知財本部・映画振興会議

知財本部・映画振興会議。座長を務めます。東宝、東映、松竹、角川、吉本興業、フジテレビ、講談社などの経営トップ全員集合。とても重た~い。今回は製作支援策と海外展開策がテーマ。

石原宏高副大臣の説明では、2016年の国内興行収入は2355億円で前年比184億円の増加、入場者数も42年ぶりに1億8千万人を超えたとのこと。この勢いを維持・強化するための施策は何か、との問い。

内閣府、経産省、文化庁、外務省から映画施策の説明がありました。他のコンテンツ領域に比べれば、けっこう手厚い。総額100億円程度の予算。
海外展開支援でも3年間のJ-LOP事業で、4700件が採択され、それにより海外売上1585億円増、新規に海外展開した企業は405に上るとのこと。

しかし、青山学院の内山教授によれば、映画政策予算100億円に対し、フランスは8億ユーロ(1000億円)、ドイツは4億ユーロ(500億円)。実に見劣りがします。

フランスは映画とTVに3億ユーロずつ配分していて、そのうち53%が自動補助です。審査委員会で選択するスタイルではなく、前作の商業・文化的成果を算定式に入れて次回作への補助金を自動的に決めるシステム。政府が内容にコミットせず客観的・公平な仕組み。

日本にも企画・制作の支援を考えるのであれば、松竹・迫本社長が唱えるように、政治や政府との距離を気にすることになる、そして恣意性も入り得る仕組みではなく、税制措置等のインフラ的な仕組みがうるわしい。法人税控除、消費税還付、地方税減免など。ただ、これは財務省の壁がぶ厚いです。

内山教授は流通・興行フェーズの支援として、8Kパブリックビューイングの整備支援を示唆しました。妙案だと考えます。(が、ぼくは利害関係者になるので黙ってます。)また、インバウンド来日外国人対応の映画館を作る案も。アプリとメガネ端末で字幕を見る。いいですね。

無料型のYouTubeやニコ動が先行普及してきたが、スマホ普及に伴い、定額視聴できる有料動画配信のユーザも拡大、動画配信ビジネスが伸長。dTV(ドコモ+AVEX)、hulu(日テレ)、abemaTV(テレ朝+サイバーエージェント)、LineLive、Tverなど多様な事業者が参入しています。

2015年にはNetflixとAmazonプライム・ビデオが日本上陸。特に両社とも製作出資でオリジナル作品配信も実施しており、コンテンツ資金の出し手の登場という面で、これまでのような「黒船」扱いではない刺激を市場に与えています。

映画政策を検討するに当っては、映像産業を取り巻くこうした環境変化を踏まえておく必要があります。映画業界としても、映像・コンテンツというスコープで検討すべきことを自覚している状況です。

東宝・島谷社長が中国市場の開拓とアニメへの集中を唱える一方、東映・岡田会長はネット活用するに当たって編成権を確保すべく映画界がまとまることを提唱しました。角川会長はスコセッシ監督が日本の俳優を激賞していると言い、プロダクションを集めて国際俳優を育てる施策を求めました。

松竹・迫本社長は、政策の効果は上がっているものの、省庁タテ割りがネックになっているとし、文化と産業の間をとりもつ「文化情報通信省」の設置を提唱しました。
その意見、もっと言って!

萩生田官房副長官(シン・ゴジラの主人公のポジション)は、映画と政治の「間合い」に言及、口をはさまないいい距離に配意することを強調しました。
施策としては規制改革で活性化させたり、海外展開の障害を取り除く、といったものが中心になります。

よろしくお願いします。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年5月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。