駅伝を五輪種目にできないでしょうか

本山 勝寛

お正月はコタツでみかんを食べながら駅伝をみるーー駅伝は今やお正月の恒例イベントととしての地位を確立している。日本でこれだけの人気スポーツになった駅伝だが、考えてみると海外ではほぼ皆無に近いほど普及していない。もちろん、世界選手権やオリンピックの競技にもなっていない。日本で人気なだけでなく、マラソンのリレーバージョンというさほど特異な競技でないことを考えれば、国際競技になってもおかしくないとおもうのだが、海外で普及しないのはなんともさびしい気がする。


駅伝はそもそも、江戸時代における東海道五十三次における伝馬制からヒントを得て、1917年に読売新聞が主催したのが最初の競技だったそうだ。この長距離の伝令という由来は、古代ギリシャでマラトンの戦いの勝利を走って伝えたというマラソンの起源とも類似している。そういったストーリーと共に、国際ルールの標準化や人材育成を戦略的に展開することによって、世界選手権やオリンピックの競技化も決して夢ではないように思うが、言い過ぎだろうか。

日本発のスポーツで最も国際化に成功したのは柔道だが、創始者の嘉納治五郎が当初から海外への普及に力を入れ弟子を派遣していたことや、自身が日本人初のIOC委員を長年務めたことも大きい。嘉納の弟子がルーズベルト大統領に直接柔道を教え、新渡戸稲造の「武士道」と合わせて、日露戦争の講話条約締結仲介時に親日家として動いた心理的な要因の一つとなったとも言われている。そういった努力が重ねられた上で、1964年の東京五輪で柔道がオリンピックの正式競技となったわけだ。

駅伝については、近年、ホノルルやベルギー、ニュージランドでも開催されるようになってきたようだが、まだまだ広く普及しているとは言い難い。茂木健一郎氏によれば、有森裕子氏が駅伝をオリンピック競技にという考えをもっているようだが、まだまだオールジャパンの活動にはなっていない。やはり嘉納治五郎のような人物が中心になり積極的に海外普及とロビイングに努めなければ、遠い道のりのように思う。

せっかく東京オリンピック・パラリンピック招致に成功したわけだから、日本発スポーツの国際化にもぜひ力をいれてもらいたいところだ。もちろん、人気と実力の高い野球やソフトボールの五輪種目復活も引き続きがんばってほしい。

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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。