き起こす犯罪)」の側面を呈しております。正統派ユダヤ系でヤムルカを被った24歳男性も暴漢に襲われたケースでは、トリニダード系の28歳が逮捕されました。
クラウン・ハイツはいろんな人種が混ざり合う閑静な住宅地でもあります。
(出所 : NY Times)
驚くべきことに、「ノックアウト・ゲーム」は今に始まったわけではありません。USAトゥデーによると、2011年で始まっておりフィラデルフィアでベトナム系移民が死亡していました。
ベトナム系移民の死亡事件では、現在20歳になった青年は終身刑を申し渡されました。一方でニュージャージー州のホームレス男性の加害者はというと、13歳と14歳の少年だったため少年法が適用されてわずか18ヵ月の懲役に処せられただけでした。
アメリカで少年法が適用される年齢上限は14~20歳で、大抵は18歳。州と犯罪によって適用する年齢上限が異なるとはいえ、重傷を負わせるか致死に問われなければ刑罰は「ホームレスへの奉仕をはじめとした社会活動が関の山」といいます。
NY州議会ではノックアウト・ゲームの増加に対応し、殴打した当人だけでなく傍観・ビデオ投稿など間接的に助長した仲間にも適用するなど刑罰を強化する案を前週、提案しました。NY市警はもちろん被害が多発するクラウン・ハイツをはじめ、パトロールを強化しております。
被害者の方々は、1人で歩行中に事件に遭遇しています。NYをはじめアメリカへお越しの皆さまにおかれましては、できるだけ人通りの少ない道を避け、スマホをいじりながら歩くのも極力避けていただきますようお願い申し上げます。iPhoneですとひったくりに襲われるリスクもございます。最近では、私の周囲でヒールを履いたアジア系女性が百貨店メイシーズと直結する34丁目の駅で襲撃された例もありますので、ご注意下さいませ。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年11月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。