ハブ空港の機能で重要なのは制限区域内の施設の充実度

前田 陽次郎

そもそも「ハブ空港」って何なの?という定義が大事なので、最初に示しておく。

ここでいう「ハブ空港」とは、空港のある都市が目的地なのではなく、乗り換えのために使う、乗り換えに便利な空港である。

そして、長崎に住む私が、上海浦東空港をハブ空港として利用した経験を紹介したい。


まず、「地方の住民は、ソウル仁川をハブ空港として利用していて、成田を使っていない。」という話が世間では広く語られているようだが、これは東京の人間が流しているデマである。ここに統計があるが、三大都市圏以外からソウル経由で海外に行く人の数は、東京(成田+羽田)で飛行機を乗り換えて海外に行く人数の1割以下であるし、そもそも地方から仁川経由で海外に行く人数に比べ、三大都市圏から仁川経由で海外に行く人数が倍以上あるのが現実だ。

私も最近では年間10回程度海外旅行をしているが、回数的に一番多いのは羽田成田乗り継ぎであり、その次が陸路で福岡まで行き、そこから国際線というパターンである。長崎からソウル行きの飛行機も就航しているが、未だに一度も仁川空港を利用したことはない。

ところで先日香港に行ってきた。普段は福岡発の直行便を使うのだが、今回は長崎空港発の上海便を使って、上海乗り継ぎで香港に行ってみた。この経路が安かったという理由が大きいが、長崎から陸路で福岡まで行く時間で、長崎空港から飛行機に乗れば上海に着いてしまうので、一度上海乗り継ぎも試してみたいな、と以前から思っていた。上海から日本の地方路線を複数開設している中国東方航空は、上海をハブとして日本の地方住民に使ってもらとうと、少しは考えているようでもあったし、とりあえず一度試してみた。

それで、その感想なのだが。

正直言って、上海浦東空港で何時間も過ごすのは、つらかった。何もすることがないのだ。

乗り継ぎのために上海に行っているのだから、中国には入国しない。だから乗り継ぎに費やす数時間は、制限区域の中で過ごすことになる。

私は中国東方航空が所属する航空連合「スカイチーム」のステイタスは持っていないので、中国東方航空が提供するラウンジには入れない。そこで空港の制限区域内では、いわゆる「カードラウンジ」に入った(正確には「PriorityPass」の資格で使えるラウンジ)。ここの施設が、とにかく貧弱。

どこのラウンジも利用しない人は、免税店をまわったり飲食店に入ったりして時間を潰したいだろうが、これまた貧弱。

ハブ空港として発達してきた香港空港やシンガポール空港は、とにかく制限区域内の施設が充実している。何時間もの乗り継ぎ時間を退屈させないように、そういう意図で施設の充実を図ってきたからだ。ソウル仁川も行ったことはないが、やはり制限区域内の施設は充実していると聞く。

日本ではどうだろうか。何故か「ハブ空港としての首都圏空港」という議論になると、「都心とのアクセス」という話が最大の問題のように聞こえるが、その重要度は低い。

「ハブ空港」として利用される空港では、利用者がそもそも入国すらしない場合が多い。だから、制限区域内の施設がどれだけ充実しているかが、最大の問題なのである。

もちろん乗り継ぎ時間が相当長ければ、一度入国し、その間に都心に行って観光することはあるし、シンガポールなどトランジット客向け都市観光のプログラムを充実させている空港もある。この場合は都心とのアクセスを良くする必要性はあるが、ハブ空港の機能としての重要度は高くない。

最近は羽田も成田も、こういう本来の意味での「ハブ空港」としての機能を充実させようという動きが出ている。これは、羽田国際化によって地盤沈下を恐れる成田側の自発的な要因が大きいと感じている。決して「国として」ハブ空港をどうべきか、という観点から施策が打たれている訳ではない。

話を元に戻す。

上海浦東空港を乗り継ぎで利用するのは、ちょっと勘弁、という感想だ。浦東を使う位なら、遠回りにはなるがPeachを利用して関空経由で香港に行く方が、気分的に遥かにいい。まあ実際は、今まで通り福岡空港利用が一番多いかな、と感じた。

余談になるが、もし長崎香港の直行便が実現したら(検討はされているみたいだが)、アジアヨーロッパ方面への旅行は、香港経由にしようと思っている。香港は経由地として魅力的だからだ。

前田 陽次郎
長崎総合科学大学非常勤講師